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「鄭さんには、「困った時は原作に戻ってくれ。」という言い方をしたのです。『レディ・ジョーカー』という原作の何か全体を包む空気っていうのは、もちろん原作と映画とではセリフも違うし、アレンジも加えているんですけども、そこだけはちゃんと押さえておこう、と話しました。」 |
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「最初に高村さんにお会いした時に、「これは、被差別側が差別する側に対する復讐劇ですね、これをやればいいんですね」と申し上げたら「違います。もっと本を読んでください」と懇々と言われまして。
確かに、そういう話じゃないんです。けれども、本が出版されたときの印象は、そういう話のイメージばかりが残っていたのですね、もう一度読み直したら、確かに差別の話は実はある一部の話でしかなくて、もっと、隙間だらけの日本みたいな、そういうのが見えてきたんです。不親切と言われようがなんと言われようがそれをやらないとこの作品の映画にはならないと思いましたね。」
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「いかにも犯罪者ですという佇まいはやめよう、という事を俳優の皆さんに言いました。日常的な、あまり力まない演技ぽくないものを求めました。渡さんにも演技指導ということではないですが、日常的なことを大事にしてくださいというお願いをしました。もし誘拐する側、誘拐される側だけをやるのであれば、『レディ・ジョーカー』である必要はないわけで、別に誘拐モノとしていっぱい原作はあるしオリジナルでもいいのですから。」 |
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「やっぱり手紙の中身、あの原作の中で一番読みにくい手紙は、撮影現場でこだわりました。あの手紙がないと何故こんな事件が起きたのか全然わからなかったと思うので。鄭さんのシナリオも「手紙が来た」というところで終わっていて、中身に関してはあんまり深く書かれてなかったので、あれだけは原作にある手紙を持ってきて俳優さんには結構しつこく読ませました。これが、日の出ビール側と『レディ・ジョーカー』、その中でも物井さんですが、二つを一つに結ぶ線だと。」 |
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「やっぱり、雨のシーンかな。あっさり表現するのであれば、例えば雨のシーンで、捜査陣が車を囲み、次のシーンは「レディ・ジョーカー現れず」という新聞記事一枚だけでいいんです。でも、このシーンと現金輸送車を追走するシーンだけは、きっちり撮影しないと映画にならないと思いました。」 |
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「痒いところに全部届きすぎるみたいな、解説とか親切丁寧な映画が最近すごく多いと思うんです。だからそういった中で『レディ・ジョーカー』をやっぱりそういう風にしちゃったら駄目だろうっていうのがありまして、そこだけはきっちりと守ろうと思っていました。」 |
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「無愛想かもしれませんが、男たちの後姿をきっちり見ていただければと思います。」 |
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