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「高村薫さんの作品は以前から好きでしたので、『レディ・ジョーカー』も発売されてから直ぐに拝読いたしました。 読みながらとても面白いけれども映画にはならないだろうなって思っておりました。しかし今回映画化になるというお話をお聞きしまして、いったいどういう風に映画になるのだろうかと興味を持ちました。
この企画は7年を要した大プロジェクトで、その間にスタッフも入れ替わっており、私が参加いたしましてから一年近く経た頃に、平山監督が担当されることになりました。そこで平山監督に「物井は誰が演じられるのか」とお聞きしたところ、「まだ決まってない」とのことでした。そこで、社会の底辺に生きるごく普通の人間を今まで演じたことがなかったものですから、もしよろしければ物井役をやらしていただけませんかと監督にお願いしましたところ、監督やスタッフの方々にご理解いただいて、この役を演じさせて頂くことになりました。」 |
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「40年も役者をやっておりますと、脚本を読みながら起承転結ということを考えて読んでしまいます。例えば物井の兄が亡くなるシーンがございますが、そこがこの物語の始まりだと考えておりました。すると監督からは「あなたの本当のお兄さんが無くなった感覚で演じてください。兄貴が死んだからといって復讐しようというのではなくて、自然に犯罪に加わっていくという感じが欲しいです」と言われる。
また映画の終盤に城山社長が物井薬局を訪ねるシーンがございますが、弱者が強者にうらみつらみを言うのだろうなと思っておりました。しかしそうではなく、監督は「これは城山にではなく、自分自身に言い聞かせる気持で演じて欲しい」と言われました。
またラスト近くに布川に捨てられたレディに語りかけるシーンがございます。今までの経験から、ここが泣かせ所であろうと解釈していたのですが、監督からは「レディに対してあまり同情的な感じを出さず、ごく日常的に演じて欲しい」と言われました。
平山監督の演出はこれまで経験したことの無い方法でしたので、今日はどうなるのだろうと毎日現場に行くのが楽しみでした。まるで自分自身デビューした頃に戻った様な新鮮な感じがいたしました。」 |
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「なかなかひとことで言い表すのは難しいですね。漠然としてではありますが、ありのままを受け入れられる男なのかなと思います。」 |
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「この映画には一つの答えはないと思います。ご覧になった方々それぞれの解釈があると思いますし、スクリーンにエンドマークは出ておりますが、ご覧になった方の胸の中でこの物語は続いていくのだろうと思います。」 |
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