日本福祉大学×『ロストケア』公開特別授業に松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、前田哲監督、原作者・葉真中顕が登壇!福祉学生と学ぶ、介護について今私たちができること。
2023.03.17(金曜日)

日本福祉大学・美浜キャンパスにて、映画『ロストケア』を通して介護について学ぶ公開特別授業が行われ、社会福祉学部のたくさんの学生が参加しました。

会場には主人公・斯波宗典役を演じた松山ケンイチさん、斯波を追い詰める刑事・大友秀美役を演じた長澤まさみさん、検察事務官・椎名幸太役を演じた鈴鹿央士さん、前田哲監督、原作「ロスト・ケア」の著者・葉真中顕氏が登壇。社会福祉学部で介護殺人支援などを主な研究テーマとする湯原悦子教授と共に、公開特別授業を行いました。
 

本作は、初共演の松山ケンイチさんと長澤まさみさんの二人が、入魂の演技で激突する社会派エンターテインメント。

日本では、65歳以上の高齢者が人口の3割近くを占め、介護を巡る事件は後を絶ちません。この問題に鋭く切り込んだ葉真中顕さんの第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』の前田哲監督が映画化。

介護士でありながら42人を殺めた殺人犯・斯波宗典役を松山ケンイチさん、その彼を裁こうとする検事・大友秀美役を長澤まさみさんが演じ、社会に絶望し自らの信念に従って犯行を重ねる斯波と、法の名のもとに斯波を追い詰める大友の “互いの正義をかけた緊迫のバトル” が繰り広げられます。

他に鈴鹿央士さん、坂井真紀さん、戸田菜穂さん、藤田弓子さん、柄本明さんといった実力派俳優が出演。現代社会に、家族のあり方と人の尊厳の意味を問いかける、衝撃の感動作です。


©2023「ロストケア」製作委員会


本編を見た学生からは、「私も約4年間在宅介護をしていて、映画内で親子の言い争うシーンとか、私の家庭でも日常的にあったので、この映画は介護者と被介護者の過剰な演出ではなくて、リアルにある家庭の問題を映していると思った。」と実際に若くして介護を経験した立場からの感想があがり、また別の学生からは「この映画をフィクションだと思ってはいけないと強く感じた。劇中の“見えるものと見えないもの”ではなくて“見たいものと見たくないものがある”というセリフが印象的で、“見たくないもの”こそ大事なものであって、学生としてどうやってそれを解決していくのか考えていかなければならいと感じた。」という熱のこもった声が上がりました。


学生と同年代の鈴鹿さんは、学生からの感想を受けて「問題提起できる映画にしっかりなっているなと改めて思い、嬉しかったです。僕と同世代の方は、実際に介護をしたことのない方がほとんどだと思うので、この映画で介護について考えるきっかけになってほしい」と語り、印象的なシーンとして「(劇中で)綾戸智恵さんが演じていた刑務所にいれてほしいと言う高齢者の方も実際にいるというのを聞いて、撮影中不思議な感じがあり印象に残ってます。」と。それに対して前田監督は、「実際にそういう事態になっている高齢者の方もいるので、あのシーンから始めたかったので、そう感じてくれて良かったと思います。」と話しました。


今回の原作「ロスト・ケア」を執筆した頃のことを葉真中氏は「私がたまたま介護をしなければいけなくなって、実際に当事者となり、突然やってくると何も準備をしていない状況で分かったのが、介護は色んなレイヤーがあるということなんですよね。日本社会で“格差”と言われるようになった時代で、お金とか家族間の密度とかで、同じような状況なのに人と人の間に物凄い格差が生じていた。同じような年代で同じような病気になったのに、天国と地獄のようになってしまい、さらに介護業界の混乱が重なりすごい事になっていることを肌で感じたので、それを小説にしようと思いました」と、自らの経験も踏まえて作品の背景を明かしました。


前田監督は本作の映画化について、「原作と2013年に出会って、憤りやすごく熱い想いを感じて、映画化しなければならないと思って始まりました。今でこそヤングケアラーという言葉も言語化されましたけど、それまでは無自覚にそういう状況に陥ってることがあったとおもうんですね。映画にどれだけの力があるか未知数ですが、映画を観た人が話題にすることが一つのきっかけになる。ニュースでも見出しで素通りしてた人がその内容を読んでみる、そういう興味を持ってもらうことが社会を変えていく原動力になると思ってます。」と想いを明かしました。


さらに授業では介護殺人について掘り下げ、42人もの老人を殺めてしまった斯波へどのような刑罰が必要なのかについて、検事役を演じた長澤さんは「とっても難しい問題なのですが、斯波がした行為というものは許されるものではないと思いますし、厳しい刑罰を受けることは必要なのかなと思います。だけど、斯波自身は自分がしたことに対してこれは“救い”だと、彼の正義のもとに語っているものなので法的な刑罰というのが、斯波にとってそれが罰として捉えられのか難しそうに思います。悪いことをしたから罰を与えるということだけではないと感じました。」と話しました。


父親の介護で追い詰められていく息子の演技を、とてもリアルに演じた松山さん。劇中でも介護者が直面する困難が様々描かれている今作で、斯波の役柄について松山さんは「すごく意識したところがあるのですが、斯波は皆さんと何も変わらない、異常者ではないというのを大事にしました。外側からみていると事件ということだけで見てしまって、誰かに助けを求めれば良いのにと思ってしまうと思うんですけど、そうではない状況が裏側にある。立場によって見てる景色が全く違う。それを防ぐために、誰かと話をしたり介護することを共有する、どういうセイフティーネットがあるのか調べる選択肢を持っておいてほしいと思いますね。

結局こう思うのも余裕がある人が出来る。余裕がなければ今目の前にいるお父さんの介護で精一杯になってしまう。周りの人たちが孤立にさせない事が大切です。皆さんもこれから介護を経験されたり、介護の仕事に携わっていく方もいると思いますが、介護についてたくさんの人と共有していく事で救われる命が増える可能性があると思う。学んだ人だけが見えているものではなくて、たくさんの人が見えていないといけない課題だと思います。」と学生たちに語りかけました。
 


最後に、本作を通して斯波のように介護殺人を起こさないために、「支援者の立場としてサポートする事があった時には、目の前にいる人達の背景に思いを馳せてほしい。介護者へも支援が必要。そして何よりも大切なのは一人でも多くの人がこの社会問題に関心をもつことが大切」と今回の授業のテーマを学生たちに呼びかけ、公開特別授業は終了しました。

公開は、いよいよ今週末。社会問題に深く切り込んだテーマに前田監督が挑み、俳優陣の鬼気迫る演技で我々に問いかける本作を、ぜひ劇場でご覧ください!

映画『ロストケア』2023年3月24日(金)全国公開!

ストーリー
早朝の民家で老人と介護センター所長の死体が発見された。犯人として捜査線上に浮かんだのは死んだ所長が務める訪問介護センターに勤める斯波宗典(松山ケンイチ)。彼は献身的な介護士として介護家族に慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が務める訪問介護センターで老人の死亡率が異常に高いことを突き止める。この介護センターでいったい何が起きているのか?大友は真実を明らかにするべく取り調べ室で斯波と対峙する。「私は救いました」。斯波は犯行を認めたものの、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」だと主張する。斯波の言う「救い」とは一体何を意味するのか。なぜ、心優しい青年が未曽有の連続殺人犯となったのか。斯波の揺るぎない信念に向き合い、事件の真相に迫る時、大友の心は激しく揺さぶられる。
「救いとは?」「正義とは?」「家族の幸せとは?」現在の日本が抱える社会と家族の問題に正面から切り込む、社会派エンターテインメント映画が、今幕を開ける!


©2023「ロストケア」製作委員会


<映画「ロストケア」主題歌 リリース情報>
森山直太朗
配信シングル「さもありなん」(ユニバーサルミュージック)
2023年3月1日(水)リリース
https://lnk.to/samoari


映画『ロストケア』関連ニュース
サントラ盤発売決定
Special Screeningの模様
場面写真一挙解禁
完成披露舞台挨拶の模様
公開日決定&本予告解禁
特報解禁&主題歌決定
第二弾キャスト解禁
映画化決定

 

『ロストケア』

★2023年3月24日(金)全国公開★

殺人犯 VS 検事 運命の激突—。

監督:前田哲 脚本:龍居由佳里 前田哲

原作:葉真中 顕「ロスト・ケア」(光文社文庫刊)

出演:松山ケンイチ 長澤まさみ 鈴鹿央士 坂井真紀 戸田菜穂 峯村リエ 加藤菜津 やす(ずん) 岩谷健司 井上肇 綾戸智恵 梶原善 藤田弓子 / 柄本 明

配給:日活 東京テアトル