
ラジオが「ドイツの全放送局からナイトコンサートをお届けします」と伝える。
ブリュッセルにルクセンブルクに、そしてパリにも放送が流れる。どの都市もナチス・ドイツ占領下にあった。
ラジオから聴こえるのは、ベートーヴェンの交響曲第7番。指揮はフルトヴェングラー。
そこに1944年8月の蜂起後、ドイツ軍の報復攻撃によって破壊し尽くされたワルシャワの実写映像が重なる。
果たして、これがパリの明日の姿なのか。
1944年8月25日未明のパリ。リヴォリ通りに建つホテル ル・ムーリスにパリ防衛司令官ディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍率いるナチス・ドイツ軍が駐留していた。そこに、アメリカ・イギリス・自由フランス軍からなる連合軍が防衛線を突破し、パリ市街に近づいてきたと電報が届く。連合軍の進撃にレジスタンスは活気づく。ドイツの敗北は時間の問題。
ヒトラー総統が計画した「パリ壊滅作戦」を実行するための作戦会議が始まった。ヒトラーはパリを愛した。だが、戦闘によってベルリンが廃墟となった今、パリだけが輝いているのは許せない。ただそれだけのための、「戦略上何の意味もない」壊滅作戦。爆破箇所は、ポンヌフを除く市内33本すべての橋、ノートルダム大聖堂、ルーヴル美術館、オペラ座・・・地図を広げ、建築技師の説明を聴くコルティッツ。会議が終わり、ひとり部屋に残ったコルティッツがベルリンからの電話を受けたと同時に部屋の明りが消える。明りが戻った時、そこに一人の男が立っていた。
パリで生まれ育ったスウェーデン総領事ラウル・ノルドリンクだ。ノルドリンクは来訪の理由を告げる。「停戦を提案しに来た」。司令官として総統命令に服従しなければならないコルティッツと、自身の故郷でもある美しき街パリを破壊から守りたいノルドリンク。二人の駆け引きが始まった!
相手の懐を探り、押したり、引いたり…駆け引きを続けるノルドリンク。すると、ベルリンから「ルーヴルの絵を保護してベルリンに運べ」と、戦局とは全く関係ない指令が届く。さすがに憤りを感じたコルティッツは、ノルドリンクに語り始めた。彼にはヒトラーの命に背けない理由があったのだ。ヒトラーがコルティッツのパリ赴任前日に公布した親族連座法“ジッペンハフト”だ。パリを爆破しなければ自分の家族は処刑されてしまう。コルティッツは、少しずつ“軍人”としてではなく“一人の人間”として対話に応じるようになっていく。「命令に従えば家族は無事だ。だが命令に背けば・・・。君が私ならどうする?」。「わからない」としか答えられないノルドリンク。
パリ郊外に米軍が入ったという一報が知らされ、一気に情勢が動き始める。ノルドリンクはこの機を逃さず、コルティッツに家族を国外逃亡させることを持ちかける。が、「逃げればゲシュタポに追われる。捕まれば死ぬより酷い事態にもなる」とコルティッツは拒否。「お引き取りを」。もはや万策尽き果てたか。だがその時・・・!
スウェーデン総領事ノルドリンクは、いかにしてパリを救ったのか…?