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『散歩する侵略者』第22回釜山国際映画祭公式上映で熱心なファンから質問が殺到し、黒沢清監督も大感激!
2017年10月19日(木曜日)

国内外で常に注目を集める黒沢清監督が劇作家・前川知大氏率いる劇団イキウメの人気舞台を映画化し、全国劇場にて大ヒット上映中の『散歩する侵略者』が、10/12より開催中の【第22回釜山国際映画祭】に正式出品され、公式上映が行われました。

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本作は、数日間の行方不明の後、夫が"侵略者"に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアをもとに日常が異変に巻き込まれていく世界を、長澤まさみさん、松田龍平さん、長谷川博己さん、高杉真宙さん、恒松祐里さんほか日本を代表する豪華キャストを迎えて描く、誰も見たことがない新たなエンターテインメント。

第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、その後もニューヨーク映画祭、シッチェス・カタロニア国際映画祭はじめ、世界各国の映画祭で上映、さらに世界25カ国での劇場公開がすでに決定しています。

今回正式出品された、釜山国際映画祭「アジア映画の窓」部門は、さまざまな視点とスタイルを持つ、アジアが誇る才能豊かな映画監督たちの優れた作品を紹介する部門です。現地時間10/18に行われた公式上映には、劇場を満席に埋め尽くす多くのファンが集まり、黒沢清監督が上映後のティーチインに登場すると大きな拍手が巻き起こりました。

まずは黒沢監督の「本日はご覧いただき、ありがとうございました。釜山映画祭には毎年のように来ていますが、季節の変わり目でこんなに寒いのは初めて経験しました。海岸に誰もいない釜山は初めてです。この映画でもだんだん人がいなくなって、日本の街から最後にはほとんど人がいなくなってしまうわけですけれども、今の釜山の街ほどそれが劇的に描けていたかはわかりませんが、楽しんでいただけたのなら嬉しいです」という挨拶で、イベントはスタートしました。

質疑応答が始まると、熱心なファンたちからたくさんの質問の手が上がりました。まず最初に、なぜこの題材を映像化したのかを問われると、黒沢監督は「ご覧になっておわかりだと思いますが、作品のテーマ自体は宇宙人の侵略というハリウッド映画でもよくある、大変お金がかかるような題材です。ただこの作品では同じテーマを扱いながらも、軍隊、政治家、科学者は一切出てこなくて、基本的には夫婦の愛の物語を中心として世界がだんだんと変化、変貌していく様を描いている、そこが魅力的だなと思いました。ハリウッドのようにお金がなくても、特別なものすごい技術を使わなくても、基本的には"日常"を描くだけで、非常に大きなテーマにチャレンジできるというところが、何と言ってもこの原作の基になったアイデアの素晴らしいところだと思い、すぐに映画化したいと思いました」と語りました。

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黒沢監督にホラーのイメージを求めるお客様からの質問には「ホラーを楽しみにしていただいた皆さん、どうもすみませんでした(笑)。今回は全くホラーではありません。でも、僕はホラー映画ばかり撮っているわけではなくて、いろんなジャンルの映画をこれまでも撮ってきました。注意深く観てくださるとわかるのですが、過去の作品もホラーであっても夫婦の関係であったり、若い男女の愛がどのように成立するのか、ということが物語の中心だったりしました。今回はSFというジャンルですが、SFというのは最初に現実と少し違う設定を設けるだけで、その中の物語はなんでもありなんです。なので、今回は割と素直に夫婦の物語を描くことができたというのが実感です」と、様々なジャンルを撮ってきた黒沢監督ならではの実感を込めて答えました。

映画と原作との違いについては「大きく言うと夫婦の物語は原作に近く、ジャーナリストと若い2人の3人の描写は原作とかなり違っています。原作はもともと舞台の戯曲だったので、ほとんど場所が一箇所、夫婦の場合は夫婦の家、もう一方の3人も家の近所のような設定だったのですが、そこは映画なのでジャーナリストと若い2人はもう少しあちこち動き回って、どんどん移動して、結構大変な目に遭うということにしようと考えました」と語りました。

また、本作の中で描かれる"概念"を奪われた状態をどのように表現しようと考えたのかについては「概念が奪われる、という設定をどこまで描写してどのようなドラマとして表現するのかは、かなり悩みました。その概念がなくなってしまう、というのがどういう状態なのかを色々と想像したのですが、それをリアルに思い描くことは難しかったです。ただ一つだけ考えたのは"家族"や"仕事"などの概念はとても重要ですが、人間が小さな頃から成長していくに従って覚え、学ぶ概念で、それを奪われるということはそれを知らなかった子供に戻るということだと。そして多くの概念を奪われると、なぜか少し幸せそうになるというのは子供に戻る、つまり縛られていた概念から自由になるという狙いで描きました」と説明。

本作の世界観の中で"日本ならではの描写"について問われると「そういうものは僕が努力しなくても、俳優や撮影している町の風景、東京ではないどこでもないような少し地方の町の有り様や俳優の演技によって嫌でも日本的な何かが映るので、僕はそれ以上、日本的な何かを出そうとは思っていません。一方でアメリカ映画のようにしたいとも思っていませんが、僕は世界中のどこでも通用する"映画"であろう、"映画"にしようと思って作っただけです」と、真摯に答えました。

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会場にはまだ質問を求める多くの手が挙がっていましたが、残念ながら時間切れ。最後に黒沢監督は「釜山映画祭ではいつも驚き、感激するのですが、質問の質がものすごく高くて映画をしっかりと観ていただいているのが伝わってきて本当に嬉しいです。もっともっと手を挙げてくださった皆さんの質問にもお答えしたかったのですが、すみません。また来年も来たいと思っています。また来年皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました」との挨拶で結びました。

ティーチイン後は、韓国でも大人気の黒沢監督らしく若いファンたちがサインや写真撮影を求めて殺到し、行列を作りました。黒沢監督は時間をかけてお一人一人に丁寧に応え、大盛り上がりのイベントを終えました。


映画 『散歩する侵略者』 大ヒット上映中!


世界も注目する黒沢清監督最新作『散歩する侵略者』を、ぜひスクリーンでお楽しくください。


ストーリー
数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか...?その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


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『散歩する侵略者』

★2017/9/9(土)公開★

世界は終わるのかもしれない。それでも、一緒に生きたい。

監督:黒沢清

出演:長澤まさみ 松田龍平 高杉真宙 恒松祐里
前田敦子 満島真之介 児嶋一哉 光石研 東出昌大
小泉今日子 笹野高史 長谷川博己 ほか

©2017『散歩する侵略者』製作委員会



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