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大ヒット上映中『散歩する侵略者』黒沢清監督が、ネタバレ解禁で本音トーク連発!会場には海外から駆けつけたファンも!
2017年09月28日(木曜日)

国内外で常に注目を集める黒沢清監督が、劇作家・前川知大氏率いる劇団イキウメの人気舞台を映画化した『散歩する侵略者』が大ヒット上映中です。9/27(水)シネ・リーブル池袋で行われたトークイベントに黒沢清監督が登壇。お客様の質問に答えるとともに、制作秘話や演出意図など公開後の今だから語れるエピソードを明かしました!

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本作は、数日間の行方不明の後、夫が"侵略者"に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアをもとに、日常が異変に巻き込まれていく世界を描く、誰も見たことがない新たなエンターテインメント。

夫の異変に戸惑いながらも夫婦の再生のために奔走する主人公・加瀬鳴海を長澤まさみさん、侵略者に乗っ取られた夫・加瀬真治を松田龍平さん、一家惨殺事件の取材中に侵略者と出会うジャーナリスト・桜井を長谷川博己さん、そして桜井が密着取材を申し入れる若き侵略者たち-天野を高杉真宙さん、立花あきらを恒松祐里さんが演じるほか、前田敦子さん、満島真之介さん、児嶋一哉さん、光石研さん、東出昌大さん、小泉今日子さん、笹野高史さんら豪華オールスターキャストが顔を揃えています。

すでに映画をご覧になった方は「今までに観たことがない新感覚の映画」「俳優陣の演技が凄い!」「散歩する侵略者の伏線が気になる...」などストーリーや設定について様々な論争を巻き起こし、SNS等でも盛り上がっています。公開後だからこそ語られる貴重なエピソードが聞けるとあって、会場には多くのお客様がご来場。黒沢監督は「公開からしばらく経っていますが、お集まりいただきありがとうございます。今日は僕だけのイベントなので、のんびり、ほんわかしたトークになればいいなと思っています」とご挨拶しました。

宇宙人が地球を侵略するという本作の設定に関して、未知なる宇宙人のイメージを具体化するのには苦労したと語る黒沢監督。「実は"宇宙人"というワードは宣伝では言わないようにとのことで、"侵略者"と言っていたのですが、侵略者と言われても余計になんだかわからないですよね。それでも予告編をよく見ると"宇宙人"と言っていますよね。あれはいいんですか(笑)!?

松田龍平さんをはじめ、侵略者役のキャストの方にも"宇宙人ってどういう設定ですか?"と聞かれましたが、はじめは"わかりません"と答えました。実際にわからなかったので(笑)。脚本を書いている時に、"宇宙人"というと何だか乱暴な言い方なので、"金星人"にしようかとか、もう少し遠い"アンドロメダ銀河"から来たということにしようかとも思いましたが(会場笑)、でも言い方を変えたところで意味合いは変わらないし、よくわからない。結局"宇宙人"を演じてください、とキャストの方にお伝えしたところ、納得してそれぞれの俳優の宇宙人っぽさを出して演じてくれましたね」と明かしました。

また、長澤まさみさん演じる主人公・加瀬鳴海の「あーあ、やんなっちゃうなぁ」というセリフに反響が集まっていることについては「主には夫の真治に対する言葉なのですが、それだけでなく環境や仕事のこと、世の中全体に対してのもどかしさ、このままではいけないと思っても何もできない・・・という全体的なことのつぶやきの一つとして、鳴海に言わせてみました。長澤さんにニュアンスを伝えるために、僕は滅多にそういうことはしないのですが、今回は脚本に(杉村春子風にと)ハッキリ書いたら、長澤さんはそれを見て"はい、わかります"と、実に見事に演じてくれました」と、往年の名女優へのオマージュを語りました。

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


侵略者はじめ様々な個性的キャラクターが登場する本作。長谷川博己さんが演じたジャーナリスト・桜井らを追い詰める、笹野高史さん演じる謎の男のキャラクター設定は一番苦労したと明かし「笹野さんが率いる男たちの集団がいるのですが、"ジャンパー姿の男たち"と呼んでいました。彼らについては"なんだこの人たちは!?"というのを狙いました。

この映画は、所々かなりの部分でふざけていて(笑)。もしこの物語の中で、本気で警察組織や軍事組織などの権力が登場したとしたら、侵略者たちも肉体は人間と変わらないので実はひとたまりもない、まったく歯が立たないんです。彼らは侵略者に気づいたある組織であって、侵略者との緊張関係が継続するドラマを進めていくために、組織は強すぎてはいけない、あまりにふざけすぎてもいけないし、どの程度の武装なのか、服装なのかというところでとてもこだわりました。結果、制服などではなく、思い思いのジャンパーを着ていただきました(笑)。持っている武器も警官よりはちょっとごつくて、戦闘用よりは小さな機関銃、フランスの警察官が持っているベレッタM12という機関銃を持っていたり。ものすごい微妙なところを狙いました」とこだわりを語りました。

さらには笹野高史さんのキャスティングにも言及。「最終的には、笹野さんが登場すると一気にもっていかれる。大好きなんです、笹野さん。"うわ、出た"と思う"出た"感が半端ないです(笑)。怖いといえば怖いし、ふざけていると言えばふざけているのですが、実際に存在しないようで存在するキャラクターに見えるのは、笹野さんの演技の力です。笹野さんに本当に助けられました」と笹野さんの演技を絶賛。

また「脚本が出来上がったときに、脚本のど真ん中にどんなシーンがきているかは非常に重要。そこからガラッと映画のタッチが変わる、とても重要なシーンが来ているのが脚本の基本形だと考えているのですが、今回も何も考えずに書き終えてパッと開いてみたら、笹野さんの登場シーンだったんですよ!それまでは"宇宙人なんだ"と言っている人がいても、"本当かよ?"と少しふざけたように物語が進んでいくのですが、そこからは客観的にも"本当におかしな現象が起こっているんだ!"と、組織が動いているのがわかる瞬間が、ちゃんと真ん中に来ていましたね」と物語だけなく、現実の脚本にさえ運命的に登場してしまう笹野さんについて熱く語りました。

笹野さんのシーンだけではなく、アンジャッシュの児島さんが演じる車田についても言及。「児島さんのシーンも、どう考えても可笑しいですよね。その他にもところどころ明らかに可笑しなシーンを入れていて、ここは可笑しいんですよとわかるように、カメラの後ろでスタッフが笑っているみたいな声を入れたいくらいでした(笑)。それはさすがに控えましたが、宇宙人が侵略しにくる話なので、これは冗談なのか?というのがわかりづらいと思いますが、どのようにご覧になるかは、観ていただいた方のご自由に、ということで。ただ僕としては珍しく、かなりの部分はコミカルに作りました」

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


ここで会場のお客様から質問を募り、黒沢監督に答えていただきました。なんと韓国から来たという黒沢監督のファンからは「映画を観て、とても感動しました。黒沢監督がロケ地を選ぶ時に重要だと感じることは何ですか」という質問が。黒沢監督は「原作が地方都市という設定ですが、東京から離れてしまうと方言が出てきますよね。方言は使いたくないと思ったので、標準語の範囲の場所に設定しました」とコメントし、実際の撮影には栃木や埼玉、静岡のあまり特定できない、どこにでもある場所をあえて選んだことを明かしました。

また、「映画だけでなくスピンオフドラマ『予兆 散歩する侵略者』にも出演されている東出昌大さんについて聞きたい!」という質問に、「東出さん演じる牧師、ドラマの方ではどうなっていくのか。果たして同じ人物なのかどうか、見所ですので自分の目で確かめてみてください。東出さん、相当なことになってます。(東出さん出演の人気の某テレビドラマの名前を挙げて)あれどころじゃないっていう(笑)」と、今回唯一、映画とドラマの両方に出演されている東出さんについて語りました。

最後に、黒沢監督からメッセージをいただきました。

黒沢監督「ご覧になったとおり色んな要素が詰まっている映画ですので、ひとことで言い表すのは難しいかもしれません。でも、だからこそ色んな言葉にしていただき、皆さんの心の中にできるだけ長く残ってくれたらいいなと思います。映画というものは、簡単に言葉で表せるものだけではありません。皆さんの心の中に残っている何かが、どなたかにこの映画のことを語る時に何かの大きな原動力になってくれたら嬉しいなと思っています。じっくり余韻を味わってください。本日はどうもありがとうございました」


映画 『散歩する侵略者』 大ヒット上映中!


黒沢清監督こだわりの演出、裏話などにも注目しながら、また違った視点で本作をお楽しみください!

ストーリー
数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか...?その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


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『散歩する侵略者』

★2017/9/9(土)公開★

世界は終わるのかもしれない。それでも、一緒に生きたい。

監督:黒沢清

出演:長澤まさみ 松田龍平 高杉真宙 恒松祐里
前田敦子 満島真之介 児嶋一哉 光石研 東出昌大
小泉今日子 笹野高史 長谷川博己 ほか

©2017『散歩する侵略者』製作委員会



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