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大ヒット上映中『散歩する侵略者』黒沢清監督が原作者・前川知大氏と対談、原作への熱い思いを明かす!
2017年09月20日(水曜日)

9/19(火)Apple 銀座で開催された「Perspectives」に、公開以来話題沸騰の映画『散歩する侵略者』の黒沢清監督と原作者・前川知大さんが登壇し、トークセッションが行われました!

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国内外で常に注目を集める黒沢清監督が、劇作家・前川知大氏率いる劇団イキウメの人気舞台を映画化した『散歩する侵略者』。本作は、数日間の行方不明の後、夫が"侵略者"に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイディアをもとに、日常が異変に巻き込まれていく世界を描く、誰も見たことがない新たなエンターテインメントです。

夫の異変に戸惑いながらも夫婦の再生のために奔走する主人公・加瀬鳴海を長澤まさみさん、侵略者に乗っ取られた夫・加瀬真治を松田龍平さん、一家惨殺事件の取材中に侵略者と出会うジャーナリスト・桜井を長谷川博己さん、そして桜井が密着取材を申し入れる若き侵略者たち-天野を高杉真宙さん、立花あきらを恒松祐里さんが演じます。5人は黒沢組初参加、それぞれが映画初共演という新鮮な顔合わせ。さらに、前田敦子さん、満島真之介さん、児嶋一哉さん、光石研さん、東出昌大さん、小泉今日子さん、笹野高史さんら豪華オールスターキャストの競演が実現し、全国劇場にて大絶賛上映中です。

この日行われたイベント「Perspectives」は、影響力のあるクリエイターたちが自身のクリエイティブな制作過程を語ったり、才能を披露するToday at Appleの人気プログラム。お2人には映画『散歩する侵略者』の製作秘話から戯曲の映画化、映画と演劇の創作について、たっぷりとお話しいただきました。

毎回トップクリエイターたちによる創作秘話が披露される注目のイベントだけあり、会場は満席。立ち見が出るほどの大盛況ぶりでした。そんな中、本作のメガホンを執った黒沢清監督と、原作を手掛けた劇作家・演出家の前川知大氏が登場すると、会場は大きな拍手に包まれました。

まず、黒沢監督は「今日は『散歩する侵略者』の原作者である前川さんと一緒ということで、二人でこういった場でお話しするのは初めてです。ネタバレしないように気をつけないとと思いながら、ぼちぼちやろうと思っています」と、ご挨拶。前川氏は「監督とは何度か対談したことはあったのですが、毎回違う話に転がっていくので、今日はまた新しい話をできたらいいなと思っています。よろしくお願いします」と続けました。

前川氏による原作小説を読んだことをきっかけに、映画化を熱望した黒沢監督。「小説の次に舞台を観て、とにかく劇団イキウメのファンになってしまいました。あの俳優が今日は違う役をやっているだとか、毎回違う楽しさがあって。イキウメの作品は、ごく当たり前の日常があって、そこに『それって本当?』というような、ありえないようなことが起こる。その展開がスリリングという言い方であっているかどうかわかりませんが、とにかくイキウメのファンなんです」と絶賛します。

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前川氏も黒沢監督作品のファンだったそうで、自身の作品が黒沢監督の手により映画化されることを知った時は「前から自分が影響を受けたものとして、黒沢監督の名前を常に挙げるほど大ファンだったので、それですごくビックリして。ちょうど2011年に戯曲を出すときに、対談させていただこうということになりました」と、とても驚いたそう。

そんな黒沢監督作品とイキウメの舞台には、日常の中に潜む違和感を描いているという共通点があります。この共通点について前川氏は「最初に観たのは『CURE』でした。また『回路』や『降霊』などの幽霊描写にも衝撃を受けて、『カリスマ』『ニンゲン合格』も観ました。それが、ちょうど演劇を始める前の大学時代に自主映画を撮りたいと創作活動を始めていた時期で、2000年前後のそのあたりの黒沢監督の映画にかなり影響を受けていました。黒沢監督の作風として語られる言葉というのが、そのままイキウメの作風に結構当てはまるなと思っていて。それはやっぱり僕の影響を受けたもののベースになるのが、黒沢映画だから。演劇でSFやホラー、オカルトを表現しようと思って始めたのがイキウメなんです。なので、黒沢監督作品に似てきてよかったなと思っています。というかちゃんと出来ている感じがします」と語りました。

また、「映画は、日常を映すというのはかなり簡単なんですよ。日常は、その辺にゴロゴロ転がっているものをただ撮ればいいですが、演劇でまず日常から始めるって結構大変じゃないですか?」と、舞台においての日常描写についてたずねる黒沢監督に対し、「演劇は、会話の雰囲気や俳優の仕草に日常性がある」と答える前川氏。

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「映画の台本を稿を重ねるたびに送っていただいていたのですが、印象としては、演劇に比べて言葉がシンプルでストレートなんですよね。それって戯曲からするとやりすぎじゃないか、と思っていたんですけど、実際に映画を観ていると日常は映っている画で表現できている。言葉が日常から離れていても、シンプルで情報としてストンと入ってくる感じというのは、バランスがいいのではないかと思いました。演劇は、逆に日常生活のノイズを入れて、言い澱みや思考している時のタイムラグを重視しています」と、映画と演劇の表現方法の違いを明かし、黒沢監督も「ものすごく納得しました」と大きくうなずきました。

さらに、黒沢監督は「普段、日常の中では絶対言わないようなセリフも、俳優の力を持ってすれば何気なく言えてしまうことはあります。今回だと、長澤まさみさんにも、それに近いことをやってもらいましたね。実にうまく言ってもらって、その時もやはり俳優の力だよね、と感激しました」とコメント。

また黒沢監督は、映画化に際して加えた部分として「娯楽映画っぽくしたいという僕の欲望から、侵略者と侵略者を追いつめる悪役という構図、映画としてわかりやすい構造を付け加えましたが、侵略者のありようはほとんど演劇と変えませんでした」と語り、一方で、額に人差し指をあて概念を奪う動きは黒沢監督による演出だったようで「侵略者が概念を奪う仕草は、前から決めていたのではなく、ついやってしまいました(笑)。わかりやすいので、ついやっちゃったんですよ(笑)。怖いというようりは、おどけたような描写として取り入れました」と明かしました。

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


前川氏は「松田さんは、普段から宇宙人っぽいですよね(笑)。演劇でも何度かやっていますが、真治という役はすごく難しくて、俳優本人が持っている佇まいとか雰囲気が重視されます。侵略者に乗っ取られてしまって真っ新な状態で世の中を見るとということを演じないといけないので、俳優本人の何かが出るという感じがしていて。松田龍平さんの真治は面白かったですね。可愛らしいけれど怖いし、怖いんだけど守ってあげなきゃ、という雰囲気があって。すごく良かったです」と、まさに松田さんは侵略者である真治役に適任だったと語りました。

ここで話題は、本作のスピンオフドラマ「予兆 散歩する侵略者」(毎週月曜深夜0:00よりWOWOWプライムにて放送中)について。黒沢監督は「時間軸は映画と並行して進んでいきます。原作や映画にもある、侵略者、ガイド、人間の3人の中で疑心暗鬼や騙し合いがあり、まさに侵略の予兆を描いているドラマです」とコメントし、前川氏も「侵略者のガイドになった男と、その妻という設定が面白い」と、それぞれ映画とは違った魅力を語りました。

また、会場に集まったお客様より質問を募り、黒沢監督と前川氏に答えていただきました。本作は、サスペンスとロマンチックな要素の両方が兼ね備えられているように見えるという点について、黒沢監督は「そういう風に観ていただけるのは嬉しいです。前川さんの原作がホラーと夫婦の愛の両方を描いていて、これを一番うまく映画にできるのは僕しかいないと思っていました」と、再び原作への強い思いを吐露しました。

一場面でありながらも、強烈な印象を残した東出昌大さん演じる牧師について、スピンオフドラマでの立ち位置を問われると、黒沢監督は「映画で松田さん演じる真治が唯一概念を奪えなかった相手は、東出さん演じる牧師なんです。それは、彼にまったくその概念がなかったからです。スピンオフドラマの役との繋がりについては、ここでは言いたくありません(笑)。ぜひ映画との違いを楽しんでください」と、スピンオフドラマへの期待を膨らませます。

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最後に黒沢監督と前川氏より、会場の皆様へメッセージをいただきました。

黒沢監督「前川さんには、この場でしか聞けないようなことを聞けて、意義のある豊かな時間を過ごせました。これから映画をご覧になる方もいらっしゃると思いますが、とても壮大でダイナミックな物語になっています。たった一言で語れるシンプルな作品ではないと思います。ただ観終わった後には、ある、かなり強烈なメッセージを伝えられたかなと思いますので、それが何であったか覚えていてほしいと思いますし、これからご覧になる方は最後にそのようなメッセージがあるんだと思って、楽しみに観ていただけたら嬉しいです」

前川氏「演劇というメディアの制約から生まれたアイディアが、黒沢監督の手で映画になったのは、とても光栄です。今日、黒沢監督から『この作品を一番うまく映画にできるのは、僕だ』という言葉を聞けて嬉しかったですし、色んなテーマが詰まっているこの物語が、海を越えて広がることも嬉しいです。今日はありがとうございました」

黒沢監督と前川氏が原作・映画への強い思いを語るとともに、映画と演劇の違いと魅力が明かされた大盛り上がりのイベントとなりました。


映画 『散歩する侵略者』 大ヒット上映中!


原作と劇団イキウメのファンで「この原作を一番うまく映画にできるのは、僕しかいない」と断言する黒沢清監督。そして、そんな黒沢監督の大ファンで、創作に多大な影響をうけていると明かす原作者・前川知大氏。そんなおふたりから生み出された本作を、ぜひ劇場でお楽しみください!

ストーリー
数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか...?その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

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©2017『散歩する侵略者』製作委員会


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公開後トークイベント
スピンオフドラマ「予兆 散歩する侵略者」完成披露
初日舞台挨拶
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新米宣伝マンのカンヌ生レポート
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『散歩する侵略者』

★2017/9/9(土)公開★

世界は終わるのかもしれない。それでも、一緒に生きたい。

監督:黒沢清

出演:長澤まさみ 松田龍平 高杉真宙 恒松祐里
前田敦子 満島真之介 児嶋一哉 光石研 東出昌大
小泉今日子 笹野高史 長谷川博己 ほか

©2017『散歩する侵略者』製作委員会



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