『赤い橋』を渡り、汽水が愛の泉と変わるとき、至福の愛がはじまるー。  
淡水と海水が交じり合う水を「汽水」という。淡水と海水が混じり合う水、「汽水」。
汽水には、その水が美味いのか、それとも居心地 が良いのか、不思議と色々な魚が集まってくる。そんな汽水が漂う能登半島のある漁港の町に、リストラされて人生を失った男・陽介が流れ着く。陽介はそこで祖母と二人きりで暮らす妙齢の美女サエコと出会い二人は恋に溺れる…。
陽介は、サエコが生まれ持つ「いけない秘密」を知り、その秘密に何故か癒されていく。
サエコのために東京を捨て漁師になることを決意し、第二の人生を生きる誓いを立てた陽介。
しかし、サエコの「いけない秘密」は次第にその輝きをなくしていくのだった…。
今村昌平監督がこの秋に贈る、至福に満ちた愛のファンタジー!!


俗情が俗念に移り行き、愛の言霊が動き始める---。   
初秋の東京・下町。リストラされた失業中の中年男・笹野陽介(役所広司)は、職探しの合間に、隅田川沿いのホームレスの集落を訪れていた。ある日そこで人生の師と仰ぐタロウ(北村和夫)の死に直面 する。
陽介は、生前のタロウから「盗んだ金の仏像を、能登半島の日本海に面した赤い橋のたもとの家に隠した。俺の代わりにあの家に行ってくれ。目印は、家の門の前に咲くノウゼンカズラだ」と聞かされていた。陽介の足は自然と「赤い橋のたもとの家」へと向かっていく。
陽介は、富山湾沿いを走る氷見線のある駅に降り立ち、場所を尋ねながらようやく赤い橋にたどり着く。その橋の向こうには、ノウゼンカズラが咲き誇る二階建ての家が本当にあった。
陽介は、その家から現れた妙齢の女性・サエコ(清水美砂)の後を、何かに憑かれたようについて行く。するとスーパーでサエコが、手に取ったチーズをバッグにひそませ、感に堪えない表情をする様子に興味を惹かれる。
…サエコの立ち去った跡には、不思議な水たまりができ、水の中には片方だけの銀色のイヤリングが残されていた…。
サエコのあとを追い、赤い橋のたもとの家に戻りつく。家に入るとミツ(倍賞美津子)とサエコが待っていた。陽介を二階へ誘うサエコ。二階からは、タロウの言葉どおりに赤い橋が見渡せ、日本海の向こうには雄大な立山連峰が広がっていた。
サエコは自分は和菓子職人で、祖母のミツは神社におみくじを書いて納めている事を陽介に語り始める。そして、突然陽介の口に氷を含ませ、押し倒し、うつろな眼差しで繰り返し大きく息を吐いた。歓喜の声を発するサエコ、その時サエコの体からは不思議な水が湧き出ていた…。
サエコは、水が体内に溜まると我慢できなくなり、万引きをすることを陽介に告白する。
陽介はそんなサエコに惹かれ、猟師になることを決意する。漁から帰ると一目散にサエコの家に走り込み、二人は毎日のように愛を確かめ合う。しかし、ある日陽介は、サエコの不思議な水が減っていくことに気づくのだった…。
サエコを疑いはじめる陽介。そんな時、猟師の新太郎の父・正之(夏八木勲)から、かつて流れ者がサエコをめぐる痴情のもつれで猟師を刺したという話を聞かされる。
そしてある日、陽介は街中で見知らぬ男・泰造(ガダルカナルタカ)と親しげに話すサエコを目撃する。車に乗り込むサエコ。陽介は新太郎から50ccバイクを借り、二人のあとをつけ始めるのだが、陽介を待っていたのは、意外なる真実だった…。