カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンをはじめとする海外映画祭を賑わせた8作品が日本へ凱旋!日活110周年記念特集上映『 Nikkatsu World Selection』一挙上映決定!!
2022.08.24(水曜日)

今年、創立110周年を迎えた日活株式会社。日本最古の映画会社である日活の長い歴史の中でも、特に海外で高く評価されている名作8作品のデジタル復元版を、シネスイッチ銀座にて上映することが決定。待望の特集上映『Nikkatsu World Selection』の概要が解禁されました。

開催期間は11月3日(木・祝)から11月10日(木)まで。上映作品は過去10年間に世界50ヵ国以上にて、特に高い評価を得た8作品です。


©日活

まず、今年の第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出された、日本を代表する名匠・今村昌平監督の『神々の深き欲望』と、国内外で根強いファンを持つ鈴木清順監督の『殺しの烙印』

同じくヴェネツィア国際映画祭クラシック部門に昨年選出され、日活ロマンポルノの中でも傑作と呼び声が高い、田中登監督の『㊙色情めす市場』

川島雄三監督の代表作であり、第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門にて上映された『幕末太陽傳』。なお『幕末太陽傳』を含む日活の川島監督9作品は、2020年にMUBIで全世界に配信され、反響を呼びました。

小津安二郎監督がその才能に嫉妬したといわれる山中貞雄監督の作品は、第33回東京国際映画祭クラシックス部門で上映された『丹下左膳余話 百万両の壺』『河内山宗俊』。『丹下左膳余話 百万両の壺』は、戦後カットされた幻のシーンを本編に加えて復元。『河内山宗俊』には、伝説の女優・原節子が当時15歳で出演して、可憐なヒロインを演じています。

そして、大女優でありながら日本人で2人目の女性監督として活躍した、田中絹代監督の2作品の上映は特に貴重です。

カンヌ国際映画祭代表補佐であるクリスチャン・ジュンヌ氏に「なぜ今まで話題になっていなかったのか。我々はやっと田中絹代監督の偉大さを発見した」と言わしめ、『月は上りぬ』は第74回カンヌ国際映画祭のクラシック部門に選出されました。

田中絹代の監督としての才能は、近年、世界中で<新しい発見>として驚きをもって注目を集めており、パリで劇場公開されると、映画館に行列ができるほどの人気になりました。田中絹代監督の特集上映はニューヨーク、リンカーン・センターでも大盛況で、現在は、ロサンゼルスのアメリカン・シネマテークで実施中です。

また、昨年、東京国際映画祭で上映された『乳房よ永遠なれ』は、今年ニューヨーク近代美術館(MoMA)で上映されました。若くして逝った実在の歌人・中城ふみ子の生の煌めきを見事な演出で描いた感動作で、観客から「涙が止まらない。ぜひ劇場公開して、多くの人に見てもらいたい」と強いリクエストが日活に寄せられていました。

時代劇、感動作からロマンポルノまで。デジタル復元によって美しく蘇った日活のマスターピース8作品を、没入感の高いスクリーンでぜひご堪能ください。

『 Nikkatsu World Selection』2022年11月3日(木・祝)~11月10日(木)シネスイッチ銀座にて上映! ※全国順次公開
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『 Nikkatsu World Selection』
■日時
:2022年11月3日(木・祝)~11月10日(木)
■会場:シネスイッチ銀座 (東京都中央区銀座4-4-5 簱ビル)※全国順次公開
■上映作品:丹下左膳余話 百万両の壺/河内山宗俊/月は上りぬ/乳房よ永遠なれ/幕末太陽傳/殺しの烙印/神々の深き欲望/㊙色情めす市場

■公式HP: https://www.nikkatsu.com/110thfilms/
■公式Twitterhttps://twitter.com/110thfilms
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【作品紹介

⦅2022年選出⦆
★第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)

殺しの烙印ころしのらくいん
<清順美学>が全編に緊張感と笑いを孕む異色のハードボイルド。異才・鈴木清順監督の唯一無二の問題作!
プロの殺し屋ランキングNO.3の花田は、組織の幹部を護送する途中でNO.2とNO.4の殺し屋たちに襲撃されながらも任務を終え、殺し屋NO.2へランクを上げる。さらに上を目指す花田だったが、次の仕事で失敗すると、組織は美女・美沙子を差し向ける。惹かれ合う二人―。一方、花田は殺し屋NO.1・大類ともトップの座を賭けて対決することになり…。

宍戸錠が、炊飯器から炊き立てのご飯の匂いをかいで恍惚となるシーンはあまりにも有名。クエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュ、デイミアン・チャゼル、ニコラス・ウィンディング・レフン、ポン・ジュノ、パク・チャヌク、ウォン・カーウァイ…、多くの海外の監督からもリスペクトされる鈴木清順のスタイリッシュな魅力にあふれる異色のアクション映画。

監督:鈴木清順 脚本:具流八郎 撮影:永塚一栄 照明:三尾三郎 録音:秋野能伸 編集:鈴木晄 美術:川原資三 音楽:山本直純 助監督:葛生雅美
出演:宍戸錠 南原宏治 真理アンヌ 玉川伊佐男 小川万里子 南廣 大和屋竺
1967年/91分/モノクロ  ©日活

<その他の主な映画祭>
・第22回釜山国際映画祭(2017年)


©日活

⦅2022年選出⦆
★第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス) 

神々の深き欲望(かみがみのふかきよくぼう)

カンヌ国際映画祭で二度のパルムドール(最高賞)を受賞した今村昌平監督の初カラー作品にして、長期沖縄ロケを敢行した神話的大作!
文明から隔絶された南の孤島。約20年前に巨岩が突然現れると、島民は、戦地から帰還した根吉の乱行が神の怒りに触れたと考え、島の長は根吉に岩を埋める穴を掘ることを命じる。そこへ、製糖会社の技師・刈谷が開発工事の調査のために東京からやって来る。うだるような暑さの中、信仰深い島民との軋轢により仕事は思うように進まず、根吉の娘・トリ子の激しいアプローチを受け、刈谷は次第にトリ子に取り込まれていく…。

マーティン・スコセッシ監督は「今村昌平監督はマスターです」と敬愛の念を表し、ウェス・アンダーソン監督は自らのベスト10に今村作品をランクイン。また、アリ・アスター監督は「『神々の深き欲望』はもっとも好きな映画の1つ。『ミッドサマー』の製作準備期間中に観て参考にした」と語る。人間の本能、欲望、土俗、因習、タブー、近代文明への警鐘など、今村昌平が生涯追い続けたテーマが、俳優たちの鬼気迫る演技とともに壮大な風景の中で描かれ、観客をトランス状態へと導く。

監督:今村昌平 脚本:今村昌平、長谷部慶次 撮影:栃沢正夫 照明:岩木保夫 録音:紅谷愃一 編集:丹治睦夫 美術:大村武 音楽:黛敏郎
出演:三國連太郎 河原崎長一郎 北村和夫 沖山秀子 松井康子 加藤嘉 小松方正 殿山泰司 嵐寛寿郎 浜村純
1968年/175分/カラー ©日活

<その他の主な映画祭>
・第11回北京国際映画祭(2021年)
・第10回釜山国際映画祭(2005年)


©日活

⦅2021年選出⦆
★第74回カンヌ国際映画祭クラシック部門、第34回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門

月は上りぬ(つきはのぼりぬ)

脚本は巨匠・小津安二郎と斎藤良輔。田中絹代監督の二作目は、三姉妹の繊細な心模様を描いたラブ・コメディ!
東京から疎開した奈良に戦後も住み続ける父親と三姉妹。長女・千鶴は未亡人。三女・節子は、千鶴の亡夫の弟・昌二と交際中。節子は、次女・綾子と昌二の親友・雨宮が、お互いに好意を持っていると気づき、二人の仲を取り持とうと計画を立てるが…。

美しい古都、風通しの良さそうな家で暮らす家族の日常、月明かりのデート。田中絹代監督の的確なショットが生み出す映画のリズムが心地良い。快活だが自分の恋には不器用な節子をのびやかに演じる北原三枝が、天真爛漫な魅力たっぷり。現代のラブ・コメディとして楽しめる佳作。

監督:田中絹代 脚本:斎藤良輔、小津安二郎 撮影:峰重義 照明:藤林甲 録音:神谷正和 編集:近藤光雄 美術:木村威夫 音楽:斎藤高順 助監督:斎藤武市
出演:北原三枝 杉葉子 山根寿子 安井昌二 佐野周二 三島耕 笠智衆 田中絹代
1954年/102分/モノクロ  ©日活

<その他の主な映画祭>
・第46回香港国際映画祭(2022年)
・2021年リュミエール映画祭


©日活

⦅2021年選出⦆
★第34回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門

乳房よ永遠なれ(ちぶさよえいえんなれ)

歌人・中城ふみ子の半生を映画化した田中絹代監督の三作目にして代表作。歌を詠み、人を愛した女性の生の煌めきを月丘夢路主演で描いた感動作!
ふみ子は甲斐性なしの夫との離婚を決意し、二児を連れて実家に戻る。以前から参加していた歌会には、親友・きぬ子とその夫・堀がいる。堀はふみ子の短歌の才能を高く評価していたが、急逝してしまう。ひそかに想いを寄せていた堀の死と自らの乳がんの発覚に打ちのめされるふみ子のもとに、短歌の入選の知らせが届き、新聞記者・大月が取材にやってくる…。

田中絹代監督が「女性として感じることを女性として表現したい」と公言していたという渾身の作品。自らの俳優としてのキャリアを活かしたかのような、月丘夢路のクロース・アップの美しさ、透徹した演出は圧巻。田中絹代の強さと大きさすら感じさせ、時代を超えて、すべての観客の心を激しく揺さぶり続けるであろう傑作。

監督:田中絹代 原作:若月彰、中城ふみ子 脚本:田中澄江 撮影:藤岡粂信 照明:藤林甲 録音:神谷正和 編集:中村正 美術:中村公彦 音楽:斎藤高順 助監督:中島義次
出演:月丘夢路 葉山良二 杉葉子 森雅之 川崎弘子 大坂志郎 織本順吉 木室郁子 安部徹 左卜全 飯田蝶子 田中絹代
1955年/110分/モノクロ  ©日活

<その他の主な映画祭>
・第46回香港国際映画祭(2022年)
・第18回MoMA国際映画保存映画祭(2022年)
・2021年リュミエール映画祭


©日活

⦅2021年選出⦆
★第78回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)

㊙色情めす市場(まるひしきじょうめすいちば)

日活ロマンポルノの名匠・田中登監督が、大阪・釜ヶ崎を舞台に、ともに娼婦として生きる母と娘を通して、生と性に斬り込んだ孤高の傑作!
「うちな、なんや、逆らいたいんや…」。19歳のトメは、ドヤ街の近くで客を引くフリーの娼婦。店やヤクザから組織に入るよう言われても、頑として従わないほど強気だが、知的障がいのある弟には限りなく優しい顔を見せる。同じ娼婦である母との諍い、指名手配犯にそっくりの男や駆け落ちしてきたカップルとの出会いと別れ、そして弟の出奔を通して、トメが決意した覚悟とは…。

ドヤ街で隠し撮りしたドキュメンタリーのような生々しい映像、トメを演じる芹明香の圧倒的な存在感、モノクロからカラーへ転調する爆発力が、観る者すべてに鮮烈な印象を焼きつける映画史に残る傑作。

監督:田中登 脚本:いど あきお 撮影:安藤庄平 照明:新川真 録音:木村瑛二 編集:鍋島惇 美術:川崎軍二 音楽:樋口康雄 助監督:高橋芳郎
出演:芹明香 花柳幻舟 宮下順子 絵沢萠子 夢村四郎 萩原朔美 高橋明 岡本章
1974年/83分/パートカラー/R-18 ©日活

<その他の主な映画祭>
・第33回ナント三大陸映画祭(2011年)


©日活

⦅2020年選出⦆
★第33回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門

丹下左膳余話 百万両の壺(たんげさぜんよわ ひゃくまんりょうのつぼ)

アメリカ映画に多大な影響を受けた山中貞雄監督のセンスに驚嘆。多幸感あふれる愛すべき日本映画の至宝!
矢場の用心棒・丹下左膳は、女将・お藤の尻に敷かれながらも、のん気な暮らしを立てている。子供好きの左膳は、ひょんなことから育てることになったみなし児のちょび安を大切に可愛がっていた。偶然手に入れた壺にちょび安は金魚を入れていたが、この壺には百万両の謎が隠されていた…。

剣客・丹下左膳のイメージを逆手に取り、緻密なプロットと心憎い小道具の数々で泣き笑いのホームドラマ時代劇を完成させた山中貞雄監督は、製作時、わずか25歳という若さだった。

監督:山中貞雄 原作:林不忘 構成:山中貞雄 脚色:三村伸太郎 撮影:安本淳 照明:井上栄太郎 録音:中村敏夫 編集:福田理三郎 装置:島康平 音楽:西梧郎
出演:大河内傳次郎 喜代三 宗春太郎 澤村國太郎 花井蘭子 深水藤子 高勢実乗 鳥羽陽之助
1935年/92分/モノクロ ©日活

<その他の主な映画祭>
・第50回ロッテルダム国際映画祭(2021年)
・第33回ナント三大陸映画祭(2011年)


©日活

⦅2020年選出⦆
★第33回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門

河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)

可憐な原節子を守る男二人の心意気と色気。緩急自在、巧みな展開とラストの余韻はまさに至高の時代劇!
居酒屋に居候する河内山宗俊と、用心棒の金子市之丞。あてもなく日々を送る彼らの心の慰めは、甘酒屋の可憐な娘・お浪。しかし、不良の弟が不祥事を起こし、お浪は身売りを覚悟する。それを知った河内山と市之丞は、お浪を助けるべく立ち上がるのだが…。

講談「天保六花撰」と歌舞伎「天衣紛上野初花」を翻案した、ユーモアもある人情ドラマでありながら、ラストの立ち廻りのシーンの迫力には息をのむ。「あいつは俺の女房だ」「これで人間になった気がする」「ここらが俺たちの潮時だー」。忘れがたい名台詞を吐く二人の男が最高にクール!

監督:山中貞雄 脚色:三村伸太郎 撮影:町井春美 録音:万宝圭介 音楽:西梧郎
出演:河原崎長十郎 中村翫右衛門 原節子 市川扇升 山岸しづ江 助高屋助蔵 坂東調右衛門 市川莚司(加東大介)
1936年/82分/モノクロ ©日活

<その他の主な映画祭>
・2013年ボローニャ復元映画祭
・第33回ナント三大陸映画祭(2011年)


©日活

⦅2012年選出⦆
★第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門

幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)

一分の隙も無し!稀代の映画監督・川島雄三が、天才・フランキー堺とともに作り上げた奇跡の名作!
東海道品川宿にある遊郭・相模屋を訪れた佐平次は、勘定を心配する仲間をよそに芸者をあげて大騒ぎ。無一文で支払いは出来ず、佐平次は居残りと称して相模屋で働き始める。持ち前の機転を利かせ、女郎や客たちのトラブルを次々と解決し、相模屋の主人にも重宝されるように。また、相模屋で攘夷を画策する高杉晋作らにも一目置かれ、遊郭の人気者となるのだが…。

数々の古典落語をもとに、遊郭の人間模様を生き生きと軽妙に描きながらも、<ここではない他の場所>を求めるニヒルな佐平次をフランキー堺が驚異的な身体能力とスピード感で体現。左幸子、南田洋子、芦川いづみ、石原裕次郎、小林旭のキャスティングも見事にはまり、極上のエンターテインメントとしても楽しめる時代劇。

監督:川島雄三 脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平 撮影:高村倉太郎 照明:大西美津男 録音:橋本文雄 編集:中村正 美術:中村公彦、千葉一彦 音楽:黛敏郎 助監督:今村昌平
出演:フランキー堺 左幸子 南田洋子 石原裕次郎 芦川いづみ 梅野泰靖 金子信雄 山岡久乃 小林旭 二谷英明 岡田眞澄 市村俊幸 菅井きん 西村晃 殿山泰司 小沢昭一
ナレーション:加藤武
1957年/110分/モノクロ  ©日活

<その他の主な映画祭>
・2020年ボローニャ復元映画祭
・第33回ナント三大陸映画祭(2011年)


©日活

【監督プロフィール

山中貞雄(1909-38 享年28歳)
京都市生まれ。学生時代から映画に熱中し、27年、マキノ・プロダクションに入社。28年、嵐寛壽郎プロダクションに移籍すると自作の脚本が初めて映画化される。以来、次々に手掛けた脚本が高く評価される。32年、『磯の源太 抱寝の長脇差』で監督デビュー。その後、日活に移籍。32年から37年の5年間に『丹下左膳余話 百万両の壺』(35年)などを手掛け、快進撃を続けた。37年、『人情紙風船』の封切日に日中戦争に召集され、翌年戦地で死去。戦前作品は多くのフィルムが失われ、現存する作品は日活の2作品と、遺作となった『人情紙風船』(37年)のみ。現在もなお天才と謳われ、早逝が惜しまれている。

田中絹代(1909-77 享年67歳)
山口県生まれ。24年、松竹下加茂撮影所へ入社し、野村芳亭監督の時代劇『元禄女』(24年)で映画デビュー。『マダムと女房』(31年)、『金色夜叉』(32年)、『愛染かつら』(38年~39年)のシリーズなどで国民的スター俳優に。戦後は溝口健二監督の『西鶴一代女』(52年)、成瀬巳喜男監督の『流れる』(56年)、小津安二郎監督の『彼岸花』(58年)に出演し、演技派女優として活躍し、熊井啓監督の『サンダカン八番娼館 望郷』(74年)でベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞。53年、『恋文』で監督デビュー。日本で2人目の女性監督となり、『月は上りぬ』(54年)や『乳房よ永遠なれ』(55年)など全6作品を手掛けた。近年、監督としての才能が世界で再評価されている。

川島雄三(1918-63 享年45歳)
青森県生まれ。明治大学在学中に映画研究会に所属し、映画評論を執筆した。38年、松竹大船撮影所に入社。小津安二郎、木下惠介などの助監督を経て44年、『還って来た男』で監督デビューすると、風刺喜劇で頭角を現す。55年、日活に移籍。『洲崎パラダイス 赤信号』(56年)や『幕末太陽傳』(57年)など映画史に残る傑作を生み、芦川いづみの才能を見出した。松竹、日活、東宝、大映と映画会社を渡り歩き、幅広いジャンルの傑作を残した。

鈴木清順(1923-2017 享年93歳)
東京生まれ。43年に学徒出陣で応召。46年に復員し、48年に松竹大船撮影所の助監督試験に合格。中村登、岩間鶴夫などの助監督を経て、54年に製作を再開した日活に移籍し、野口博志に師事する。56年、『港の乾杯 勝利をわが手に』で監督デビュー。『野獣の青春』(63年)、『刺青一代』(65年)、『東京流れ者』(66年)、『殺しの烙印』(67年)など、独自の作風を確立すると、そのスタイルは<清順美学>と評されるようになった。『ツィゴイネルワイゼン』(80年)で日本アカデミー賞最優秀作品賞、ベルリン国際映画審査員特別賞を受賞し、国内外にその名を轟かせた。

今村昌平(1926-2006 享年79歳)
東京生まれ。51年、早稲田大学を卒業後、松竹大船撮影所に入社し、小津安二郎らの助監督を務める。54年に製作を再開した日活に移籍し、川島雄三のチーフ助監督として『幕末太陽傳』(57年)の脚本を共同執筆する。58年、『「テント劇場」より 盗まれた欲情』で監督デビューし注目を集める。その後、『果しなき欲望』(58年)、『豚と軍艦』(61年)、『にっぽん昆虫記』(63年)、『赤い殺意』(64年)など、次々と高い評価を受ける。68年、初カラー作品となる『神々の深き欲望』を発表。『楢山節考』(83年)、『うなぎ』(97年)でカンヌ国際映画祭パルムドールを二度受賞。75年には三池崇史、本広克行、李相日などを輩出した横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)を開校し、人材育成にも貢献した。

田中登(1937-2006 享年69歳)
長野県生まれ。明治大学在学中、黒澤明監督『用心棒』などの作品にアルバイトとして参加する。61年、助監督として日活に入社。鈴木清順、今村昌平、西河克己、舛田利雄をはじめ多くの監督につき経験を積み、日活がロマンポルノに転向後、72年、『花弁のしずく』で監督デビュー。色彩感覚や風景描写、シュールなモンタージュなど独特のセンスを発揮し高い注目を集め、『㊙女郎責め地獄』(73年)で日本映画監督協会新人奨励賞受賞。その後も『㊙色情めす市場』(74年)、『実録阿部定』(75年)、『人妻集団暴行致死事件』(78年)を始めとする傑作を次々に発表した。また、東映作品『神戸国際ギャング』(75年)やテレビドラマも多く手掛けた。ロマンポルノを象徴する監督のひとり。

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