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Nikkatsu World Selection

第78回・第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門/第74回カンヌ国際映画祭クラシック部門/第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門/第18回MoMA国際映画保存映画祭/第50回ロッテルダム国際映画祭/2013年・2020年ボローニャ復元映画祭/第33回ナント三大陸映画祭 上映作品/第33回・第34回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門

海外の映画祭を賑わせた8作品がデジタル復元で美しく蘇る。
              日活110周年を記念して一挙凱旋上映!

鈴木清順監督 『殺しの烙印』 第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門 最優秀復元映画賞受賞

Nikkatsu

イントロダクション

日活110周年記念特集上映

Nikkatsu World Selection

カンヌ・ヴェネツィア・ベルリンをはじめとする国際映画祭での選出や、
過去10年間に世界50ヵ国以上にて上映され、
特に高い評価を得た名作を上映する
日活110周年記念特集上映『Nikkatsu World Selection』。
時代劇、感動作からロマンポルノまで、
デジタル復元によって美しく蘇った多様な8作品を
没入感の高いスクリーンでぜひご堪能あれーー

作品情報

殺しの烙印

デジタル復元版

第79回ヴェネツィア国際映画祭
クラシック部門 最優秀復元映画賞受賞
アジア映画で初受賞の快挙

第22回釜山国際映画祭

殺しの烙印スチール
鈴木清順
A Film by SEIJUN SUZUKI Branded to Kill

<清順美学>が全編に緊張感と笑いを孕む異色のハードボイルド。
異才・鈴木清順監督の唯一無二の問題作!

プロの殺し屋ランキングNO.3の花田は、組織の幹部を護送する途中でNO.2とNO.4の殺し屋たちに襲撃されながらも任務を終え、殺し屋NO.2へランクを上げる。さらに上を目指す花田だったが、次の仕事で失敗すると、組織は美女・美沙子を差し向ける。惹かれ合う二人―。一方、花田は殺し屋NO.1・大類ともトップの座を賭けて対決することになり…。

クエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュ、デイミアン・チャゼル、ポン・ジュノ、ウォン・カーウァイ…、多くの海外の監督からもリスペクトされる鈴木清順のスタイリッシュな魅力にあふれる異色のアクション映画。

監督:
鈴木清順
出演:
宍戸錠 南原宏治 玉川伊佐男 真理アンヌ 小川万里子 大和屋竺
脚本:
具流八郎
音楽:
山本直純

1967年/モノクロ/91分/シネマスコープ・サイズ

神々の深き欲望

デジタル復元版

第79回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門
第11回北京国際映画祭
第10回釜山国際映画祭

神々の深き欲望スチール
今村昌平
A Film by SHOHEI IMAMURA  Profound Desires of the Gods

カンヌ国際映画祭で二度のパルムドール(最高賞)を受賞した今村昌平監督の初カラー作品にして、長期沖縄ロケを敢行した神話的大作!

文明から隔絶された南の孤島。約20年前に巨岩が突然現れると、島民は、戦地から帰還した根吉の乱行が神の怒りに触れたと考え、島の長は根吉に岩を埋める穴を掘ることを命じる。そこへ、製糖会社の技師・刈谷が開発工事の調査のために東京からやって来る。うだるような暑さの中、信仰深い島民との軋轢により仕事は思うように進まず、根吉の娘・トリ子の激しいアプローチを受け、刈谷は次第にトリ子に取り込まれていく…。

マーティン・スコセッシ、ウェス・アンダーソン、アリ・アスターらが敬愛する今村昌平が、人間の本能、欲望、土俗、因習、タブー、近代文明への警鐘など生涯追い続けたテーマを俳優たちの鬼気迫る演技とともに壮大な風景の中で描き、観客をトランス状態へと導く。

監督:
今村昌平
出演:
三國連太郎 河原崎長一郎 北村和夫 沖山秀子 松井康子
脚本:
今村昌平 長谷部慶次
音楽:
黛敏郎

1968年/カラー/175分/シネマスコープ・サイズ

月は上りぬ

デジタル復元版

第74回カンヌ国際映画祭クラシック部門
第34回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門
第46回香港国際映画祭
2021年リュミエール映画祭

月は上りぬスチール
田中絹代
A Film by KINUYO TANAKA
                    The Moon Has Risen

脚本は巨匠・小津安二郎と斎藤良輔。田中絹代監督の二作目は、三姉妹の繊細な心模様を描いたラブ・コメディ!

東京から疎開した奈良に戦後も住み続ける父親と三姉妹。長女・千鶴は未亡人。三女・節子は、千鶴の亡夫の弟・昌二と交際中。節子は、次女・綾子と昌二の親友・雨宮が、お互いに好意を持っていると気づき、二人の仲を取り持とうと計画を立てるが…。
美しい古都、風通しの良さそうな家で暮らす家族の日常、月明かりのデート。田中絹代監督の的確なショットが生み出す映画のリズムが心地良い。快活だが自分の恋には不器用な節子をのびやかに演じる北原三枝が、天真爛漫な魅力たっぷり。現代のラブ・コメディとして楽しめる佳作。

監督:
田中絹代
出演:
北原三枝 杉葉子 山根寿子 笠智衆 安井昌二 佐野周二
脚本:
斎藤良輔 小津安二郎
美術:
木村威夫
音楽:
斎藤高順

1954年/モノクロ/102分/スタンダード・サイズ

乳房よ永遠なれ

デジタル復元版

第34回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門
第46回香港国際映画祭
第18回MoMA国際映画保存映画祭
2021年リュミエール映画祭

乳房よ永遠なれスチール
田中絹代
A Film by KINUYO TANAKA Forever a Woman

歌人・中城ふみ子の半生を映画化した田中絹代監督の三作目にして代表作。歌を詠み、人を愛した女性の生の煌めきを月丘夢路主演で描いた感動作!

ふみ子は甲斐性なしの夫との離婚を決意し、二児を連れて実家に戻る。以前から参加していた歌会には、親友・きぬ子とその夫・堀がいる。堀はふみ子の短歌の才能を高く評価していたが、急逝してしまう。ひそかに想いを寄せていた堀の死と自らの乳がんの発覚に打ちのめされるふみ子のもとに、短歌の入選の知らせが届き、新聞記者・大月が取材にやってくる…。

田中絹代監督が「女性として感じることを女性として表現したい」と公言していたという渾身の作品。自らの俳優としてのキャリアを活かしたかのような、月丘夢路のクロース・アップの美しさ、透徹した演出は圧巻。田中絹代の強さと大きさすら感じさせ、時代を超えて、すべての観客の心を激しく揺さぶり続けるであろう傑作。

監督:
田中絹代
出演:
月丘夢路 葉山良二 杉葉子 森雅之 川崎弘子 大坂志郎
脚本:
田中澄江
原作:
若月彰 中城ふみ子
音楽:
斎藤高順

1955年/モノクロ/110分/スタンダード・サイズ

㊙色情めす市場

デジタル復元版

第78回ヴェネツィア国際映画祭クラシック部門
第33回ナント三大陸映画祭

㊙色情めす市場スチール
田中登
A Film by NOBORU TANAKA
                  The Oldest Profession

日活ロマンポルノの名匠・田中登監督が、大阪・釜ヶ崎を舞台に、ともに娼婦として生きる母と娘を通して、生と性に斬り込んだ孤高の傑作!

「うちな、なんや、逆らいたいんや…」。19歳のトメは、ドヤ街の近くで客を引くフリーの娼婦。店やヤクザから組織に入るよう言われても、頑として従わないほど強気だが、知的障がいのある弟には限りなく優しい顔を見せる。同じ娼婦である母との諍い、指名手配犯にそっくりの男や駆け落ちしてきたカップルとの出会いと別れ、そして弟の出奔を通して、トメが決意した覚悟とは…。

ドヤ街で隠し撮りしたドキュメンタリーのような生々しい映像、トメを演じる芹明香の圧倒的な存在感、モノクロからカラーへ転調する爆発力が、観る者すべてに鮮烈な印象を焼きつける映画史に残る傑作。

監督:
田中登
出演:
芹明香 花柳幻舟 宮下順子 絵沢萠子 萩原朔美 夢村四郎
脚本:
いど あきお
撮影:
安藤庄平
音楽:
樋口康雄

1974年/パートカラー/83分/シネマスコープ・サイズ/R18+

丹下左膳余話
百万両の壺

デジタル復元・最長版

第33回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門
第50回ロッテルダム国際映画祭
第33回ナント三大陸映画祭

丹下左膳余話 百万両の壺スチール
山中貞雄
A Film by SADAO YAMANAKA Tange Sazen and the Pot Worth a Million Ryo

アメリカ映画に多大な影響を受けた山中貞雄監督のセンスに驚嘆。多幸感あふれる愛すべき日本映画の至宝!

矢場の用心棒・丹下左膳は、女将・お藤の尻に敷かれながらも、のん気な暮らしを立てている。子供好きの左膳は、ひょんなことから育てることになったみなし児のちょび安を大切に可愛がっていた。偶然手に入れた壺にちょび安は金魚を入れていたが、この壺には百万両の謎が隠されていた…。

剣客・丹下左膳のイメージを逆手に取り、緻密なプロットと心憎い小道具の数々で泣き笑いのホームドラマ時代劇を完成させた山中貞雄監督は、製作時、わずか25歳という若さだった。なお、戦後カットされた幻のシーンを加えて復元した。

監督:
山中貞雄
出演:
大河内傳次郎 喜代三 宗春太郎 澤村國太郎 花井蘭子
脚本・構成:
山中貞雄
脚色:
三村伸太郎
音楽:
西梧郎

1935年/モノクロ/92分/スタンダード・サイズ

河内山宗俊

デジタル復元版

第33回東京国際映画祭日本映画クラシックス部門
2013年ボローニャ復元映画祭
第33回ナント三大陸映画祭

河内山宗俊スチール
山中貞雄
A Film by SADAO YAMANAKA Priest of Darkness

可憐な原節子を守る男二人の心意気と色気。緩急自在、巧みな展開とラストの余韻はまさに至高の時代劇!

居酒屋に居候する河内山宗俊と、用心棒の金子市之丞。あてもなく日々を送る彼らの心の慰めは、甘酒屋の可憐な娘・お浪。しかし、不良の弟が不祥事を起こし、お浪は身売りを覚悟する。それを知った河内山と市之丞は、お浪を助けるべく立ち上がるのだが…。

講談「天保六花撰」と歌舞伎「天衣紛上野初花」を翻案した、ユーモアもある人情ドラマでありながら、ラストの立ち廻りのシーンの迫力には息をのむ。「あいつは俺の女房だ」「これで人間になった気がする」「ここらが俺たちの潮時だー」。忘れがたい名台詞を吐く二人の男が最高にクール!

監督:
山中貞雄
出演:
河原崎長十郎 中村翫右衛門 原節子 市川扇升 山岸しづ江 助高屋助蔵 市川莚司(加東大介)
脚本:
三村伸太郎
音楽:
西梧郎

1936年/モノクロ/82分/スタンダード・サイズ

幕末太陽傳

デジタル修復版

第62回ベルリン国際映画祭 フォーラム部門
2020年ボローニャ復元映画祭
第33回ナント三大陸映画祭

幕末太陽傳スチール
川島雄三
A Film by YUZO KAWASHIMA The Sun in the Last Days of the Shogunate

一分の隙も無し!稀代の映画監督・川島雄三が天才・フランキー堺とともに作り上げた奇跡の名作!

東海道品川宿にある遊郭・相模屋を訪れた佐平次は、勘定を心配する仲間をよそに芸者をあげて大騒ぎ。無一文で支払いは出来ず、佐平次は居残りと称して相模屋で働き始める。持ち前の機転を利かせ、女郎や客たちのトラブルを次々と解決し、相模屋の主人にも重宝されるように。また、相模屋で攘夷を画策する高杉晋作らにも一目置かれ、遊郭の人気者となるのだが…。

数々の古典落語をもとに、遊郭の人間模様を生き生きと軽妙に描きながらも、<ここではない他の場所>を求めるニヒルな佐平次をフランキー堺が驚異的な身体能力とスピード感で体現。左幸子、南田洋子、芦川いづみ、石原裕次郎、小林旭のキャスティングも見事にはまり、極上のエンターテインメントとしても楽しめる時代劇。

監督:
川島雄三
出演:
フランキー堺 左幸子 南田洋子 石原裕次郎 小林旭 芦川いづみ
脚本:
田中啓一 川島雄三 今村昌平
音楽:
黛敏郎

1957年/モノクロ/110分/スタンダード・サイズ

コメント

『幕末太陽傳』は大好きなシャシンです。
個人的にはエヴァテレビシリーズ制作後に観たので、感動もひとしおでした。
渇いた人生観と粋な世界観にシビレます。
そしてラストシーン、撮影所の外に走り去って欲しかったと切に願います。

※『幕末太陽傳』デジタル修復版上映時(2011年)コメントより

庵野秀明(監督・プロデューサー)

大胆不敵なエンターテインメント。
スリラー、ノワール、スパイ、エロティシズムー。様々なジャンルが縦横無尽に行き来している。
復元によって素晴らしさが際立った『殺しの烙印』は今こそ再発見されるべき名作だ。

ヴィンセント・ポール=ボンクール(フランス カルロッタフィルムズ代表)

『カンゾー先生』の現場では、右も左もわからないまま馬車馬のように手伝いをさせられました。
今村監督の死後に聞いた話ですが、あの新人をこき使ってくれ、容赦なく。とお達しがあったようで。
デビュー作でとんでもない洗礼を浴びました。でも、その身に染みた体験は映画・演劇・ドラマ作りの原点となりました。

北村有起哉(俳優)

名作が並ぶ中議論は白熱しましたが、最終的には満場一致で今回の決断になりました。
『殺しの烙印』のスタイリッシュさ、そして1ショット1ショットの力強さには、
本作を選ばざるを得ないと思わされる、作品の力と説得性があったのだと思います。
今回の受賞が、本作に新たな命を与えることを祈っています。

ジュリオ・バーゼ(ヴェネツィア国際映画祭・クラシック部門審査員長)

"お米を炊いた匂いフェチの凄腕殺し屋"が主役の映画に
世界中のトップクリエイターが虜になっている!
音楽と完全にシンクロしたリズムとトリップ演出を過剰摂取できる唯一無二の劇薬映画。
『殺しの烙印』を観た後ほかの作品が刺激不足になったらゴメンなさい!!

しんのすけ(映画感想TikToker)

「なんか逆らいたい」と言う『㊙色情めす市場』の主人公には誰にも屈しない気高さがあり、丁寧に撮られた西成の町を生命力のある野良犬みたいに駆けていく。
微かな希望と確かな絶望を感じる作品で、忘れられません。

たなかみさき(イラストレーター)

『乳房よ永遠なれ』
母、妻、友、恋人、そして歌人。
多面的な人物像がプリズムの如く乱反射。
人生の豊かさへ手を伸ばし、最期まで生き切る女の濃密な時間が胸迫る。
映画の黄金時代を特等席から肌で知る絹代の演出は、端正で時に大胆だ。

林瑞絵(映画ジャーナリスト)

何故今まで話題になっていなかったのか。
我々はやっと田中絹代監督の偉大さを発見した。

クリスチャン・ジュンヌ(カンヌ国際映画祭・代表補佐)

ずば抜けてモダン、日本の至宝・山中貞雄
現代的見やすさ、洒落たユーモア、アニメのようなケレン味。
「百萬両の壺」は軽快な人情コメディ時代劇だ。

湯浅政明(アニメ制作者)

映画を超越して神話を紡いできた唯一無二の存在、今村昌平
人間のあらゆる業を炙り出し、我々は何者なのかと問う迫力に慄く。
もう二度と、こんな映画は創造できないと断言できる。

李相日(映画監督)

誰にも予想できない、そんな雪を降らす奇蹟を起こすことができるのは神、と言って悪ければ、
この世界と山中貞雄だけしかいない、ともう何度も確信してきた。

※『山中貞雄日活作品集 DVD-BOX』ブックレット(『河内山宗俊』)より抜粋

青山真治(映画監督)

(敬称略・順不同)