vol.12 デビュー65周年"マイトガイ"小林旭の魅力を紐解く【前編】
2021.03.25(木曜日)

スタッフコラム「フォーカス」へ、ようこそ!当コラムでは、日活作品や当社が関連する事業などに従業員目線で"焦点(フォーカス)を当て" 様々な切り口でその魅力をお伝えします。vol.12は【前後編】と2回にわたり、今年デビュー65周年、われらが "マイトガイ" 小林旭さんにフォーカス。ダイヤモンドラインの一人として日活映画黄金期を築き、支え続けた銀幕の大スターの魅力に迫ります。



日本では1958年~1960年に、映画館の数や入場者数が最高値を記録したそうです。テレビが家にやってきて、各家庭で気軽に映像を楽しめるようになるまで、映画は娯楽の王様でした。

銀幕のスターに影響をうけ、ファッションやヘアスタイルを真似、同じ口調でしゃべる。映画と時代が今よりも密接な関係にあったころ、小林旭さんは第3期日活ニューフェイスに合格。1956年『飢える魂』で本格スクリーンデビューします。

1958年『絶唱』『完全な遊戯』などで注目され、1959年『南国土佐を後にして』が大ヒット。『銀座旋風児(マイトガイ)』シリーズ、『渡り鳥』シリーズがスタートし、石原裕次郎さんと並ぶ人気スターの座を手にいれました。

1960年、第一次日活ダイヤモンドライン(石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎、和田浩治)に抜擢され、幅広い役柄と唯一無二の歌声、そしてスタントを使わず全て自ら行うアクションで観客を魅了し、日本のトップスターとして活躍します。

映画も、自らが歌う主題歌も、大ヒット。この時代 "マイトガイ・アキラ" は、間違いなく多くの若者の憧れであり、特別な存在だったのです。

時は流れ、17歳でスクリーンデビューした旭さんも、2021年で65周年。御年82歳で、昨年YouTube「小林旭 マイトガイチャンネル」を開設されました。あの頃を懐かしみ、旭さんの日活時代の思い出話を楽しまれている当時若者だった方々も、たくさんいらっしゃることと思います。

しかし、私たち日活の後輩は、偉大な先輩をもっと知ってもらいたい。いや、日活スターとしての旭さんをリアルタイムで知らない自分たちが、もっと知りたい。そして、まだ旭さんに出会ってない方々、今の時代の若い人にも、魅力を伝えたい。そんな思いを込めて、社員座談会を行いました。

座談会参加メンバー谷口 公浩
ファン歴45年。2004年、50周年の相談で旭さんご本人から直接電話を頂き、仕事上の初対面が叶う♥
ひらりん
旭さん50周年PJに携わって以来のファン。あれから17年、様々なお手伝いをし、数えきれない思い出が。
金山 功一郎
旭さんへの入り口は、サブカルから。65周年記念DVD商品担当(芦川いづみさん65周年担当でもある)。
山田 実恵子
広報担当。『無頼無法の徒 さぶ』を観る度に大号泣。酔うと「ダイナマイトが百五十屯」を歌う癖あり。
三島 航
2020年の新入社員。大学で映画論を学んだが旭さんは勉強し始めたばかり。今日は先輩方の話が楽しみ。
広報S
日活公式HP全般を担当する広報担当。参加者の誰よりも映画知識に乏しく、不安しかない本日の進行役。

 

それぞれの旭さんとの出会いは

広報S 日活社内では「小林旭さんと言えば、谷口さん」というくらい旭さんファンであることが有名ですが、ファンになったきっかけと、45年もの間、心をとらえ離さないその魅力とは何でしょう?

谷口 私は名古屋出身なのですが、1976年、高校生のときにテレビで『東京の暴れん坊』を観て衝撃を受けたのが、ファン人生のはじまりです。それまでは東映も日活も区別がついておらず、ヤクザスターの一人ぐらいに思っていたのですが、そのイメージが根本から覆りました。前の週に放送された『投げたダイスが明日を呼ぶ』は、少し太りかけていた旭さんが登場したところでチャンネルを替えてしまったのですが(苦笑)、『東京の暴れん坊』を観た瞬間、それは「男が男に惚れる一目惚れ」という感じでした。

広報S それ以降、片っ端から映画を?

谷口 当時、毎週金曜深夜に名古屋テレビで旭さんの映画の連続放映が始まったので、視聴はもちろん、カセットテープにさわりを録音したり、当時はまだビデオが出たばかりでテープが1本3000円もした時代なので全篇録画することはできず、タイトルバックの歌だけ録画したりと、映画、歌、雑誌など旭さんに関するすべてについて片っ端から漁りはじめました。

大学入学と同時に上京すると、当時の東京には浅草新劇場、池袋ピース座、文芸坐など名画座がたくさんあって、毎週どこかで旭さんの映画を上映していたので、必ず足を運びました。撮影所で行われた「日活スタジオ祭り」でも旭さんの映画を観る一方、即売コーナーで台本が10円均一で売られていたので『花と怒涛』『太平洋のかつぎ屋』を購入しました。学生なのでお金がなく、頻繁にレコードを購入したりコンサートに行くことは叶いませんでしたが、大学の4年間、名画座通いで旭さんの映画をたくさんスクリーンで観る機会に恵まれました。


*『東京の暴れん坊』


広報S そして日活に入社してから22年、ファン歴28年目の2004年、芸能生活50周年の準備を控えた旭さんと、ついにお仕事で関わることになるんですね。ファン歴17年のひらりんさんは、このタイミングからのファンだそうですね。

ひらりん はい。初めてお目にかかったのは、横須賀のコンサートホールで、昼の部と夜の部の合間に楽屋にご挨拶にうかがったときです。ドアが開くと、バスローブを羽織り、まるで15ラウンドを戦い切ったボクサーのような旭さんがそこに居ました。こちらをじっと見つめる眼差しがとても綺麗で、印象的でした。この瞬間のことを、私は今でも鮮明に憶えています。生の歌声を聴き、頭の中が真っ白になりました。「旭さん、カッコ良過ぎですよ!!」この日以来、私は熱烈なファンです。初めてお会いしたとき、旭さんは65歳。今年83歳を迎えますが、あの頃と全く変わりません。私は作品からのスタートではなく、生の旭さんにお会いしたことがファンになったきっかけですが、理屈ではなく、私も一目惚れです。

三島 僕は、大学の講義で扱った『続 飢える魂』が小林旭さんとの出会いの作品で、 「後に日活のエースの一人になる」と学びましたが、その後作品を観る機会がありませんでした。今回座談会に備え 『絶唱』『大草原の渡り鳥』『太陽、海を染めるとき』を観たのですが、小林旭さんは『大脱走』のスティーブ・マックイーンみたいな、反骨心があって、いかにも若者という感じがして、先ほどの谷口さんの「男が男に惚れる」という言葉が、まさにピッタリな役者さんだなと、すごく共感します。

谷口 私が思う旭さんの凄いところは、日活作品だけで130本ほど出演されているのですが、どの映画を観ても、どれ一つとして同じ顔、同じヘアスタイルで出てないんです。俳優によっては、いつも同じ印象をうけたり、シリーズの何作目かパッとみてわからないことがあると思うのですが、旭さんにはそれがないんです。ご本人が意識して、そのあたりも考えていたんですよね。『渡り鳥』シリーズは9作品ありますが、同じ滝伸次役でも、一本一本全然違う旭さんに会うことが出来るんです。


*デビュー作『飢える魂』まだ幼さの残る旭さん


はじめは印象に残らない?実はそれこそが...

広報S 金山さんは、旭さん65周年記念DVDの商品担当ですが、元々旭さんの作品をよく観ていたのですか?

金山 学生時代にひたすら映画を観るようになって、その中に小林旭さんの映画はあまり入っていませんでした。はじめに言ってしまうと旭さんの映画って、もしかしたら最初はピンとこないかもしれない。実はそれが旭さんのおそろしいところなんだと、映画を提供する立場になったある時、気づいたんです。

日活のイメージでよく言われるのは、石原裕次郎さんや吉永小百合さん、もっと後になるとロマンポルノですが、1950年代後半から日活がロマンポルノ路線に転換する手前まで、人気だけでなく商業的にもズバ抜けて日活を支え続けていたのは旭さんです。デビュー当初の文芸路線からアクション、コミカル、任侠まで、旭さんは幅広い芝居や本物のアクションができ、さらに歌も歌える。小林旭さん=日活映画と言えるほどに、あらゆることをこなしてしまう。でも、そういう人って、ある限定的な凄さや分かりやすさを持つ人に対して、時代が過ぎると、その存在の大きさゆえに理解されづらくなってしまうんですよね。

学生時代は旭さんの心酔者である小林信彦さんや大瀧詠一さんの話を通して、言ってみれば「サブカルの帝王」として旭さんを認識していました。

その後社会人になり、旭さんの映画を観るようになって、そのポテンシャルの底知れなさに仰天しました。よくアクションの旭さんと言われますが、アクションだけの人でも全くない。鈴木清順監督に熱を上げると、『花と怒涛』や『関東無宿』を観ますよね。でも、当時は旭さんの印象が全くありませんでした。そこが、実は旭さんの凄いところで、小林信彦さん言うところの「無意識過剰」(※)。アクションスターであって、サブカルの王様であって、単純なようでいて実は多彩な引き出し、いつも同じアキラがいるようで同じではない、そのことに気付いたとき、改めて旭さんの魅力、存在の大きさに驚愕しました。ある個性に特化した方が目立つ、そういったサブカルの個性では本来ない大スターなんでしょうけれど、やっぱり「サブカルの王様」なんですよね。

(※ 参考:小林信彦著 「日本の喜劇人」 新潮文庫 1982年 / 小林信彦, 大瀧詠一 責任編集 「小林旭読本」 歌う大スターの伝説 キネマ旬報社 2002年)


*『花と怒涛』


広報S 知れば知るほど、その奥深い魅力に次々と驚かされるとは、ますます旭さんに興味がわいてきましたが、これまで旭さんの作品に出会わずに来た方、今の若い方に、どうしたら作品が届けられますかね?

金山 今回の65周年記念DVDにコメンタリー等は入らないのですが、YouTubeの「マイトガイチャンネル」と連動しまして、ご本人に発売作品について語っていただく予定です。全22作品を時代順に語っていただき、旭さんの歴史が辿れる内容になるかと。旭さんはとにかく作品を体で覚えていらして、とてもお話が面白いので貴重なお話になると思います。何をおっしゃられるか、楽しみなようなコワいような...。

ひらりん 限られた時間の中で今回の発売作品についてすべて語りきれるか、お話好きな方なので時間が足りるか心配です(笑)。

広報S ご本人が作品を語るのが一番説得力ありますよね。こちらは準備でき次第、YouTube「マイトガイチャンネル」にアップされるということですので、楽しみに待ちたいと思います。


さて、座談会の続きは明日3/26(金)公開の【後編】へ。後編も、日活社員独自の目線で、旭さんや作品の魅力に迫ります。


「小林旭 デビュー65周年記念」日活DVDシリーズ 2021年4月~6月<全22作品>リリース!


*全ラインナップは<小林旭デビュー65周年記念特設ページ>をご覧ください。

★★プレゼントキャンペーン開催★★
小林旭さんデビュー65周年を記念して、日活公式サイトではプレゼントキャンペーン実施中です。プレゼント当選は先着順ではございませんので、応募の際にはフォーカスvol.12(本座談会企画)の感想を是非お寄せください。プレゼントページは コチラ

 

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