-今年が日本でのシール印刷100周年とのことですが、その経緯をお教え下さい。
1912年に日本で始めて「シール印刷機を用いたシール印刷」が行われました。
これは1911年イギリス国王ジョージ五世の戴冠式が行われた際、天皇陛下からの贈り物を封鍼するためのシールを宮内庁から依頼されたのがその起源です。当初は通常の凸版印刷機を用いて印刷を試みましたが、なかなかうまくいかず、専用のシール印刷機を輸入するきっかけとなったそうです。
それまでは、全て外国で刷られたシールを使用していました。
当時のシールは、本来の意味である「seal(封印)」の用途のために刷られており、現在の切手のような形のものでした。
シール・ラベル(名札)はそれぞれ用途が異なるのですが、現在ではその区別はかなり曖昧になってきていますね。
-100周年を記念しての行事などがありましたらお教え下さい。
全国のシール・ラベル印刷の会社で構成している業界団体「全日本シール印刷協同組合」では、毎年年次大会を行っているのですが、今年は10月に浅草ビューホテルにて100周年を記念したイベントを行いたいと考えています。
まだ内容については全ては固まってはいませんが、商店街などで似顔絵アートを展開しているカリカチュア・ジャパン株式会社(http://caricature-japan.com/)の代表Kageさんにご登壇いただく講演会を実施することは決まっています。
年次大会は2日間に渡って行いますが、今回は特にお祭り的なイベントにしたいと考えています。
-業界としてこれからの100年に向けてどのようなお考えがありますか。
印刷業界全般にも言えますが、特にシール印刷は職人的な技術を必要としますので、世代交代がなかなか難しい現状があります。
若い世代にその技術をいかに受け継がせるかというのも課題の一つですが、やはり最大の問題は消費者の「無駄」に対する意識変化です。
社会における人・仕事・モノ、それらの意味は21世紀に入り劇的に進化しました。
そして震災以降、世間の人々はモノに対して「なぜ買う必要があるのか?」という意味を求める意識が強くなりました。
その辺を理解し、どうすれば社会に必要とされるか自らの立ち位置を意識する。それを植え付けることが本当の意味での今後の課題です。
100年後、僕の曾孫あたりがまた日活さんからインタビューを受けれるよう、業界の活性化、そして当社の発展を目指し邁進して行く所存でございます。
-デジタル化進行や、個人でコンテンツが作れる状況は、映画業界と少し似ています。
印刷の製版にフィルムを使用する点も、映画と共通していますね。
景気の良し悪しに関わらず、紙・フィルム製品の需要は今後減って行きます、それも信じられないようなスピードで。いままでは色合いや細やかな線などの正確な表現、大量の印刷、素早い印刷といったものこそが、利益に準ずる常識と考えられていましたが、それらはもはやコモデティ化してる状態です。そうなってしまった印刷業界ですが、景気さえ良くなれば人々はまた大量生産を求めるだろうという、いわば「バブル崇拝論」がいまだ根強く残っています。それらを乗り切るために、工場と営業という従来の単純なビジネスモデルではなく、そこに広い意味での印刷に限らないアイデアを生む、安定した機関を加えたワークフローの見直しと、関連業者様やお客様と共にカスタマイズしながら歩んで行く、というソーシャルな意識の芽生えが必要かと思います。
新しいことへのチャレンジ、ということはどこでも誰でも考えてはいるんです。
でも本当の意味での新しいことが出来る人はそうそうはいない、過去の経験を否定するのは中々できないですからね。
それらをふまえ今よりもう一歩踏み込み、バブル依存から抜け出し新たな発想の元、各社ゴール設定をしっかりすべきと考えております。
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-最後に、同じ100周年を迎える弊社へメッセージをお願いいたします。
日活さんと、シールが共に100年...映画少年だった自分にはとても運命的なものを感じます、図々しいですが何か協力しあってコンテンツを作れたら面白いな、と考えてしまいます(笑)。
100周年本当におめでとう御座います、これからもこの世界の人々を楽しいコンテンツで思う存分に楽しませて下さい。
-ありがとうございました。
全日本シール印刷協同組合連合会サイト:http://www.seal.gr.jp/
東京都ラベル印刷協同組合サイト:http://www.label-tokyo.com/
印刷産業青年連絡協議会サイト:http://inseiren.com/
[取材ご協力]
大進ラベル印刷株式会社 :藤井崇徳様 http://www.daishin-l.co.jp/
(東京都ラベル印刷協同組合 青年部 理事)
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(2012年8月21日掲載)
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(標準的なシール印刷機)

(高精細な印刷が可能な印刷機)

(倉庫に詰まれた様々な大きさのロール用紙)
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