高橋英樹の代紋シリーズ第1弾。震災で孤児となった三人兄弟がたどるやくざの道。一度堅気になった末弟が兄たちの無念を晴らすまでを描く仁侠活劇
昭和のはじめ、東京――。大震災で親と長兄を失った鉄次郎、鉄五郎の兄弟は悲惨な少年時代を送ったが、人情肌の庭師・辰吉に助けられ、友人の梧井一家で成長してきた。しかし、その人柄を買われて代貸をつとめる鉄次郎が、物静かで控え目なのに対し、弟の鉄五郎は血の気が多く喧嘩に強い一本気な性格で対照的だった。が、ある日、仲間のハンパ松と宿敵本間組の子分・両刃の政との喧嘩を彼が買ったことから、親分の梧井喜之助の怒りを買い破門されてしまった。鉄五郎はやむなく辰吉の仕事を手伝うことになった。梧井は議員の大森を介して陸軍に物資納入する仕事を請け負っていた。しかし、悪辣な本間は陸軍少佐の武藤に取り入り、大森にもくい込んで仕事を横取りしようと企んでいた。大森の養女雪と豪商岩田の息子との政略結婚も進められていたが、雪は心ひそかに慕っている鉄五郎に相談することが出来なかった。鉄五郎の仲間文治と未亡人ちよとの婚礼の夜、梧井が刺客に襲われ重傷を負った。刺客を追い詰めた鉄次郎。だが、刺客は死んだ筈の長兄鉄太郎だった…。