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園子温監督が本当に撮りたかった珠玉の野心作『ひそひそ星』公開!25年前の園監督が、本作に込めた熱い想いとは?
2016年05月14日(土曜日)

園子温監督最新作『ひそひそ星』が5/14(土)公開初日を迎え、新宿シネマカリテにて園子温監督と主演の神楽坂恵さんによる初日舞台挨拶が行われました。

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常に時代を挑発し、世の常識に疑問符を投げかける園子温監督。構想25年を経て結実したモノクロームのSF作品である最新作『ひそひそ星』は、園監督自ら2013年に設立したシオンプロダクションの第一回製作作品。『地獄でなぜ悪い』(13)や『ラブ&ピース』(15)と同じく、園子温監督が20代の時に書き留めていたオリジナルの物語が、"いま"を映す映画として、満を持して産声を上げました。

― まずは、一言ずつご挨拶をお願いします。

園監督 『ひそひそ星』を監督しました、園子温と申します。今日は、こんなにたくさんの方々に映画館に駆けつけていただいて、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

神楽坂 神楽坂恵です。『ひそひそ星』が公開初日を迎え、こんなに多くの方々に来ていただけて、嬉しく思っております。ありがとうございます。

― 本作は25年の構想期間を経て完成したわけですが、なぜ25年かかったのか。そして、なぜ今この映画を作ることが出来たのかをうかがいたいと思います。

園監督 25年前、この映画で商業映画デビューしようと考えていました。しかし、地味で変わった内容のため映画会社で作ることは難しく、自分の力でお金を集めて自主映画として作ろうと思ったのですが、それもうまくいかずに自宅の机の奥にそっとしまってある状態でした。25年前、当時はそれだけ暇だったということですが(笑)、1年半ほどかけて全シーンの絵コンテをコツコツ描きあげました。ですから構想25年ということではなく、自分の制作会社シオンプロダクションの第1回作品を考えた時、25年前にしまったままになっていたこの作品にしようと思い、当時の絵コンテをもとに今回作りました。

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― 神楽坂さんは園監督作品常連の女優さんでもありますし、私生活でもパートナーでいらっしゃるわけですが、『ひそひそ星』という企画があったことはご存じだったのですか?

神楽坂 そうですね。引っ越すたびに大量の絵コンテが入った段ボールを見ていたので、ずっと知ってました。

園監督 絵コンテの量がハンパないので、それで彼女も薄々気づいていたと言うか(笑)。

神楽坂 すごく大事に大事にしていたので、これはいつか撮るんだろうな・・・と思いながら見ていました。それを実際に作ることになって、しかも洋子さんの役を私が演じるとは思ってなかったので、光栄だなと思ってます。

― 監督のこれまでの作品は、住んでいたアパートが焼けてしまうなど台本が紛失することが多かったそうですが、『ひそひそ星』に関しては残ったのですね?

園監督 コピーをいっぱい取っておいたから良かったなと(笑)。とりあえず台本は3部くらい残ってて、それがなかったら出来なかったでしょうね。本当に「この映画で商業デビューしたかった」という作品なのですが、あれから非常に方向転換が著しく、過激な映画監督ということになっちゃいまして(お客様笑い)。ですから、これを撮ることでゼロからの出発と言いますか、これからの自分の映画の道を改めて考え直したいなという感じです。

― 神楽坂さんはシオンプロダクションのプロデューサーとしても参加されていますが、プロデューサー兼主演という立場はいかがでしたか?

神楽坂 プロデューサーと言っても、そんなに大きなお仕事はしてないのですが・・

園監督 結構やってたよ。

神楽坂 今までは役者として出演する側だったのですが、お金の部分など、いつもは見ていない大変さを知りました。監督の想いも聞いて、話し合いをして、こうやって苦労して作っているんだなと、すごく勉強になりました。

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― 監督は、神楽坂さんのプロデューサー兼主演について、いかがですか?

園監督 撮影中にプロデューサーとして考えてしまうと演技の邪魔になってしまうので、撮影中は完全に女優として作品に集中してもらい、撮影後に会計などやってもううなど、そこは分けてやってもらいました。

― 映画製作を通して奥様がずっと側にいるというのは、監督にとって心強かったのではないでしょうか?

園監督 そうですね。シオンプロダクションの代表でもありますから。私は社員です(笑)。

神楽坂 (笑)。

― この映画は福島でのロケーションが印象深いですが、福島をロケ地に選ばれた理由は?

園監督 先に、福島がありました。『希望の国』という映画を撮影したあと、次はここにある福島の風景に物語を語らせる映画を作ってみたいなと思っていました。無人の街など福島の風景をずっと撮っていて、どうしたらこれが映画になるだろうと思っていたんです。そんな時、シオンプロダクションの最初の映画を考えて『ひそひそ星』の台本を読み返したところ、これが僕のやりたかった福島の映画にピッタリはまったんです。福島の風景に語らせる映画は、この台本で出来ると。なので、先に福島があって、それに『ひそひそ星』の台本がピッタリはまったということです。

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©SION PRODUCTION


― 神楽坂さんは、福島のロケはいかがでしたか?

神楽坂 限られた時間の中で・・

(ここで園監督のケータイが鳴ってしまい、ご夫婦ならではのほのぼのしたやりとりをお客様も温かく見守ります)

神楽坂 えー(苦笑)?

園監督 (ケータイを切って)すみません(照)。

神楽坂 ふたりだからいいけど(笑)。

MC では、続きを(笑)。

園監督 福島の皆さんが非常に協力してくださって、役所の方や仮設住宅の方々も映画に出てくれているんです。そういう人たちも、みんな昔からの知り合いなんです。ね?

神楽坂 はい。『希望の国』の時にお世話になった方々で、まさか一緒に映画に出ることになるとは思わなかったですが、映像として残してもらえて嬉しいと仰っていただけたので、良かったなと思いました。

― 劇中に出てこられる年配の鈴木さんご夫婦は、『希望の国』のモデルになった方々なんですよね?

園監督 そうですね。他にも鈴木さん経由で色々な輪が広がって、紹介してもらった人がいっぱい出てます。

― 四畳半アパートのような宇宙船の中も印象的ですが、あれはセットを組まれたのですか?

園監督 スタジオにセットを組んで、宇宙船をつくりました。映画100年の歴史の中で、絶対に今までになかった宇宙船をつくりたいなと25年前にも思って、25年前の絵コンテにそってやりました。ただ25年前は、ものすごく貧乏だったので、お金がかかりそうだ思って外は描いてなかったんです。でも今回映画をつくるにあたり、日本家屋の宇宙船ということで、外側も徹底して作りました。ああいう宇宙船は、中々ないんじゃないですかね。

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©SION PRODUCTION


― 神楽坂さんはほとんど一人芝居だったと思いますが、セットの中の撮影はいかがでしたか?

神楽坂 ひとりですが、マーM(相棒のコンピュータ"きかい6・7・マーM")くんがいたので、あまりひとりとは思ってなかったですね。それにアンドロイドだなと思うこともなく、宇宙船の中で自然に過ごせました。

― 本作で、ひそひそ声を使われたのは、どういった意図なのですか?

園監督 これは、25年前から全篇ひそひそ声でやりたいなと決まってました。当時すごく野心的で、とにかく今まで映画の中で行われてないことを探しまくって、それを映画の中に入れたい、観たこともない映画を作りたいと思ってました。僕は25年前の園子温のことを"彼"と言うのですが、「観たこともない映画を作りたい!」という彼のすごく熱い想いがあの台本にありました。なので、なるべく彼の意向に基づいて、若干の手直しはありましたが、あまり台本も変えず、彼の描いた絵コンテ通りに、ほぼ忠実に再現しました。

― 神楽坂さんは、全篇ひそひそ声で喋る芝居というのは経験がないと思うのですが?

神楽坂 そうですね。なので、家でひそひそ声で喋る練習をしました。でも、アフレコです。

園監督 後から色々な音を変えてみたいなというのがあったので、全篇わざとアフレコにしました。ひそひそには色々な意味があるのですが、全篇ひそひそにした理由のひとつに、音楽的な映画にしたかったという意味もあります。そしてもうひとつは、「あまり大きな声で物事を言える時代じゃなくなった」という未来があると25年前に思ったわけですが、最近は本当に窮屈な時代になったなと思います。そういう意味で、ひそひそ声でしか喋れないという、いわゆる世相みたいなものもあると思います。

― では、最後にメッセージをお願いします。

園監督 こういった地味な映画でも、ちゃんとお客さんが映画館に来てくれるということを色々なところで驚かせてみたいなと、そういう気持ちもあります。今日は本当に感謝しております。今、ワタリウム美術館で「ひそひそ星」というタイトルで個展もやっています。この本は、『ひそひそ星』という映画が出来るまでのすべてを小説的に書いたものと、映画のスチールや個展の作品とのコラボみたいなものです。全ページカラーで、内容がものすごく濃いですので、ぜひご覧いただけたらと思います。今日は、ありがとうございました。

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神楽坂 『ひそひそ星』は思い入れがあって、すごく時間をかけて作ってきた作品です。

園監督 撮影が終わってからも、1年仕上げに掛けたからね。

神楽坂 そうなんです。始まる前も長かったですが、撮った後も長くて、まだ公開を迎えた実感がないのですが、観に来ていただいて、本当に嬉しいです。ありがとうございました。


映画『ひそひそ星』 新宿シネマカリテほか全国公開!


映画監督・園子温が本当に撮りたかった、むきだしの作家性をぶつけた珠玉の野心作。


大島新監督がメガホンをとったドキュメンタリー『園子温という生きもの』とあわせて、ぜひ劇場でお楽しみください!


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ひそひそ星

★2016/5/14(土)公開★

『ひそひそ星』

距離と時間に対するあこがれは、人間にとって心臓のときめきのようなものだろう。

監督・脚本・プロデュース:園子温

出演:神楽坂恵 遠藤賢司 池田優斗 森康子

©SION PRODUCTION



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