シネマヴェーラ渋谷にて開催中の特集上映 「鈴木清順 再起動!」 の初日11/19(土)に、鈴木清順監督と宍戸錠さんによるトークショーが行われました!
この日はあいにくの雨模様。それにも拘わらず、『すべてが狂ってる』 『野獣の青春』 上映後に行われたトークショーには、会場いっぱい溢れんばかりのファンの方々が集まり、大きな拍手で清順監督と錠さんをお迎えしました。
錠 打ち合わせ・・・してませんっ!してもしょうがないですよね?
清順監督 したって覚えられないもん。(お客様爆笑)
錠 あ、記憶力がない?僕と同じですね!俳優時代の(笑)。
清順監督 あとは何時代があるの?
錠 ヒモ時代。
清順監督 あ~、結構なことだ(笑)!
錠 昨日ある人とたくさん呑んだら、最後に「錠さんカネ払って~。錠さん金持ちじゃない?」って言うの。でも、現金はほとんど持ってないのっ!
清順監督 ないの?
錠 ないっ!でも、映画やっている時もお金なかったですよね?
清順監督 ないねー。
錠 でも、それでイイんです!映画はカネじゃない!
清順監督 じゃ、何ですか?
錠 映画は・・・映画ですよ!鈴木先生とは、私が21歳くらいで映画のことも何も分からない時に出会いましたが、その頃はこの人も大先生じゃなかったんですよ(笑)。先生を日活にお呼びになったのは、西河(克己)さんでしたね?
清順監督 そうね。
錠 鈴木清順さんや、中平康さん、斉藤武市さんを(日活へ)呼んだ彼は、素晴らしい目をしていたということですよね!
清順監督 そうですか!
錠 (客席の方を向いてコソッと小声で)たまにはお世辞もね(笑)。そこから鈴木清順さんだけが異色の作品を作ってね。みんな、『殺しの烙印』 観た?あれでクビになったんだよ!でも、この人はものすごい才能があってね。ものすごくヘンな映画も撮るけど、ものすごく面白い映画も撮る。
ある撮影の時、「今日は屠殺場で牛を殺してもらうから、眉間に完璧にバカーンッと入れろ」 と言われたので、「堪忍して下さい。牛肉はステーキにしないと食えなくなります。殺すのは無理です」とお願いしたことがありました。それが 『肉体の門』 という作品で、英語で言うと 『Gate of Flesh』 と言います。understand?
今年は日活のプレ100年祭で、先日NYのリンカーンセンターへ行って挨拶したんですよ。通訳をつけるから日本語で大丈夫と言われたので 「絶対に英語でやってやる!」 と思ってね。英語なんか喋れないんだけど、そういう時は喋っちゃうんだよね。
舞台に出たら 「ピストル持った格好をして下さい!」 と言わて写真を撮られたんだけど、リンカーンセンターにはポラロイド写真が貼ってあってね。最初に貼ってある人がクリント・イーストウッドで、その次の俳優がちょっと分からなくて、その次の俳優が・・・俺なんだよ!「ヤッター!!」 と思いましたね。日活でも石原裕次郎がいて、小林旭がいて、三番目に宍戸錠がいた。だから、「ああ、俺はいつも3番手なんだなぁ」 と思いながら、それでも3番目に自分が写っている写真を見た時には感謝感激で涙が出るくらい嬉しかったです。その写真が 『Gate of Flesh』、つまり鈴木先生の 『肉体の門』 なんですよ。あれはニューヨークでも、ものすごくウケているんです!
清順監督 錠さん出てた?(お客様大大大爆笑)
錠 出てたよ、端役で(笑)。
清順監督 あれは女の映画だよ。男なんて出てないよ。
錠 でも、あの作品で屠殺場行ったでしょ?
清順監督 だから?
錠 俺、無理だって言って・・・。
清順監督 へ~。
錠 あの作品ね、端役だけどよく覚えているんですよ。「錠さん、1回転して橋の上からカッコよく落ちてくれ」 とこの方は仰るの。セットだったんだけど、下に水も布団も敷かないで!俺だって生身の人間だからさ、「まだ死にたくない。端役だから、主役になってから死ぬからよろしくお願いします」 ってね(笑)。あの作品から出世したんですよ。
清順監督 誰が?錠さん?
錠 鈴木清順さんですよ。
清順監督 そうなの?へ~!
錠 あれで出世して、その後 『殺しの烙印』 という素晴らしい映画を撮ったじゃないですか!
清順監督 あれは誰が主役だったかね?(お客様爆笑)
錠 誰が主役だか分からないから、クビになったんですよ。ね?
清順監督 そうそう。
錠 あれから何年経ちますかね?
清順監督 随分昔だね。昔むかしのそのまた昔だねぇ。
錠 そうですよね。ブランクは8年くらいでしたっけ?
清順監督 ブランクは10年。
錠 10年!あの時先生を支えてた助監督だとかいっぱいいたじゃないですか?僕は、その頃担当していたラジオで貰ったお金を彼らに全部送ってたんですよ。知らないでしょ?
清順監督 知らないね~。肉の一切れも買えなかったよ?!
錠 ステーキも買えるくらい僕はその子たちにあげてたけど、彼らから先生のところへ行ったかどうかは分からない。
清順監督 ああ、そう。
錠 あの子たちは11人か12人くらいいましたよね。彼らが 「鈴木清順をこのまま去らしてはいけない!何とか呼び戻せ!」 と支えたから今日があるんです。よく僕を端役なんて言うねぇ(笑)?
清順監督 へへッ。
錠 ま、端役ですけどね(笑)。
清順監督 いやいや。
錠 いやいやいや、端役でござんすよ。
清順監督 いやいやいや、主役ですよ。
錠 いやいやいやいや、そーじゃございません。(←このやりとりにお客様大爆笑) 映画作っている最中も、こういう話しながらやりましたね(笑)。そして、先生は一本映画をお撮りになる時に、一睡もしてなかったような・・・。あれは何なんですか?
清順監督 そりゃね、映画は寝ては出来ないですよね。
錠 やっぱりそうだったんだ!そうです!映画は、寝ちゃぁいけない!映画は、観る時に寝るもんです(お客様爆笑)。作ってる方が寝ちゃいけません(笑)。ところで、鈴木先生の映画を皆さんたくさんご覧になっていますか?10本以上観た人?
(会場を見渡して)ぜ~んぶじゃない!今、だいぶお世辞言いましたが(笑)。やはり鈴木清順は日本映画の類まれなる鬼才と申しますか、映画作りにかけたら鬼です!撮影の日の朝、作品についてご自身で白墨でお書きになって説明されたこと覚えていますか?
清順監督 それはね、アタマの悪い俳優さんにだけはやったね(お客様大爆笑)。
錠 それは、●●●●●でしょぅ?
清順監督 男だったよ?
錠 男だったら●●●だ!え?違う??ひょっとすると・・・宍戸錠?!鈴木清順先生はね、昔は清太郎って言ってたんですよ。その頃はバ●だったんですよ(笑)。清順に名前を変えてから、スゴイ映画を撮るようになりましたよね。
清順監督 でも考えてみると、錠さんだけだね。色んなアイデアを持ってくるのね。他の俳優さんたちは、そんなことしなかったよ。
錠 あー、そう?
清順監督 だから、生意気なんだよな。コンチキショーなんだよ(笑)。
錠 コンチキショー(笑)?いつもね、ケンカですよ。
清順監督 でも、たいしたアイデア持ってこないんだよな?
錠 そう!どうも、たいしたアイデアじゃない(笑)。でもね、「こういう映画を作ろう」 というのは何となく合致する時があるんですよ。
清順監督 へー。
錠 ま、先生は合わなくても良いんですよ。僕が合致させればいいんだから。
清順監督 我々はさ、俳優さんをいかにして立てようかと考えるんだよね。ところが立て甲斐のない俳優さんが多い。
錠 そう!例えば?
清順監督 立てよう、立てようとしているのに、ぜーんぜんダメなのが多いね!
錠 多いね!だから、僕使って良かったでしょ?
清順監督 はぁ?(お客様大爆笑)
錠 一番核心に触れてるんですよ(笑)。そうやって、いいかげんな俳優とも真剣に向き合って映画作りに全精力を傾けたから・・・今こうなんですよ。こっちはまったく全精力を傾けなかったから(笑)・・・まだ立てます。
清順監督 年が違うじゃない。アンタまだ青二才だろ?(お客様爆笑)
錠 いやいや(笑)。でも、先生がお使いになった良い俳優や助監督はみんな先に逝ってしまいましたね。悪い俳優だけが残っております(笑)。
清順監督 そんなことないですよ。
錠 ところで、日活は来年100年祭ですが、先生がいらした時の日活はどのようなものでしたか?
清順監督 それは錠さんに聞いたらいいじゃない。
錠 俺がいた時は、裕次郎の時代でしょ。
清順監督 私は、裕次郎さんとは仕事していないからね。
錠 裕次郎は、良い監督しか選ばないの(お客様爆笑)。僕ら三流の俳優は、鈴木清順を選んで良い。それ、ありましたよね?
清順監督 あー、あったね。
錠 小林旭もあまりやってないですよね?
清順監督 少ないね。
錠 女優さんは?
清順監督 吉永小百合さんはナシね。
錠 1回も?
清順監督 1回も!
錠 俺なんか2回くらいあるよ!
清順監督 あるの?!ほーっ!ふたりで(主演)やったの?
錠 やりません!
清順監督 恋人ってわけじゃないの?
錠 恋人じゃなくて、喫茶店の女の子とかです・・・。
清順監督 アッハッハッ、何だソレ(笑)?
錠 先生はこれだけたくさんの映画をお撮りになっていますが、ご自分で 「これだけは観てくれ!」 という映画はありますか?
清順監督 全てですよ!
錠 全て!だそうです。(小声で)中には駄作もあるし、(お客様爆笑)本当に初期の頃なんて目も当てられない・・・。
清順監督 何言ってるの?!
錠 何も言ってませんよ。独り言ですから(笑)!今日ご覧頂いた 『野獣の青春』 は・・・まだ観ていらっしゃらないんでしたっけ?
清順監督 観てないよなぁ。錠さんが主役の映画なんて、誰も観やしないよ!
錠 そりゃそうだ(笑)!僕はね、「鈴木清順の映画に1回は出てみろ!」 と、常に言っています。先生は、これからまだ映画をお撮りになるというので、今日こうして対談をしていますが、「あ~、やっぱり清順さんってツイてないな。こんなに雨が降ったらお客様なんか誰も来ねーぜ」 とタクシーの中で言っていたんですよね。
清順監督 そうだねぇ。ありがたいねぇ。
錠 ありがたいですよ。何かやりたいですねぇ。
清順監督 じゃぁ、歌って下さいっ!(お客様爆笑&拍手)英語でいいよ、英語で!!
錠 ちょっと話戻るけど、この間リンカーンセンターへ行った時にね、通じるか通じないか分からないけど、全部英語で挨拶したんだよ。「Hello~! yeah!! I'm happy!!!」 って言ってね。「How do you like seijun suzuki's movie?」 と聞いたら、『肉体の門』 だって。最後にもういっちょう・・・最後とは言いませんが(笑)、もういっちょう映画を作りたいなぁ。ねぇ?
清順監督 でも、さっき着替える錠さんのハダカみたらダメだね。
錠 大丈夫!
清順監督 もう、しょぼくれちゃって、人様に見せられないよ(笑)!
錠 俺が?じゃ~、今からハダカになるよ!悪いけど、僕は77歳にしたら・・・ちょっとココ(腹筋)叩いてみてよ!強いの何のって!!あと昔ほっぺた入れてたけど、あれ取ったらやっぱりまたハンサムだし(笑)!
来年で日活は100年になるので、夜眠れない時には色々書いているんですけどね、4社で始まった会社が日活となってずーっと残り、鈴木先生みたいな鬼才を生んだり、もっとすごい俳優も生んだりしたんですよ。そろそろ時間ということなので、最後に先生からご挨拶を。
清順監督 今日は雨の中お越しくださいまして、どうもありがとうございました。(お客様から大きな拍手)
錠 僕の人気で(皆さんが)来たわけじゃないというのは、よく分かっています(笑)。鈴木清順先生は、もう1本必ず作ると思います。そういう元気を持っていらっしゃる!(お客様拍手)楽しみにしていて下さい。今日はどうもありがとうございました。
★2011年11月19(土) ~ 2011年12月16日(金)
新作の待たれる鈴木清順監督のえりすぐり24本を特集上映!★
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★現在公開中の日活ラインナップもご期待下さい★