9/19(月・祝)までの日程で開催中の第9回したまちコメディ映画祭in台東の《特別招待作品》として、10/29(土)公開のインド映画『PK』のイベント上映が行われました。
「したまちコメディ映画祭in台東」(略称:したコメ)は、2008年に東京都台東区で誕生した日本初の本格コメディ映画祭で、今年開催9回目を迎えました。
日本有数の芸術・文化施設の集積地域「上野」と、日本の喜劇発祥の地である「浅草」を舞台に、台東区在住のクリエイター・いとうせいこうさんが総合プロデューサーをつとめています。
この日のイベントは、上野恩賜公園野外ステージ(不忍池水上音楽堂)で行われました。
今回、本映画祭に《特別招待作品》として迎えられたインド映画『PK』は、2013年に日本でもロングランヒットを記録した映画『きっと、うまくいく』のラージクマール・ヒラニ監督と主演アーミル・カーンの再タッグ最新作で、全世界の興行収入が100億円を突破している大ヒット映画。まるで子供のように見るもの聞くものすべてに興味をもつ主人公PKが、世間の誰もが"常識"として片付けていた問題に純粋な心で疑問を投げかけ、周囲も少しつづ影響されていきます。そんな彼の小さな疑問がやがて大きな社会問題へと発展していき、大騒動を巻き起こします。
実はヒラニ監督の前作『きっと、うまくいく』は、2013年の日本公開の数年前、第3回したコメにおいて『3バカに乾杯』というタイトルで上映されており、その後、第6回したコメで『きっと、うまくいく』とタイトルを改め凱旋上映されました。そんな「したコメとヒラニ監督の密接な関係」についてMCのコトブキツカサさんから説明ののち、オープニングイベントとして野火杏子CNCの皆さんによるインドダンスパフォーマンスが披露されました。
華やかで楽しいダンスパフォーマンスに、客席からは自然と手拍子が沸き起こりました。
続いて、本作の上映を記念して、本映画祭実行委員会会長でもある服部征夫台東区長と、インド大使館ムアンプイ・サイオイ一等書記官よりご挨拶がありました。
服部征夫区長は、建築家ル・コルビュジエの作品群として、今年7月に日本の「国立西洋美術館」、インドの「キャピトール・コンプレックス」が世界文化遺産に登録決定したことを受け「これを機に、インドと台東区、日本との交流をさらに深めて参りたい」とご挨拶。
ムアンプイ・サイオイ一等書記官は、「文化的に似たところもたくさんある両国は、経済や政治面でグローバル・パートナーシップを結ぶなど信頼を育んできました。文化交流において大切なインドのソフトパワーにもまたご注目ください」とご挨拶されました。
関係者ご挨拶のあとは、前作『きっと、うまくいく』からヒラニ監督とアーミル・カーンさんの大ファンという辛酸なめ子さんをゲストにお迎えして、コトブキツカサさんとのトークショーが行われました。面白いことを淡々とお話しされる辛酸なめ子さんの不思議な雰囲気に、会場のお客様からも笑いが起こる楽しいトークショーのはじまりです。
===============
【注意】少し内容に触れる部分があります。既に内容をご存じの方々の間では話題にされてるようで特に記載NG事項ではありませんが、HPに書いている以上のことは作品を観るまでは「知りたくない」という方は、ご注意ください。
===============
コトブキ まだ映画をご覧になってない方が多数いらっしゃると思いますが、辛酸さんはすでにご覧になったのですよね?
辛酸 はい、拝見いたしました。感想としては、このような(内容の)作品を創って、ヒラニ監督は大丈夫なのかな?命を狙われないだろうか・・・と、少し心配になりました。
コトブキ それはどういう意味ですか?命を狙われないかなんて物騒な・・・。
辛酸 宗教というすごく難しいテーマですし、ハリウッドなどでは政府の機関とつながっていて、啓蒙のために映画を創ったりしますよね。なので、もしかしたらボリウッドも、そういう繋がりが出来てきたのかなぁと思うような、そんなメッセージ性の強い作品だと思いました。
コトブキ 宗教観を問う作品ではありますが、様々な宗教が世界中にあるけれども、その真理は?という深いテーマがありつつ、そんなシリアスなテーマを喜劇として昇華しているんですよね。
辛酸 宇宙人がで出てきますしね。登場シーンの宇宙船を雲でフェイクというか隠す方法は、実際のUFOもそうするので、そこにすごくリアリティがありましたね。
コトブキ (笑)
辛酸 宇宙人系の映画は、地球人を"オマエ"と呼んだりして、今まで上から目線の宇宙人が多かった気がするのですが、本作に出てくる宇宙人はピュアで、どちらかというと地球の中ですごく苦労させられるので、地球人としては溜飲がさがったというのがあります。
コトブキ 「宇宙人だと言って、偉そうにしてるんじゃないよ!もっと対等にやろうぜ」と言いたくなる感じの宇宙人が多いですものね(笑)。
辛酸 はい。それからヒロインのジャグー(アヌシュカ・シャルマ)が可愛いですよね。わりと常にアヒル口をしているのですが・・
©RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED
コトブキ 日本人向けに、特になにかしらのアピールをしているわけではないと思いますけれどもね(笑)。
辛酸 新しいヒロイン像なのかもしれないですが、今までのボリウッド映画は女性がすごく肉感的で、ロングヘアというイメージがあったのですが、ジャグーがショートカットだったことが驚きでした。
コトブキ キャリアウーマンというか、仕事をキッチリやられている女性というイメージで、インドの社会性というか、文化面でもだいぶ変わってきているというのが分かりますよね。
辛酸 今年5月にインドに行ったのですが、女性はみんなロングヘアだったんですよ。なのでショートカットにすることは勇気がいることだと思いますし、何か意味があるのかなと思ったのです。
コトブキ 他国についてそんなに詳しいわけではないですが、ショートカットというのがウーマンリブというか、世界的に女性の地位の向上というか、男性と対等なんだよというところを、もしかしたらヒラニ監督は暗示していたのかもしれないですね。
辛酸 そうですよね。あとはアーミル・カーンが前作では40代で大学生役を演じ、今回は50代で宇宙人役をやっているのに違和感がない(お客様爆笑)。体の鍛え方が、すごいと思います。
コトブキ 話は変わりますが、ボリウッド映画はマサラムービーとも言われます。マサラとはいろいろな辛みが入っている混合香辛料ということで、インド映画といえば音楽、歌、泣き、怒りなどたくさんのジャンルが凝縮されていますが、なめ子さんが思うマサラムービーの魅力とは?
辛酸 一本なのに何本分もの情報量というか、充実感が得られるところでしょうか。
コトブキ ヒラニ監督もインタビューで仰ってましたが"フィール・グッド・フィルム"といって、観た後に清々しい気持ちになる映画が、インド映画は非常に多いと思うんですよね。
辛酸 全部詰まってますものね。ところで、この映画は宇宙人が地球に来たという設定なので、実際に宇宙人はどれくらいいるのか調べてみたのですが・・
コトブキ 調べて・・みた?!(お客様爆笑)
辛酸 地球に来てる宇宙人は1,000人くらいいるらしくて、環境破壊をなくす仕事に就いていたり、地球を助けてくれていて、見た目は穏やかな容貌で、行為や気質に無駄がなく、動物や子供に好かれるという特徴があるそうです。(お客様ザワザワ)
コトブキ ・・・何情報ですか(笑)?!
辛酸 金星人の書いた本に載ってたのですが・・
コトブキ 金星人の方が書いた本?!じゃ、間違いないですね!
辛酸 そうですね。ですので、それを踏まえて作品をご覧になると、宇宙人像というのがより明確になるのではないかと思います。
コトブキ 金星人の方が言うには、宇宙人は悪い奴じゃないよ、敵じゃないよということですかね?で、1,000人くらいいると?
辛酸 はい、1,000人くらいいるらしいです。
コトブキ 金星人の方が言うなら間違いないということで、良いでしょうかね(笑)。そういったSF的な要素を踏まえつつ、皆さんの心をグッと掴む作品なのではないかと思います。
辛酸 伏線の張り方も凄いですよね。
コトブキ そうですよね!インド映画はザックリしているイメージがあるかもしれませんが、本作は「あそこと、ここが繋がってるの?!」みたいな伏線の回収がものすごく綿密なんですよ。そこを注目してもらいたいですね。
辛酸 伏線好きの方は、ぜひ。
コトブキ そろそろお時間のようですので、最後に何か言い足りないことなどありますか?
辛酸 ニセ宗教の見分け方みたいなものも、分かってくると思います。
コトブキ まぁ、色々な考えの方がいますからね。って何のフォローさせてくれるんですか(笑)。宗教観という非常に深いテーマがありつつ、笑いの要素がちりばめられていますので、そのあたりを楽しんでいただければと思います。
辛酸 濃密な時間をお楽しみください。
最後は、本編上映前に、ラージクマール・ヒラニ監督が7月に来日された際、いとうせいこうさんがヒラニ監督に行ったインタビュー映像が上映されました。
*インタビュー映像より一部抜粋
-脚本がものすごくキッチリ構成されていますが、どれくらい時間をかけて作るのでしょうか?
ヒラニ監督 『きっと、うまくいく』は第1稿を18日で書きましたが、すべて仕上げるのに1年かかりました。『PK』はさらに難しく、テーマが膨大なので2年かかりました。シリアスなテーマですが、楽しくて豊かな感情があふれる作品にしたかったので、常に書き直し、撮影中も修正を加えていきました。
- どうやって書くのですか?
ヒラニ監督 最初の作品は、ひとりで書きました。誰かと一緒に書こうとすると必ずケンカしてしまうので、ひとりで書こうと思ったのです。2作目の脚本の第1稿を書き上げてプロデューサーに持っていった時、たまたまその部屋にアビジャートさんがいたのです。アビジャートさんとの出会いは素晴らしく、僕が朝起きると原稿が届いていて、向こうが朝になると僕が贈ったものが届いている。そのようなやりとりを一か月続け、本当に気が合うことが分かり、一緒に書くことになりました。私がアメリカに行ったり、お互いに行ったり来たりして、作品を仕上げました。彼に出会えたのは、本当に幸運だったと思います。
- ヒラニ監督の作品は、必ずコメディですよね?
ヒラニ監督 コメディではありますが、いつもシリアスな話題をとりあげ、それを笑いのオブラートに包むようにしています。あまりストレートにすると説教臭くなってしまうので、笑いがいっぱい、情感がいっぱい、コメディは笑いだけではありません。『きっと、うまくいく』も『PK』も、笑いもあれば涙もあって、"フィール・グッド・フィルム=観終わって気持ちが良くなる映画"と呼んでいます。
- 『PK』は、今の世界に本当に重要なメッセージ「ワールドピース」を訴えていると思います。なるべく世界中の人たちに観てほしい映画だと思うのですが、そのあたりのメッセージをお願いします。
ヒラニ監督 人間はひとつの"種"であって、違いはありません。それを分けてしまっているのが神の存在です。それぞれが「自分の神が一番だ」と言うことによって、争いが起きているのです。それぞれの宗教が自分の神を守りたいと思っていますが、人間のようなちっぽけな存在が神を守る必要はないのでは?神自身が我々を守ってくれているのですから、神の名のもとに争うのは間違っている。「我々は全員がひとつである」と私は思っています。このようなシリアスなテーマの映画を、まっさらな状態の人間、神や宗教を知らない人間の目を通して描きたかったのです。親に教えられる前の子供は、まっさらな状態です。宗教の考えを植え付けられていない。そのような目を通して見てみたかったので、神を探し求める宇宙人を出したのです。人間がいかに愚かなことをしているかに気づいてほしくて、ちょっとした皮肉も加えてそういうメッセージを込めました。
- 僕たちのフィルムフェスティバルでは監督の作品をこれからも上映したいと思っていますので、また来てください。
ヒラニ監督 コメディをテーマにした映画祭を開いているのは、本当に嬉しいです。人間にとって笑いは大切です。笑うと、いろいろな問題も解消されてしまいます。このような映画祭に、ぜひ参加させていただきたいです。
©RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED
映画『PK』2016/10/29(土)全国ロードショー!!
『きっと、うまくいく』監督・主演タッグが贈る、全世界大ヒットの超話題作『PK』の公開を楽しみにお待ちください!
映画『PK』関連ニュース
*第2弾ポスター&場面写真一挙解禁
*監督来日舞台挨拶の模様
*公開日決定&予告解禁
*第1弾ポスター&しゃべるポスター映像解禁
*公開決定
★★日活公式TwitterとFacebookもやってます★★
PK
★2016/10/29(土)公開★
『PK』この男に、常識は通じない
監督:ラージクマール・ヒラニ
出演:アーミル・カーン アヌシュカ・シャルマ スシャント・シン・ラージプート サンジャイ・ダット
©RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED