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日活創立100周年記念特別上映作品 『幕末太陽傳 デジタル修復版』 が完成!
2011年09月28日(水曜日)

日活創立100周年記念特別上映作品 『幕末太陽傳 デジタル修復版』 が完成し、9月27日(火)にIMAGICAにて完成披露試写会が行われました。

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『幕末太陽傳』 は、45歳の若さでこの世を去った川島雄三監督の代表作のひとつで、「居残り佐平次」をはじめ、「品川心中」 「三枚起請」 など数々の古典落語を随所に散りばめ、品川の遊郭に “居残り” と称して長居を決め込だ男・佐平次の八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍を描いた1957年製作の大傑作。お調子者の佐平次を演じた主演フランキー堺の他、豪華オールスターキャストが競演を果たした映画界至宝のエンターテインメントです。

そして、来たる2012年に創立100周年を迎える日活が “後の100年まで残したい1本” として、数多くあるライブラリーの中から選んだ作品が本作。完成して54年、日本文化に多大なる影響を及ぼした本作が、創立100周年を記念して 『幕末太陽傳 デジタル修復版』 としてスクリーンに返り咲きます。

修復には撮影当時のスタッフも携わり、映画人の熱い心意気とともに、製作時そのままの姿に生まれ変わりました。50年代のオールスター・キャストが織り成す、笑いあり涙ありの江戸の “粋” なこころに、生きることの喜びを感じ、閉塞した現代日本に、元気と知恵、そして喝を入れてくれる珠玉の1本です。公開をぜひ楽しみにお待ち下さい!

完成披露試写会では、上映に先立ち、関係者よりご挨拶と修復ポイントのプレゼンが行われました。

【日活㈱ 佐藤社長ご挨拶】

まずは、共同事業として取り組んで頂いた東京国立近代美術館フィルムセンター様、監修して頂いた当社OBでもある橋本文雄様、萩原泉様、技術協力を頂いたIMAGICA様、IMAGICAウェスト様、アメリカのAUDIO MECHANICS 様はじめ、ご参加頂いたスタッフの皆様に、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

『幕末太陽傳』 は、2回目の完成披露試写会を迎える大変幸せな作品です。撮影当時、川島雄三監督が39歳、主演のフランキー堺さんが28歳。もの凄いパワーのある大変素晴らしい作品で、うちのめされました。まさしく日活撮影所が最も光り輝いていた頃に撮られ、映画にとっても幸せな時代だったのかもしれません。

先日、スタジオジブリさんの雑誌 「熱風」 で、『コクリコ坂から』 製作時の参考になったということで “日活青春映画” 特集をやって頂きました。その中で、当社OBの植松康郎さんが 「日活映画というのは、まさしく青春映画。なぜなら、青春真っ只中の撮影所で、戦後の青春真っ只中という環境の中で作られた作品だから」 というお話されていました。

それから時代は変わり、社会情勢も変わっていきました。そして来年2012年、当社は創立100周年を迎えます。先輩達の偉業、残して頂いたDNA (=『幕末太陽傳』 でも表現されているような庶民の視点、権力の側に立たない視点) の中の一番大事な部分である 「ベンチャースピリッツ」 を大切にし、チャレンジし続ける気持ちを持って、撮影所をベースにこれからも映画を作り続けて参ります。

10月からは、本作を含む37本の日活作品を世界の皆さんにご覧頂く “世界巡回上映” がいよいよNYリンカーンセンターからスタートします。世界の皆さんに、『幕末太陽傳』 の素晴らしさ、日活作品の素晴らしさを改めてご紹介させて頂きたいと思っております。

創立100周年を前に、本日はこのような機会を作って頂き、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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【東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員・とちぎあきら様ご挨拶】

完成披露試写会を迎え、共同事業パートナーとして大変嬉しく思います。フィルムセンターでは、元素材の一部提供や、復元過程で大きな方向付けをする場合の議論に参加させて頂くなどの役目を担わせて頂きましたが、実際は今回監修して頂いた日本映画の至宝とも言うべきふたりの映画人・橋本文雄さん、萩原泉さん、そして日活の担当者の方々、IMAGICAの技術者の方々が、本当に緻密に粘り強く、そしてある時には大胆な決断をして成し遂げた成果であると思っております。

日活さんから 「『幕末太陽傳』 のデジタル復元を一緒にやりませんか?」 とのご相談を頂いた時、私は即座に 「ぜひ、やりましょう!」 とお答えしました。なぜなら、本作が創立100年を迎える日活の歴史を振り返り、記念する映画の1本として相応しいと思ったからです。そして修復の過程で、その気持ちは “確信” に変わりました。

川島雄三監督は、異才と言いますか、奇才と言いますか、ご本人のキャリアから多少エキセントリックな部分が強調されることが多かった監督だと思います。本作では、登場人物のみんなが生き急ぐように走り回り、叫び、音をたて・・・という騒々しいシーンが頻繁に出て来ます。ただ、復元過程でじっくりそれをみると、カメラはその画面の中に映っている全てのもの、そのディテールを端正にしっかりとおさめ、衒いのない画面作りをされており、物語と画とセリフが見事な掛け合いをみせ、編集の妙というものをじっくりと堪能させてもらえるような作品なのです。

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川島監督は、島津保次郎、清水宏、小津安二郎、そして木下恵介という監督たちの助監督をつとめ、その後、戦後の日本映画を代表する高村倉太郎、岡崎宏三というカメラマンと長く共同で作業されてきた方で、日本映画の良き伝統を伝え、そして新しい伝統を作り上げた方だったのではないでしょうか。

本作を何度も観返すと、あるいは初めて観る若い方も、恐らく “新鮮な映画” という感想をもつと思います。その要因のひとつは、恐らくフランキー堺さんが演じる男の八面六臂(はちめんろっぴ)な活躍ぶりの背後にあるキャラクターや人生観、世界観がハッキリと描き込まれているのではないかと思うからです。それは恐らく、本作が川島監督のある種 “自分語り” という要素もあったと思うんですね。その意味で映画というものは、つまるところ 「人間を語るもの」 という鉄則が本作には活かされていると思います。そのような、ある種の伝統と現代らしさが一緒になっているからこそ、今の日本でも、世界でも、日活100年の歴史を祝福する機会に相応しい1本ではないかと思うのです。

先日初号を観た時、実は 「本当に修復したのだろうか?」 という印象を受けました。フィルムセンターは2003年からIMAGICAさんと一緒にデジタル復元をやらせて頂いており、蓄積された経験というものが、今回の映画を観た時に 「これは、もはや復元・修復されたものではないのではないか?」 と思えるくらい 『幕末太陽傳』 という映画のもっている本来の姿がそこに現れているという印象を持ちました。

皆様にも、復元や修復ということを頭の中からすっかりなくして頂き、川島雄三監督や高村倉太郎カメラマン、フランキー堺さんという偉大な映画人たちが意を凝らして作り上げた本作を堪能して 「おもしろかった!」 という感想を持って頂けると、実は復元に携わった我々にとって、それこそが大きな喜びであり、誇りであると思っております。ぜひ、お楽しみ下さい。

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【IMAGICA 映画・CM営業部 三浦和己様による修復ポイント説明】

本作は、あいにくオリジナルのネガフィルムが現存せず、残されていたのは35ミリの上映用のプリントと、複製の映画フィルムのみでした。6ミリの磁気テープも残されていましたが、これは残念ながら音楽のみという状態。

調査をしたところ、プリントフィルムとネガフィルムにいくつか欠損コマが見受けられ、また様々なところに黒コマが挟まれているという状態でした。

複製の映画フィルムをメインとして、それを全てデジタルデータに変換。欠損コマに関しては、プリントから一部分をデジタル変換して1本化し、デジタル修復。最終的にフィルムに戻して完成という流れです。

作業の内容としては、デジタル復元の場合は全体の画面上のムラをとる。もしくは画面上に現れるゴミを除去していくことがメインとなります。また、黒コマを埋める作業も随所で行います。

このように修復したデータを色調補正。今回は白黒の作品なので、濃淡もしくはコントラストを調整。萩原様に監修して頂き、コンセプトは、複製の映画フィルムに残された当時の階調表現を出来るだけ大切にして、それをいじらない形で修復。これにより、当時のカメラマン、照明の製作意図が非常によく再現できていると思います。

音声に関しては、基本的には同じですが、6ミリの磁気テープに入っていた音楽はデジタル化して、それらを全て1本化し、修復。作業は、アメリカの音声修復専門プロダクション AUDIO MECHANICS社にご協力頂きました。著名な作品の復元実績のある会社で、記憶に新しいところでは、黒澤監督の 『羅生門』 の作業を行ったプロダクションです。

橋本様に監修して頂き、現在ではあまり用いられなくなってしまったサウンドドラックの形状に対応するため、AUDIO MECHANICS社でレーザーリーダーと呼ばれるレーザーの光でサウンドをスキャンしていく方式でデジタルデータに変換。ここでもコンセプトは、当時の音質を極力変化させることなく不具合のみをいかに除去するかという点を一番ポイントにおいて作業を進めました。それらの修復したものを1本化し、最終的にフィルムに戻して完成となります。

修復の結果は、ぜひともご自身の目と耳でご確認頂ければと思います。

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『幕末太陽傳 デジタル修復版』 は、現地時間10月1日(土)にNYリンカーンセンターで海外初お披露目。そして、国内では12月にテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開です。作品がもつ、製作当時の本来の姿を損なうことなく新たに甦った本作の公開まであと3ヶ月。どうぞ、楽しみにお待ち下さい!


銭がなくとも、その身ひとつで時代を駆ける!
江戸時代末期の品川で起こる波瀾万丈、悲喜こもごもの人情物語

『幕末太陽傳 デジタル修復版』

★2011年12月 テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!★

夭折の天才・川島雄三 × オールスター・キャスト
半世紀の時を経ても色褪せない傑作が、最新技術で銀幕に甦る!

監督:川島雄三
出演:フランキー堺 南田洋子 左幸子 石原裕次郎 芦川いづみ

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