イベントレポート

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『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』 × いとうせいこう “本当に面白い” ハリウッド・コメディ教えます!!
2011年08月12日(金曜日)

がんばれ!ハリウッドコメディ!!応援イベントとして、したまちコメディ映画祭 in 台東(略称:したコメ)の総合プロデューサーである、いとうせいこうさんをお迎えし、8月20日(土)公開 『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』 のトークイベントが行われました。

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本作は、『俺たちフィギュアスケーター』 など、アメリカのコメディ界を牽引するウィル・フェレルによる「俺たち」シリーズ最新作。“アザー・ガイズ=その他大勢の刑事” の次世代ヒーローコメディで、あの 『インセプション』 を抜いて初登場1位の大ヒット記録を樹立した大爆笑コメディなのです!

ところが、海外のコメディ映画は日本で公開しにくくなっている現状があり、実は本作も、日本での公開がかなり危ぶまれたのだとか。そこで、コメディ映画を愛するいとうせいこうさんをゲストをお迎えして、“コメディ映画の魅力” と “どのように観ると楽しいか” を存分に語って頂きました。


いとう したまちコメディ映画祭の総合プロデューサーをやっております、いとうです。コメディ映画祭をやっていると、「本当に良い映画が中々浸透しない」 という現実に直面するので、本作を応援したいと思って今日はやってきました。

MC ありがとうございます!いとうさんには一足先に本作をご覧頂きましたが、いかがでしたか?

いとう コメディ映画にこんなにお金が使えるアメリカって、やっぱりスゴイよね。これだけしっかりコメディを撮ることに人が集まり、お金が集まる。ということは、お客さんも集まる。それはやはり、どこか気持ちに余裕があるのかなぁ。今の日本は、お金を出したら感動しなくては気がすまないという、ちょっとそんな傾向がありませんか?

MC お金を払った分、真剣に観るという感じでしょうか。

いとう 真剣に観るし、涙の数がお金の対価だと思っているというか、涙が15粒出たから1,500円OKみたいな感じ(笑)?ところが、だったら笑いでもOK!ひと笑い100円で、15回笑ったらOK!・・・とはならないんだよね。その違いは何なのかな。「元を取りたい」 みたいな感覚かな?でも、コメディ映画って 「おっかし~な~」 「おバカだな~」 と笑いながら楽しんで、帰る頃にはどんな映画だったかすら覚えていない、観終わって何も残っていないくらいの感じでも良いと僕は思うんですよね。ところが感動的な映画は、観終わってすぐ忘れちゃったというわけにはいかないじゃないですか。

MC 「ちゃんと観とけよ」 という話になってしまいますからね。

いとう そう。だからそれだけ真剣に観る。真剣に観る分、元が取れた感覚になっているだけな気がします。アメリカでは、ウィークエンドに映画を観に行く文化がずっと残っています。もちろん映画料金が高くないからですが、映画とごはんとドライブで週末のワンパッケージツアーみたいな感覚なので、ウィークエンドが盛り上がる。だから盛り上がる映画がみたい!ということになるわけです。でも、日本では家でひとりでじっくりDVDをみてしまったりする。もし500円で映画を観られたら、気楽に色々な作品が観られますよね。500円だったら、どんなおバカ映画だって観ちゃう(笑)。だって、500円だったら元とる気にならないでしょ?むしろ、500円で文芸作品を観たくないですよね。文芸作品を観るなら、思う存分映画の文法を超えた作品にしてもらいたいと思うところってあるじゃないですか?だから3,000円くらいでも良いと思うな。

MC たしかに、そうですね(笑)。

いとう それから、仕方ないことかもしれませんが、上映前に 「周りの人に迷惑を掛けるな」 的な注意事項のCMがありますよね。もちろん僕もケータイが鳴ったらイライラするし、重要なところでおしゃべりされたらイヤですが、「みんなで静粛に。他人に迷惑はゼッタイに掛けまい」 という状態で映画がはじまると・・・コメディ映画で笑えないよね(笑)。コメディ映画なんて、実際にそうしろというワケじゃないですが、前の席に足置いちゃうくらいリラックスした気分で、思いっきり楽しんで帰ってもらいたいと思いますよ。

MC そう言われてみると、コメディ映画を観て笑いに来たのに、笑いづらい・・・というところはありますね(笑)。

いとう 笑ったら思わず手を叩いて、“パーン!”って鳴っちゃうじゃない?そしたら、“シー!!”って言われちゃう(笑)。それは悲しいでしょ?たしかに自分も迷惑かけられるのはイヤだけど、ちょっと神経質な社会になっちゃったなと。そこで提案したいのは、今後のコメディ映画は、そのへんに屋台が出ていて、湯気がモアモア、焼いている音がジュージュー(笑)。その代わり、映画本体の音がめちゃくちゃデカイ!好きなもの食べて、“アッハッハ~ッ!”と笑いながら転がったりして。そのくらい余裕のある感じで観られたらいいな。昭和までは、映画館ってそんな感じじゃなかったですか?

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MC それに近いところはありましたよね。禁煙なのにタバコ吸っている人がいたりして(笑)。「一番リラックスした感じで観るのが大事」 ということですよね?

いとう しかし、リラックスした状態ならひとりでDVDでもいいじゃない?という文化になってしまったのだけれど、映画ってそうではないじゃないですか?コメディ映画で言えば、みんなで笑いどころを探していく作業が “映画を観る” という作業だから。コメディは、みんなで教え合うの。「ここ、意外と笑えるらしい」 とか、逆に意図していないところでも笑うとか。監督だって、観た時に初めてその映画の意味を客によって教えられることがある。僕の舞台の体験で言うと、自分達ではここは笑いどころではないというところで、客が笑いをみつける場合があるの。それは、集団がみつけちゃった笑いのタイミングなんですよ。これは笑いだけじゃなく、もちろん泣きもそうだし、拍手もそう。観るたびに、そういうものをお互い伝達し合って作るのが映画で、それをするのに一番良いのがコメディ映画。反応が分かるから。そうじゃなくて、同じものを同じように観ているだけならDVDでいいですよ。

MC そうですよね。ところで、いとうさんが総合プロデューサーをつとめる 【したコメ】 も今年で4回目を迎え、いよいよ来月開催されますね。

いとう 今回もみどころはいっぱいありますが、『PAUL(原題)』 というイギリスのコメディ映画がおもしろい。最後に 「あぁ、自己犠牲って感動的だな」 とか、「友情っていいな」 と素直に思えるという意味では、過去に 『ハングオーバー』、『キック・アス』 というヒット作が 【したコメ】 から出てきましたので。

MC 実は 『ハングオーバー』 と 『キック・アス』 は、【したコメ】 で発掘して、その後無事公開され、大ヒットした映画なんですよ!

いとう それから 『タタール大作戦』 というモンゴル映画も、ちょっとヤバイ(笑)。今まで馬頭琴とラム肉のイメージしかなかった自分が恥ずかしくなるような、超カッコいい、でもアクションがおもしろい映画で、どうやらモンゴルがキテるなと。(したコメに)監督を招聘しようと一生懸命頑張っている真っ最中なのですが、やって来てほしいですよね。

MC モンゴルの笑いを含めて、監督と観客のコミュニケーションとれると良いですよね。

いとう そうなんですよ。モンゴル映画の思いもしなかった笑いどころを日本人観客がつくる。それをモンゴルの監督がみて、「あぁ、ここも笑いどころなんだ!」 と気付いて帰る。それが映画のコミュニケーションじゃないですか。

MC それがまさに映画祭ですよね!

いとう そう!まさに映画祭!で、『タタール大作戦』 はまたちょっと系統が別だけど、【したコメ】 から発掘した 『ハングオーバー』 『キック・アス』 『PAUL(原題)』 のライン上に、『アザーガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』 もあると思っています。こういう作品を観てほしい。観て、笑って、楽しんでほしいと思いますね。

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右の画像©2011リリー・フランキー/「したまちコメディ映画祭in台東」実行委員会

MC 『ハングオーバー』 『キック・アス』 に続く映画としてのお墨付きを頂きました!!

いとう だって面白いもの。バカなことに手間ヒマ掛けて、大きな間口でやっているワケですよ。もちろんアザーガイズというのは脇役という意味だから、脇役たちの映画なんですよ。しかし、ある種地味~な捜査しかやらせてもらえない脇役の人たちがさ、だんだん大事に絡んできて、最後は大主役のアクションになるわけじゃないですか。これはやっぱり王道でしょ? 「そういうの、いいな」 と。自分も人生の脇役だったりして、「アイツの方がいい目みているな」 なんて思いながらだいたいの人は生きているわけですから。そんな脇役を 「イケてるぜ!」 と応援できる。やはりそういうベタな部分も必要だと、僕は思うんですね。コメディ映画が果たす役割みたいなものが。

MC 先ほどから話にあがっている 『ハングオーバー』 や 『キック・アス』 とも共通する点ですが、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』 も、ハチャメチャなくせに、いいんですよね。

いとう そこがひとつの傾向なのかもしれないですが、基本的に伝えたいことは、今世界が悪い方向へ向かっている中で、それを勇気付けるようなハートウォーミングな部分はやはり必要なんだと、世界の喜劇人たちも思っているということなんだと思うんですよね。しかしながら、単にハートウォーミングなことをやるほどコメディアンは真っ直ぐじゃないから、メッセージがハートウォーミングな分だけ、間にあるギャグが過激になっているわけ。それは下ネタだったり、差別だったり、色々なものが出てくるでしょう。そういう両方の部分があるという幅が、コメディ映画の良さだと思うんですよね。シリアスものはギャグなどノイズを入れてしまうと成立しづらいですが、コメディはノイズをいくら入れてもOK。だからふり幅が大きいわけ。

MC コメディは間口が広い分、出せるもの、見せられるものが多くて、色々とやれる可能性が高いということですよね?

いとう そうそう!身なりは本当にワルなんだけど、「話してみたら、すんげーいいヤツだった!」 的なものが、コメディ映画にはあるわけです。

MC 本作が、まさにそれですよね!最後は、本当に大変なことにアメリカがなってしまったことに対してのメッセージがあって、それに対して脇役達が戦うという。

いとう 「そんな巨悪と戦えるわけないじゃないか」 という諦めが、フィクションによって、だんだん 「いや、自分達にも世の中は変えられる!」 的な確信にチラッと変わると。で、最後はコメディ映画なのにこんな終わり方するんだ?というような、非常にメッセージ性の強いエンドロールで終わります。デモクラシーのスピリットみたいなものが最後に伝わってきて、なんだかんだ言ってもアメリカはエライなと思わせる。

MC そのあたりの作りは、本当にウマイですよね。なので、最後まで席を立たずに、エンドロールまで楽しんで観て頂きたいですね。

いとう 本作は、冒頭がド派手ですごいですからね。 「スクリーンで観て良かった!DVDストレートにならないで良かった!他人と観ることが出来て良かった!」 と、思うと思いますよ!

MC では最後に、コメディ映画を劇場で楽しく観るコツを教えてください。

いとう なるべく自由な状態で観ましょう!笑ったら怒られるかな?など、関係ないです。先ほども話した通り、ゆったりとした気持ちで観て、笑って、1つくらい何となく覚えている良いセリフがあったなぁ・・・くらいで帰ってもらえたらと思います。きっと後半になるにつれ、転がって観ちゃうなど自由な連中が出てくるかもしれませんが、劇場スタッフさん、今日はどうかつまみ出すことのないようにお願いします(笑)。コメディは、とにかく自由に観てほしいですね。

8月20日(土)公開 『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』
9月16日(金)~19日(月)開催 「したまちコメディ映画祭 in 台東
ともに、お楽しみ下さい!!

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「俺たち」 シリーズの決定版、ついに日本上陸!!

主役になりたい!でもなりきれない!!
なぜだぁ!

『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』

★2011年8月20日(土)より
ヒューマントラストシネマ渋谷、横浜ブルグほか 全国順次ロードショー!★

観れば、元気と勇気と知恵をもらえる、
空くの金融業界に立ち向かう
新時代のインテリジェンス・アクション・コメディ!!


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©2010 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

監督・脚本 : アダム・マッケイ
出演 : ウィル・フェレル マーク・ウォルバーグ エヴァ・メンデス マイケル・キートン サミュエル・L・ジャクソン ドゥウェイン・ジョンソン
配給 : 日活


★その他の日活ラインナップもご期待下さい★

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