イベントレポート

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『冷たい熱帯魚』 の園子温監督が早稲田映画まつりに登壇!トークショーが行われました!!
2010年12月22日(水曜日)

世界の映画祭で熱狂的支持で迎えられ、『愛のむきだし』を超える最高傑作『冷たい熱帯魚』を創りだした園子温監督が、早大生からの熱烈なオファーを受け、第23回早稲田映画まつり<キネマ旬報 映画・映像業界セミナー>に登壇されました!

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『冷たい熱帯魚』は、実際に起きた幾つかの連続猟奇殺人事件からインスパイアされた人間の狂気と極限の愛を描いた、園子温監督の最新作。

早稲田大学大隈講堂に集まった映画・映像業界を目指す学生の皆さんに向け、本作をプロデュースした日活の千葉善紀プロデューサーとともに、ここでしか聞けない撮影裏話、監督の本音などをおおいに語って頂きました!

― まずは、おふたりの出会いはどのような形で?

千葉P まだ出会って2年も経っていないんです。以前に1度お会いしたことはあったのですが、そこからずっと接点がありませんでした。この映画にはベースとなった事件の本があって、ずっと映画にしたいなと思っていたんです。で、今日会場にも来ている(監督と共同脚本の)高橋ヨシキさんと映画化について話していたところ、“園子温監督がこの話に興味をもっているらしい”ということを聞きつけて、お会いしたのが最初ですね。

MC 監督は、千葉さんにどのような印象をもたれましたか?

園監督 映画人というより、マフィアにいそうな人だなと(笑)。『ゴッドファーザー』で首絞められる人にソックリだし・・。千葉さんというプロデューサーがいることは風の噂では聞いていましたが、フッと沸いたように関係が生まれた感じです。これまでに2作一緒にやって、千葉さんほどプロデューサーとして才能を感じる人はなかなかいないですよ。

MC 絶賛じゃないですか!

千葉P (笑)何かあるんですか?!でも、本作の元となる事件は、犬を扱った事件なのですが、僕と高橋さんが「犬はイヤだな」と思い、「ベースになるお店は熱帯魚屋さんでどうだろう?」「それ、良いアイデアだね!」なんてふたりで盛り上がり、園さんに内緒で勝手に変えちゃったんですよ。で、園さんにある日会った時、「この話、犬じゃなくて熱帯魚に変えたんです」と伝えたところ、「オレは犬だと思ってこの映画をやろうと思ったのに、何で熱帯魚に変えるんだっ!」って、すっごい怒ってかなりテンション下がったんですよね?

園監督 うんうん。その時は辞めようかな~と思ったんだけど、“犬”はポイントじゃないということに、しばらくして気付きました。

千葉P 最初に気付いて下さいよ(笑)!僕らすごい良いアイデアだな~と思っていたんですから!

園監督 そうね。でも、ふて腐れて「金魚になっちゃった~」って、しばらく言ってましたけどね(笑)。

千葉P 「こんな映画撮りたくね~」と、ずっと言ってました(笑)。

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― ちょうど去年の今頃から準備していましたが、脚本作りはうまく進んだのですか?

園監督 千葉さんが立ち上げた【スシタイフーン】というレーベルがすごく自由だったのが、助かったと思うんですよね。スシタイフーンの趣旨として、「日本映画らしくなくて良い」と。「日本でウケなくても良い」というくらいの過激なスタンスなので、有名な役者さんを必ず入れなくてはいけないというようなキャスティングの制約もなく、普段日本映画を作る上で作りづらくしているいくつかの状況が、千葉さんとの映画の中にはなくて、非常に自由な空間でやれたことが、短い期間でも良いものが作れたひとつのキッカケだったと思います。

千葉P 台本作りは結構大変で、園さんも最初ずーっと悩んでいて、思ったような台本が書けなかった期間が結構長かったんですよね。クランクイン近くになっても、満足のいく台本を正直もらえていなかったので、「大丈夫なのかな?」と心配になったこともありました。ところが、ある時急に「出来た!」と言って読まされたのが今回のこの台本だったので、驚きましたね。多くの監督は、完成に至るまでの過程というのがあって、徐々に出来上がっていくものなのですが、園さんの場合その過程がなくて、いきなりポーンとあがってきて、「本当にこの人は凄いな」と思いましたね。

MC それは、監督の中でひらめきがあったのでしょうか?

園監督 諦めたんでしょうね。いい意味で言っているのですが、何かを諦めた時に全部うまくいくというか。「犬はもういいや。魚で頑張ろう。うぅ、魚かぁ・・」という長い期間を経て、「諦めた!魚でいくぞ!」と腹をくくった瞬間にパーンと生まれるみたいな。僕は犬の方がいいのになーと思いながら(笑)。

千葉P ずっと台本が書けなかった時期に「だいたいオレは、こんな映画やるなんて一言も言ってないんだよ!」「アンタがやるって言ったから頼んだんだ!」と、ちょっと喧嘩になりまして(笑)。そんな色んなことを乗り超えた映画でしたし、台本を作るにあたって「もっと書けるんじゃないか?」とクランクイン間際まで、園さんは自分をかなり追い込むんですよね。だからそのストレスが色んなところに出て、スタッフとも大喧嘩になって、「この映画、本当に撮影出来るのかな?」と思った時期もあったのですが、そういうエネルギーも含めて園さんの持っている色んな力がその後のチームワークを固め、短い撮影期間でしたが、本当に良い作品を作ることが出来たのだと思います。僕も色んな監督と仕事をしていますが、こういうエネルギーをぶつけてくる人って本当に中々いないので、そういう意味ではすごく僕も勉強になったし、スタッフもすごく勉強になったと思いますね。


― そのように色々あった中で、キャスティングはすぐに決まりましたか?

園監督 でんでんさんと吹越さんは、僕の映画に2本ほど脇役で出て頂いた時に、「この人たちは次に大きな役でやって頂きたいな」と思っていました。愛子役は中々みつからず、何回もオーディションをやりましたね。昔だったら女優は平気で脱げるはずだったものが、今は脱ぐだけで難色を示してしまい、色んな意味で芝居力も不足してきていて、思うような女優がなかなかみつからない時代になりました。

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MC そんな中で、黒沢あすかさん、神楽坂恵さん、梶原ひかりさんに決めた決定的なものは何かあったのでしょうか?

園監督 まず1つ「女優は脱げなくてはいけない」というのが、僕の中ではあります。日本には脱げない女優さんがたくさんいますが、「何故脱げないのだろう?脱げないなら辞めればいいのにな」という怒りがあるんですよね。それは、カメラマンが「カメラが重い」と言っているようなもので、「だったらカメラマン辞めなよ」と思うのと同じ感じです。そういう意味では、あまり選択肢のない中で探していかなくてはならないので、大変です。これは日本映画界にとって良くないことですよね。

MC 千葉さんは、キャスティングについていかがですか?

千葉P 先ほどもお話が出ましたが、本作は僕が立ち上げた【スシタイフーン】というレーベルの1本なんですね。ホラー映画やアクション映画など、僕が昔Vシネマで作っていたようなものが今アメリカですごくウケているので、「北米に向けて日本映画を作りたい」ということで始めたのがスシタイフーンです。海外に向けて作るので、主役が有名な俳優かどうかは関係なく、役になりきっているかどうかです。日本の映画界で企画を立ち上げる際に求められることは、有名な人がキャスティングされているかどうかです。それは日本の市場を考えれば大事なことですが、そこにいきすぎるとうまくやれない企画もどうしても出てきてしまうので、スシタイフーンを立ち上げたことによって「キャスティングの呪縛から逃れられる映画作り」が出来るのは、本当に良かったと思っています。通常なら、でんでんさんが主役の映画企画を会社に通すのは、中々難しいです(笑)。しかもリアルな殺人鬼の映画ですから、言い方は悪いですが、ある意味会社を騙したようなところがあり、この映画をうちの社長が観た時の第一声が「騙したな!」でしたから(笑)。「でも、面白いから良いよ」と言ってくれました。うちの社長もホント素晴らしい人です。

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― ところで園監督はリハーサルを結構じっくりやりますが、いつもどのくらいの期間リハーサルをやられるのでしょうか?

園監督 舞台は初日までに稽古を終え、幕があがれば全て芝居が出来上がっているように稽古をします。映画も同じで、クランクインまでにセリフはもちろん全部入っていて、芝居もちゃんとできるようになっていなくてはいけないと思っています。特に予算の少ない映画は順撮りすることが難しいので、シーン52から始まることもあります。そのための準備として、シーン52から撮影しても、シーン1からの流れでここの芝居はこうなるというのが稽古を何べんも重ねることによってきちんとできていれば、時間の節約にもなるんですよね。よく現場で「実は、ここはこういう気持ちなんだ」なんて言われたりしますが、そんなことは先に済ませておけば良いんです。クランクイン前まではゆっくり時間を掛けますが、クランクインしたら時間がお金になりますから、それまでに芝居を詰めておけば、かなり省略出来るんですね。そういう意味では、稽古をしっかりやっておくということは、制作費の面でも実に有効なのです。ですから、何故舞台だと稽古をやり、映画だとやらないのか不思議です。

千葉P 園さんのイメージは、芸術家肌で何となく現場で決めていくのかと思われがちで、僕もそう思っていたのですが、全然そうではなくて、リハーサルにリハーサルを重ねてキッチリ手前で作業して、現場はものすごく機械的という言い方は変かもしれませんが、キッチリとカットも押さえるし、そのような映画の作り方は僕もすごく勉強になりました。実は、「この監督は何をやりたいのだろう?」と思ってしまうような、あまり生産的でない現場もあるんですね。ところが園さんの現場はものすごく計算されていて、カット数もすごくて、さらに役者にしっかり演出もつけながら乗せていくという過程もきちんとあるので、映画の撮り方ひとつとっても素晴らしいと思いましたね。

― そんな現場において、これは大変だったとか、一歩間違えたら大変だったというようなエピソードはありますか?

園監督 大変なことばかりです。このような映画が何故成立するかといったら、まず低予算ということもありますが、その低予算の中で、完成させることは誰にでも出来るので、いかに大傑作を作るかということを考えなくてはいけません。今回もう1本千葉さんと作った映画は、1日に27シーンほど撮るんですよ。1日27シーンも撮って、素晴らしい画作りが出来るなど、ありえないじゃないですか?何でもいいから撮っておけという感じになってしまいますよ。でも、それでは良い映画になりません。1日27シーン撮らなくては次に進まないとなれば、考えなくてはいけない。普通に考えていたら、ダメです。そんなことを日々考えるので、全部大変なんですよね。映画というものは、自分の今までの経験を全部覆すようなことを常に考えないと、成功しない分野ですよね。

MC 撮影前に頭で思い描いた「こう撮っていこう」というカットと、実際に現場に入って新たなものを起こして再構築していくということをずっとやっている感じですか?

園監督 僕は、画作りは全部カメラマンに頼んでいるので、自分では画は考えないというか、芝居のことだけに集中するようにしているんです。あまり時間もないのに画作りなどカットまで考えていたらおかしくなってしまうので、自分が何を信じているかというところに最終的にはたどり着くのですが、自分が映画を観た時に「美しい山だな」「美しい雪景色だな」などというように映画の風景には感動していません。では何に感動しているかといったら、芝居に感動しているだけで、たまたま付随するのが雪景色だったりしますが、別にそれは雪景色に感動しているわけではないということに気がついたので、雪景色にこだわりはないですね。だからロケハンで「お金がないからここにして下さい」と言われれば「ああ、そう。それでいいよ」と。別にそれは妥協ではなく、何を一点突破するかということですよ。低予算で傑作をとるには一点突破するしかなくて、だから僕の場合は芝居で感動させることだけに集中することですね。そうすれば、だいたいのことは何とか渡っていけますね。

千葉P ラストシーンなどは、最初の台本と結構変わったりしました。撮っていくうちに園さんの登場人物への思い入れなども変わってくるじゃないですか。すると「やはりラストはこうした方が良いのではないか」と監督が思うと変えてしまいます。でも、たぶん園さんがその時に思ったものが一番素直な感情というか、ベストだと思うので、臨機応変に変えることで、映画も面白い方向に転がっていくのではないかなと思います。

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― そのように撮影が終わり、編集が終わり、完成するわけですが、最初に繋げた時は何分だったのでしょう?今は2時間半ですが。

園監督 3時間以上ありました。でも『愛のむきだし』は6時間でしたから(笑)。あれこそ1日に撮るシーン数は50シーンくらいありましたからね。助監督が香盤表を投げ出して、“その他色々”って書いてました(笑)。で、カチンコに書いてある数字も天文学的な感じになっちゃって、もうワケが分からなくて大変でした。というのも素材が多いのです。6時間とか3時間というのは、余計なものをいっぱい撮ったからではなく、実はハリウッドでは当たり前のことですが、あらゆる角度から撮っています。1シーン1カットだけということは、僕の映画の場合は、ないです。「この画を撮っておけば良かった」ということがないように、あらゆる方角から編集で使えそうなものを全て撮っておくので、最初はだいぶ長めになりますが、実はすごくシェイプされてあっという間に1時間くらいは削れてしまいます。後日編集室で「あっちの画がいい」「lこっちの画がいい」と思えば思うだけの素材が撮ってありますから。

千葉P そう!全部撮ってあるんですよ。日本映画の欠点は、カットを圧倒的に撮っていないためやり繰りのきかない映画が多く、たるい感じの画が続くことがありますが、あれは素材がないからなんです。その点、園さんは全部撮るから、そこが凄いですよね。映画を観て頂ければ分かりますが、園さんの映画は全部アクション繋ぎで、登場人物のアクションで繋いでいるから、長くても全然飽きない感じでみられるんですよ。

園監督 現場で芸術性を重んじるのは良くないと思うんですよね。1カットしか撮らないのに迷いがない!みたいなね(笑)。かっこよさげですが、あとで困るんですから。ある監督が後で素材がなくて困っているのをみましたが、それは現場でカッコつけすぎたんですよね。もっと余裕をもって、「撮っておこうか」とやっておけばよかったのに・・と思ってしまいます。あらゆる角度から撮って後で考えるというのは、アメリカでは当たり前の話です。例えば、タランティーノという芸術的な方である監督でも『キル・ビル』で栗山千明さんが廊下を歩いてくるシーンは、2日間かけて色んな角度から撮影したんですよ。日本映画にはそういうところが足りないですよね。

千葉P 園監督は、短い撮影期間の中で全部撮るのですから、本当にすごいと思いますよ。中々真似の出来ないことだと思います。

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― 出来上がりをご自身で観た時は、いかがでしたか??

園監督 毎回思いますが、そんなに良いものを作った気が常にしないというか、作れたかどうか分からないのです。だから人に聞いて、「良い」と言ってくれる人が多ければ、良い映画なんだろうなという感じで、自分では中々判断しづらいです。もちろん編集を重ねていく段階で、より良いものにしようと思いますが、より良いものになったか自分では分からない部分もありますね。

千葉P 元々自分がこれをやりたいと思ったキッカケは、韓国映画の『チェイサー』『メモリー・オブ・マーダー』『殺人の追憶』というような映画を観て、凄いなと思ったからです。僕が知る限り、『シュリ』以前は「これって映画?」という感じのものしかなかったのに、あっという間に日本映画は追い抜かれ、あんなにすごい映画がボンボン日本に入ってきたことが本当にくやしくて、日本でもやらないといけないよなというのがどこかにありました。園さんとこれをやって、完成したのをみた時に、これで韓国の人をギャフンと言わせられるのではないかなと思いましたし、園さんと思い切りこういう作品をやれたのはすごく良かったなと思いました。

MC 僕もラッシュでみせてもらった時、観終わってしばらくどうしていいのか分からなかったです。とにかく凄いの一言。これはみんなにみせたい!と。

千葉P 本当に、今の日本映画の中では生まれないような映画が出来ちゃったなという気はしますよね。

MC だからこそ、業界中が騒然としているわけですよね。こんなもの作れたんだ?!と。

千葉P ありがたいことです。

― さて、本作は日本での公開に先駆けて海外映画祭に出品していますが、海外の反応はいかがですか?

園監督 まぁ、良かったと思いますが、ヴェネチア映画祭をやっているところは中心地から30分ほど離れていて、思ったより人もいなく意外と寂しい感じのところだと思いました。映画祭自体は権威がある素晴らしい映画祭ですが。

千葉P ヴェネチアに行くって、本当にすごいことなんですよ。お客様の反応も本当に素晴らしくて、最後の方は悲鳴があがったり、爆笑したり、本当にストレートに良い反応がもらえて面白かったですね。ただ、海外ではコメディだと言われましたね。

園監督 そう!コメディと言われて、エンタテインメントとしての反応がすごく多かったのが、意外と意外でした。今回は「園子温だいぶマジメに取り組んでいるな」と言われるのかなと思ったら、もっと笑える映画だったみたいな(笑)。なので、ちょっとそこは予測出来なかったですね。

MC それは気持ち良いものですか?

園監督 僕は、真剣にやった上でコメディ映画になったのなら、全然問題ないと思います。例えば、みんなが号泣している泣ける映画になっていたならそれはそれで「そっか、泣ける映画だったんだ」と思いますし、どちらでも良いのです。こういう映画にするという目標を立てるのではなく、偶然にも「すごく笑える映画」になったということは、素晴らしいことですよね。

千葉P マスコミ試写で大爆笑が起きているらしいですね?

MC 笑うところはだいたい海外と同じところで笑っていて、途中からみんなこの映画の見方はこれで良いんだ!みたいなことを思いながらみている感じですね。

園監督 ぜひ笑って消化していく方が良いと思いますね。

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MC では、ここからQ&Aのお時間を設けたいと思います。質問のある方は挙手して下さい。

― 先日試写会で映画を拝見して、でんでんさん、吹越さん、黒沢さんは、特に後半動けないほど凄かったのですが、でんでんさん、黒沢さんを選んだ、それぞれ決め手は何だったのでしょう?

園監督 でんでんさんは1つ前の『ちゃんと伝える』という映画に、ちょい役で出て頂いた時に、“この人次は絶対に悪役で出てもらおう”と思っていたんです。でんでんさんの悪役は絶対においしいぞ。誰もやったことがないので、やるべきだなと思っていたんですよね。黒沢あすかさんはオーディションですが、日本ではキャスティングする際、たった1枚の書面で選んでいくことが多いんです。おかしいでしょ?芝居もみずに、写真が貼ってあって、趣味:バスケットボールみたいなことが書いてあるプロフィールをみて、「んー、どっちがいいかな?」とやります。「そんなので決められるのか?!」と思ってしまいますが、日本映画はオーディションよりもそうやって決めていくことが多いのです。「この人はどういう芝居をするのか?」ということで、5年前のDVDをみて「こういう芝居か」とやっているのをみると、「うそつけ。5年後どうなっているか分からないじゃないか!」と思ってしまいます。今日現在の芝居をオーディションで確認して決めていかないと、間違えちゃいますからね。予算だって損しますから、そういう意味でもきちっとやろうと思い、僕はオーディションをしています。

― 先日インタビューで「今の日本には救いのない作品が少ない」と仰っていましたが、監督にとって日本映画というのは、あまりよろしくない感じなのでしょうか?

園監督 さっき言い忘れましたが、アメリカの『スタートレック』という作品に、スターはひとりも出ていませんよね。それでも大ヒットしました。だからアメリカを見習って、ドラマのストーリー中心主義になれば良いんですよ。ドラマが面白ければ、映画が面白ければ、有名な役者が出ていなくたってヒットするという革命を誰かが起こさないと、日本映画は変わりません。有名な役者さんを起用して、テレビで宣伝をたくさんやれば入るという構図以外のもので、全く有名でない役者ばかりが出て、かつ大ヒットして、そこから役者がブレイクするという構図をどこかで作っていかないと、日本映画は終わってしまうと思います。そういうことを口だけで言ってもダメだなと思いますし、埒が明かないので、スシタイフーンレーベルなり、千葉さんだったり、日活で頑張ってやっていかないといけないでしょうね。

― 先ほど、女優さんが減っているというお話をされましたが、俳優に対して危惧していることや期待していることがあればお聞きしたです。

園監督 男優は、掘り起こされていない宝石が数知れずあると思います。でんでんさんもそうですが、脇を固めている人たちの中に本当にすごい人たちがいるんですよね。だからそういう人たちを、僕はこれからも掘り起こしてデカイ役者にしたいなと思います。女優も同じです。売れっ子になった後に使うというよりは、僕は売れっ子になりそうな子を探してきて育てるのが面白いなと思いますね。

― 先ほど『冷たい熱帯魚』は、監督としてはアートとして作られたとおっしゃっていましたが、その意味でのアートとはどういう意味でしょうか?

園監督 完全にエンタテインメントとして作ったつもりはなかったという意味ですね。逆に言うと、結果的にはエンタテインメントになっているのですが、自分は、もしもこれがエンタテインメントという作品にならなくとも構わないと腹をくくって作ったということです。

― 千葉Pにお尋ねしたいのですが、元々は魚ではなく犬だったと仰っていましたが、何故犬ではいけなかったのでしょうか?

千葉P 実際の事件をテーマにしていますが、僕らは事件のことを描きたいわけではなく、その事件を元に別のストーリーというか、映画として違うドラマを作りたかったので、その事件からちょっと離れたかったんですよね。で、離れるためには事件そのものは別に犬でなく違うものに置き換えても、この映画は成立するという確証が高橋さんとお話をしていく中で得られたことと、あとは映画を作る上で色んなハードルがあって、例えば本当に犬を連れてきて映画を作ったら結構大変ですが、魚だったら喋らないし、熱帯魚屋にいけば魚もいるし、映画をみてもらえれば分かりますが、水槽で熱帯魚が泳ぐと凄くきれいな画がとれるんです。そのようなことを最初にある程度計算して、園さんには申し訳なかったのですが、勝手に設定を変えてしまったというところがあります。

― 先ほど、女優は脱げなくては女優じゃないというお話がありましたが、それは女優さんが脱ぐということが映画に必要だからなのか、それとも脱げるくらいの根性が必要ということなのでしょうか?

園監督 僕は、脱ぐシーンがなくても、いつも「脱げますか?」と聞いて脅すんです。脱ぐ脱がないは大した問題ではなく、そんなことでストップがかかるなら、何故女優をやっているのかな?と思うだけです。脱ぐ、脱がないなどと言っているのは、日本独自の文化で、韓国でもアメリカでも女優さんはサッサと脱いでいますからね。世界的にみると、それくらい小さな話なんです。

― 最後に、最近のおふたりのお気に入りの作品をお聞きしたいのですが。

千葉P 散々日本映画界は・・という話をしておきながら言うのも何ですが、『ちょんまげぷりん』面白かったよ(笑)。飛行機でみて泣いちゃった。

園監督 若いのでは『真利子哲也(まりこ・てつや)』と『サイタマノラッパー』。あとは、まだ観ていないけど、三池さんの『十三人の刺客』は面白いんじゃないですか?

千葉P そう!それがあった!オレなんで『ちょんまげぷりん』って言ったんだろ(笑)。ホントいい映画ですけどね。で、『十三人の刺客』は本当に素晴らしい!あれこそ本当に日本映画の・・・

MC それ最初に言いなさいよ(笑)!では、最後に一言ずつメッセージをお願いします。

千葉P 園さんの周りにはいっぱい学生がいて、自分の家に平気であげちゃったりするくらい若い人と話をするのが園さん自体好きなんでしょうね。僕らもそうですが、やはり若い人に僕らの作った映画をみてもらいたいし、そうでなければ僕らも映画を作っていて意味がないので、ぜひ映画館に足を運んで頂きたいなと思います。よろしくお願いします。

園監督 「こういう映画がヒットする」「日本映画もこうなればいいな」と、今まで口だけで言っていた希望が少しずつ実現していけると思うので、協力の意味も込めて映画を観に来て下されば幸いです。まだこの後も千葉Pとは3本、4本、5本と・・

千葉P そんなにやる??!

園監督 やります!今も、高橋ヨシキと組んでまた書いていますが、とにかく『冷たい熱帯魚』をぜひ観に来て下さい。

と、ここで村田愛子役を演じられた黒沢あすかさんがサプライズ登壇!

トークショーを無事終えた園監督にお疲れ様の花束贈呈・・ということでお越し頂いたのですが、実は園監督と黒沢さんは、それぞれ12月18日、22日が誕生日。ということで、さらにサプライズで熱帯魚の絵入りのバースデーケーキが登場!

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早稲田大学大隈講堂で、早大生に囲まれながらお二人のバースデーをお祝いしました。
園監督、黒沢さん、お誕生日おめでとうございます!


さて、そんな日本映画界を騒然とさせ、世界の注目をあびる鬼才・園子温監督最新作・スシタイフーンレーベル 『冷たい熱帯魚』は、ヴェネチア国際映画祭、トロント映画祭など多くの海外映画祭で上映され、早くもヨーロッパを始め世界10カ国で公開が決定しています!

そして、いよいよ来月1月29日(土)より日本公開となりますが、公開を記念し、1月8日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて、★★園子温監督作品一挙上映【園子温 むきだし特集】が決定★★いたしました~!!

上映期間中にはトークイベントも開催予定。

【園子温 むきだし特集】詳細はコチラ

進化を続ける園子温監督の世界にダイブできる今回の特集上映に、ぜひご注目ください!


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ヴェネチアが沸いた!
園子温、最高傑作にして金字塔的作品誕生!

『冷たい熱帯魚』 [R18+] 

★2011年1月29日(土)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー!★


監 督 : 園子温
脚 本 : 園子温 高橋ヨシキ
出 演 : 吹越満 でんでん 黒沢あすか 神楽坂恵 梶原ひかり 渡辺哲


★その他の日活ラインナップもご期待下さい★

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