イベントレポート

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園子温監督最新作 『冷たい熱帯魚』 が東京フィルメックスで日本初上映されました!
2010年11月27日(土曜日)

ヴェネチア国際映画祭をはじめ、多くの海外映画祭で上映され、世界の注目をあびる園子温監督最新作・スシタイフーンレーベル 『冷たい熱帯魚』 が、11月27日(土) 第11回東京フィルメックスにおいて日本初お披露目となりました。舞台挨拶・ティーチインが行われ、大いに盛り上がった会場の様子をお伝えいたします!

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『冷たい熱帯魚』は、猟奇的な連続殺人事件に否応なしに巻き込まれる熱帯魚店経営者とその家族を描いた、園子温監督の新たな衝撃的最高傑作。

ヴェネチアが沸いた本作の日本初上映となる東京フィルメックスには、園監督ファンが会場を埋め尽くし、そんなファンの皆さんを前に、園子温監督以下、吹越満さん、でんでんさん、黒沢あすかさん、神楽坂恵さん、梶原ひかりさん、渡辺哲さんと主要キャストが勢ぞろいしました。

時間の都合上、舞台挨拶では一言ずつ簡単なご挨拶を頂くに留まりましたが、MCの 「ぜひ観て欲しいところは?」 との質問に、園監督は 「みんな怖い怖いと言いますが、娯楽映画になっていると思います。『愛のむきだし』とは方向性が真逆ですが、
今までで一番素晴らしい出来になったと思いますし、自信を持って良い映画だと言えます」と、お客様の期待感を煽ります。

日本のファンの方はもちろん、海外からのお客様の姿も目立つ中、いよいよジャパンプレミア上映がスタート!この間、場内の反応が壁越しに伝わってくるロビーにて、監督・キャストによる囲み取材が行われました。

【囲み取材】

― ヴェネチア映画祭での観客の反応や印象に残っていることなどは?

吹越 グローバルな映画祭で一般の方に観て頂くのは初めての経験で緊張しました。関係者ではない一般の方が、想像もしていないようなリアクションをとられたことに、驚いたのと同時に嬉しかったです。

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でんでん この映画を観て、外国の女性の方が大きな声を出して笑っているんですよ。なんか民族性を感じましたね。とっても良い反応で嬉しかったです。

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黒沢 お二方が仰っていたように、私の感覚、日本人の感覚と言っていいのか分かりませんが、まさかこんなところで笑うの?というようにポイントポイントで自分たちの感じた感情を出して笑っているところがとても新鮮でしたし、やはり映画って良いものだな、この作品に関わって良かったと思いました。

園監督 日本の反響はまだ分かりませんが、海外での反響は凄まじく良く、向こうの批評や新聞で絶賛して頂いて、非常に嬉しかったです。

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― 園監督はどんな監督でしたか?

吹越 天才的!

でんでん 映画作りを遊びに例えるならば、その中のガキ大将みたいな感じです。ガキ大将にうまいことのせられて遊び、夕方になったら良い気持ちで家路につく・・というそんな感じです。スタートの出し方が非常にうまい監督です。

黒沢 とても映画好きで、モノ作りの才能に溢れています。そして、エロティックに、かわいく、数々の言葉を私に浴びせ、私を酔わせてうまくのせてくれるんです。のせられた私は映画の中で色々なことに挑戦していますが、私にとって今まで歩んできた女優人生の集大成であると感謝しきりです。園監督に出会えて、本当に良かったです。

神楽坂 撮影に入る前の稽古で結構怒られて泣いたのですが、厳しいのも私のためを思ってのことで、すごく人に対して考えて下さる愛情を感じました。

梶原 本当のお父さんみたいにすごく厳しいのですが、愛情をいっぱい注いでくれて、この作品を通してすごく強くなれたなと、監督のお陰と思っています。

渡辺 映画好きの天才ですよね。皆さん言ってましたが、すごく愛がある。

園監督 むずがゆいですよね。でも、この際全部受け入れて 「その通り!」 と思うようにします(笑)。皆さんとは、次もまた一緒にやりたいと思いました。

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― 撮影中の厳しかったこと、辛かったこと、印象的なことは?

吹越 季節が冬だったのと、季節以外でも夜撮影していたのに朝になっていたりと、非常に厳しい現場でした。印象的なのは、後半のシーンを2日目に撮影したのですが、神楽坂さんと夫婦に見えるには? となった時 「とりあえず、キスしてみて」 と言われたり(笑)。色んなことを考えて、準備して、計画通りに進めるというよりは、その場の感じでいきあたりばったりと言ったら変ですが、その時の感じでのせていくんですね。

でんでん 現場が楽しいんです!どんな時間になっても面白いんです!覚えなくてはならないセリフはいっぱいありましたが、それでも面白いんです。真冬で、夜中の12時まわってて、しかも氷点下の寒さの中、雨降らしのシーンがあったんですよ。その時監督が 「冬でナイトの雨降らしはダメだな」 と言ったんですよ。やらせておいてね(笑)。ま、とにかく毎日が楽しいの連続でした。

黒沢 私が苦労したのは、お稽古の段階です。家庭をもちながら、奇抜な台本の愛子として役と向き合っていましたが、お稽古の段階では愛子になれなかったんです。しかし、監督はそれを責めず、丹念に指導して下さり、最後に「本番撮影の時は、大丈夫ですね」 と信じて下さいました。勉強のために貸して下さったDVDも、いつもならそれに縛られて自分がすべきことが出来なくなってしまうのですが、監督が私を信じて下さったので、DVDを観て勉強したことを私の中に取り込み、愛子として現場に行くことが出来ました。このように、クランクイン前に苦労させて頂いたことで、現場ではのびのびとやらせて頂きました。

神楽坂 私は、今までの人生を全否定されるくらいの感じで追い込まれ、撮影の2日前くらいまで辛かったのですが、そうやって追い込まれることで、私は負けん気を出すタイプなんですね。そこをすごく分かって、引き出して下さったので、辛いけど嬉しかったです。ありがとうございます。

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梶原 1日目のリハーサルの時、私全然出来なくて、その日の最後に監督に 「現場に連れていけない」と言われ、すっごく辛くて帰りの電車では朦朧としていましたし、夜お風呂でガン泣きしました。でも、その言葉がなければ私は変わらなかったので、今ではすごく感謝しています!

渡辺 ワンシーンワンカットでほとんどのシーンを撮りましたので、長いシーンが多いんです。僕はそうでもないのですが、でんでんがすごい喋っているのをみながら、プレッシャーでずーっと緊張していました。でも、その緊張がもの凄く楽しかったです。あと、ふだんはキャラクター上ラブシーンをほとんどしたことがないのですが、今回は黒沢さんとキスシーンがあり、撮り終わった後 「哲さん、舌が長い」 とダメが出まして・・。よくみると、ホント長いです(笑)。

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― 最後にみどころを一言ずつお願いします。

吹越 始まってから終わりまで、全部見どころなのですが、想像していない終わりに向かっていくところが全部みたら分かる・・というのが見どころかと。

でんでん ストーリー展開が、こうなるだろうと読めないんです。観ているうちに大きな大きな渦の中に自分が入ってしまっているというのを観終わった後に気付かされるという感じですね。とにかくその渦の中に巻き込まれてもらいたいと思います。

黒沢 生きてるか?たぎってるか?燃えてるか?と呼びかけられているような映画です。

神楽坂 私自身もそうなのですが、一生懸命生きているかを考えさせられる映画です。

梶原 こんな愛もあるんだというのと、今までみたこともない愛が映画にたくさん詰まっていると思います。

渡辺 本当に愛がある。その一言です。あと、観終わった後、自分の今まで生きてきた人生にかなり跳ね返ってくるので、なるべく何回も観て、感じ方を比べてみたいですね。

園監督 昨日、友人が西麻布で真夜中に 「映画で感動したのは初めてだ!」 と叫んで号泣している男性をみかけて、よくよく聞いたら 「『冷たい熱帯魚』を観て人生変わった!」 と言っていた・・と、今さっき電話がありました。そういう映画であって、すごく嬉しいなと思いましたね。

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取材中何度か場内からの笑いが聞こえてきましたが、 『冷たい熱帯魚』 果たして、日本のお客様の反応はいかに?上映後のティーチインには、園子温監督・吹越満さん・でんでんさん・黒沢あすかさんが登壇されました。

【ティーチイン】

― 本作は実際の事件を元に作られたと言われていますが、作ったきっかけは?

園監督 いくつかの日本の犯罪事件で自分が興味をもっていたものを題材にして、そこから物語を作っていったのですが、今の日本映画には、「徹底的に救いのない映画」 というものが少ないので、そのような映画を作っていきたいと思ったのが最初のキッカケです。

― 映画自体も凄いですが、社本役もすごいチャレンジングな役どころだと思います。最初にシナリオを読まれた時どのように思い、そして出演を承諾された経緯は??

吹越 脚本を読んだ時の感想は 「こういう映画、観たいな」 と思いました。で、なおかつ自分が出演出来るということで、とても嬉しかったです。園さんとは本作が3本目ですが、役を受けた経緯は、住まいの近くでたまたまバッタリ園さんと会い、「1月空いてる?」 と聞かれまして。ですから 「あ、また仕事くれるんだ!」 と思って 「空いてますよ~」 と言って脚本をもらったら、この役だったという・・。「大丈夫、空いてますよ~!」 と言ったので、やらざるを得ない状況でしたね(笑)。

― 本作には色んな驚きがありますが、でんでんさんがこのような役をやるとは想像もしておらず、驚きました。この役を演じられたご感想は?

でんでん 園監督の 『ちゃんと伝える』 という作品があるのですが、そこで僕は高校の国語の先生の役を頂いたんです。僕は学校の先生役などあまりやったことがないんですよ。近所の人の良い八百屋のおじさんとか、そんな感じばっかり。で、僕も仕事が欲しいから 「監督、また次撮る時お願いしますよ!」 と言ったんです。ま、3~4シーン出られればいいやという感じに思っていたので、台本を頂いた時に、「あれ?確か村田役だよな??村田にしちゃセリフが多いな。凄いの頂いちゃったな」 という感じでした。実は、僕は極悪非道の悪人をやってみたかったんです。特にイメージをもっていたわけではないですが、とにかく悪人がやりたかった。で、役をもらって、セリフが自分の中に入ってきて喋れるようになってから、だんだんイメージが膨らみました。本当にこういう役を頂いて、感謝しています。
で、僕はね、喋っているうちに自分が何を最後まで喋りたいか途中で忘れちゃうんです。・・・どういう質問でしたっけ?(登壇者・お客様大爆笑)

MC だ、大丈夫です。まさにお応え頂いた感じで大丈夫です(笑)。

― 黒沢さんは 『6月の蛇』 でも凄いと思いましたが、今回それを凌駕する凄さをみせられ、驚きました。園監督とは初めてお仕事されたのでしょうか?

黒沢 ご一緒するのは初めてです。ちょうど去年の今頃愛子のオーディションに参加し、返事待ちをしていました。2日経っても3日経ってもお返事がなく、ダメだったに違いないと思ったのですが、万が一受かってからでは、3人の子供を産んだお腹周りをどうにかするには間に合わない!と、ビリーズ・ブード・キャンプを始めました。夫におなかのズーム写真を一番醜い状態で撮ってもらい 「今こういうおなかです。それでも私を採用して頂けるのであれば頑張ります」 と、写真を園監督に提出したのですが、衣装合わせにはしっかり締めた状態でお会い出来、現場では本当に私をうま~くのせて、愛子に変身させて下さいました。
私には3人の男の子がいまして、毎日彼らと向き合っているのですが、撮影をご一緒すればするほど園監督は本当にとっても可愛らしくて・・ごめんなさい、失礼で(笑)。でも、監督も男の子なんですぅ(笑)。そんな可愛い監督でした。

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― 救いのないものを作りたかったとお話されましたが、上映中何箇所か大きな笑いが起きたんですね。それは脚本を書いている段階から 「ここはウケるぞ」 と意識されたのでしょうか?話の内容から笑いが起こるのってどうなのかな?と思いまして。と言いつつ、面白くて私も笑ってしまったのですが。

園監督 救いがないと言っても 「どれだけ絶望的な状況で、救いのない方角に主人公が転がっていくか」 が、コメディの原点だと思うんですね。これは実際に笑わせようと思ったわけではないのですが、犯罪ファイルを調べると、彼らの発言などに、ついつい笑えてしまう極限状況のおかしさというのがありまして、そういうのを一生懸命に描こうとすると、意図せず笑いが出るんだろうなというのは思っていましたね。でも、どこで笑われるかというのは、考えていません。

― 宗教的な像がたくさん出てきますが、あれは何でしょう?また血のりは何を?

園監督 今回の犯人のバックボーンに対しては 「何かがあるんだろうな」 ということだけを感じさせるものが欲しいと思っていて、感じさせる背景を示すためにああいうものを出しました。血、は、ニセモノも使っていますが、ホンモノも使っています。動物ですが。(動物は)殺していませんからね(笑)。肉屋からもらってきた血です。

― 本当に面白かったです。数年前に愛犬家殺人事件の小説を読み、その時の小説のイメージは表現出来るわけないよなと思いながら観たのですが、実際に読んだ時のイメージがそのまま出てきて、非常に驚きました。ところで、小説とは結末が変わっていますが、何か意図があってのことでしょうか?

園監督 僕もその本は読んでいますが、基本的には3つくらいの犯罪のファイルを参考に作っていて、さらに自分の経験・・僕も詐欺師に大金をとられたことがあって、その時の衝撃的な経験と彼の口の達者なところを思い出しながら、でんでんさんが吹越さんを巻き込んでいくところなどは書いています。よく、事実は小説より・・と言いますが、本当の事件に僕は映画化するほど興味が湧かないんですね。やはりそこに、アクション映画として・・僕の映画、自分ではアクション映画だと思っていますので、アクション映画の機能としてもっと面白いものを加えたいということで、あのようなラストを完全フィクションで作りました。


― 『愛のむきだし』 とは真逆と仰っいましたが、僕はよく似たものを感じました。父親の抑圧と無力な父親。それは『愛のむきだし』にサブテーマ的にありましたが、今回それを前面に出されたのは、どのような動機があったのでしょうか?

監督 最初の台本ではそれほど強調されていなかったんですよね。たぶん、でんでんさんと吹越さんのリハーサルの芝居をみて、徐々に形成されたものもあったと思います。最初はもっと薄かったと思うのですが、2人の芝居をみているうちに、そこが大事な軸になってきたという感があります。最後の2人の戦いに、社本の父、村田の父の両方が見え隠れしているのは、2人の芝居をみているうちにだんだん自分の中で見えてきたものです。黒沢さんが自分の母親に見えたかどうかは定かではないですが、さっき可愛いと言われたので、もしかしたらあすかさんを母親に重ねていたのかしら?こじつけっぽくなりましたが(笑)。でも、確かに興味深い質問だと思います。ただ、それは無意識的に出るもので、あまり意識した覚えはないですね。自分の中で自然に出てしまうものなので。

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出演者の皆さんが口を揃えておっしゃる 「愛」 の形が、衝撃的な映像とともに映し出される本作。チラシやポスターに “用意は、いいか。” と書いてある通り、心の準備をせずに鑑賞すると、ちょっと大変かもしれません。皆さん、心して、楽しみに公開をお待ち下さい!

『冷たい熱帯魚』 [R18+] 

★2011年1月29日(土)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー!★

ヴェネチアが沸いた!
園子温、最高傑作にして金字塔的作品誕生!

監 督 : 園子温
脚 本 : 園子温 高橋ヨシキ
出 演 : 吹越満 でんでん 黒沢あすか 神楽坂恵 梶原ひかり 渡辺哲


★その他の日活ラインナップもご期待下さい★

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