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『幸せはシャンソニア劇場から』 クリストフ・バラティエ監督来日!
2009年07月08日(水曜日)

本年9月公開 『幸せはシャンソニア劇場から』 のクリストフ・バラティエ監督が来日され、7月7日(火)東京日仏学院にて、Q&A付試写会が行われました。

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クリストフ・バラティエ監督といえば、2004年の長編デビュー作 『コーラス』 が、フランスはもとより世界的大ヒットを記録したことが皆さまの記憶にも新しいかと思いますが、そんなバラティエ監督の最新作が 『幸せはシャンソニア劇場から』 。

本作の舞台は、1936年パリ北部、街角のミュージックホール。世界恐慌の波が押し寄せ、経済不況や忍び寄る戦争の影を背景に、それでも力強く生きる親子、恋人、音楽仲間たちの人情味あふれるドラマが華やかな音楽とともにドラマチックに紡がれます。

2008年、フランスで130万人動員の大ヒットを記録した本作について、バラティエ監督に色々とお話し頂きました。

― まずは一言ご挨拶からお願いします。

バラティエ監督 映画は構想から1~2年後に皆さまに届き、このように皆さんとお会い出来るわけですが、ご覧頂いたパリとは随分異なるところからやって参りました。しかし、気持ちは皆さんと大変近いところにあるように感じています。20年前は、ユニバーサルな映画を作るには英語を話さなくてはいけない、それぞれの国の俳優を使わなくてはいけない、などと言われていました。しかし、私は自分らしい特徴のある映画を作った方が、皆さんに気持ちが通じるような気がしていました。この映画はフランスで成功をおさめ、プロモーションのためにブラジルやアフリカにも行き、そして、今東京に来ています。自分が想像した物語を、こうして広く色んな方と分かち合えるのは、とても嬉しいことです。

では質問に答えていきたいと思いますが、細かい箇所の説明になるようなことは避けたいと思います。なぜなら、それは皆さんが “観て分からなかった” ということになりますので(笑)

090707c2.jpg ◆クリストフ・バラティエ監督


― 素晴らしい映画をありがとうございました。何回も泣き、何回も笑いました。ところで、ドゥースは確かに魅力的で劇場を救いますが、一方でギャラピアとの中途半端な関係のせいで不幸な出来事も起きます。しかし、それについて咎められることなくサラッと描いているのはなぜでしょうか?

バラティエ監督 というと、日本の女性にはあいまいな部分は全くない?だとしたら、日本に住みたいですね(笑)。
つまり、人生と同じだと思います。人生にはあいまいな部分がかなりあると思いますし、矛盾した感情もあるのが人生です。不道徳な関係を続ける一方で、ドゥースは “この劇場がうまくいって欲しい” とあまりに強く思うがために、悪魔に手を出してしまうのです。悪魔とのやりとりは、悪魔が勝つのか自分が勝つのか分からない状況にあり、そういうあいまいさは、人生と同じだと思います。

映画の中で、彼女が生むリスクは(劇場を救うという意味では)功を奏するわけですが、私達の心の底には、例え悪い人であっても、人間性が潜んでいるのです。ギャラピアとドゥースの関係は美女と野獣のような関係で、野獣は美女に愛されたいけれども、愛されることが出来ないために気がふれてしまう。そういう魅力的な悪役の中には、人間性というものが見えてくると思います。


― ドゥースを演じたノラ・アルネゼデールという女優さんは日本ではまだ知っている人が少ないと思いますが、どのように彼女を見つけ出したのでしょうか。

バラティエ監督 中国で数週間前にプロモーションをしましたが、日本のようどんどん質問が出てきませんでした。日本の方が表現の自由があるのかもしれませんね(笑)。

さて、ノラという女優さんですが、この映画を成功させられるかどうかのひとつの賭けの部分でした。映画の中では知られていない設定で、日本でも知られていないということですが、フランスでも知られていない女優さんだったんですね。ちょうど彼女がこの映画を通して知られていくのと同じように、この映画の中でも、知られていない女優さんが音楽を通して知られるようになる、という平行した動きをみせたいと思いました。

女優さんには自分で歌を歌ってほしかったので、まずは歌の審査から行いました。それから演技。そして映像です。映った時にどのように顔が映るのか。彼女はどれも役柄にピッタリでした。
とても有名な3人の俳優のところに、有名でないもう1人が入ることで、キャスティングは非常にバランスがとれていたと思います。撮影時は18歳で全く知られていませんでしたが、この映画が撮られてからはスターになり、アメリカからもオファーが来ています。私もとても満足しています。

090707c1.jpg ◆MC八雲ふみねさん(左)と通訳さん


― 夢のある映画をありがとうございました。私はパリに住んでいたことがあるのですが、パリのどこで撮影されたのでしょうか?

バラティエ監督 ワナにはまってしまいました・・・(笑)。今観て頂いたパリは、実は全くパリで撮影されていません。チェコのスタジオで、セットを組んで撮影しました。それを安いからだという人もいますが、それは間違いです。この映画でみられるような庶民的なパリは戦後完全に破壊され、今探してもほとんどないのです。モンマルトルの一部の道以外は、その頃の建物は残っておらず、美術の担当と “これはマズイね” と話していたのですが、かえってラッキーでした。つまり、そういうパリがないなら、“私達の見方を反映させたパリを作ろう” ということになったのです。当時のパリの写真を壁一面に貼り、そして私達がつくり上げたいパリのイメージの作品を撮りました。

地下鉄や一部のシーンはパリでも撮影しましたが、家と劇場の室内は、やはりスタジオで撮りました。パリの広場や外形は、チェコの首都から100キロ程離れたところにある農地に作り上げたものです。そして、屋根からみえるパリの風景はCGで作りました。ですので、どこで撮影したか分からなくてもそれは当然のことで、全部想像上の風景です。
パリの西側の地下鉄のシーンでも、空の部分が空いていたのでエッフェル塔をつけちゃいましたから(笑)、パリに住む人も “映画の中の地理はまったく理解できなかった” と言っていました。

また聞いて頂いたシャンソンも30年代のシャンソンに聞こえますが、実は今の時代に作曲したものです。それから、現実をもとに私的な要素と自分のビジョンをいれるという考えで、地域に名前をつけませんでした。しかし、この映画の中で起こることは、資料を調べた上で現実を反映したものになっています。例えば劇場で煙草を吸う人が当時は非常に多かったので、そのシーンもいれました。
ちなみに、俳優さんたちは一応本物の人間です。CGではありまん(笑)。

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― 1936年頃は庶民の生活は厳しく、あまり劇場に行くお金もなかったのではないかと思うのですが・・。

バラティエ監督 1936年は確かに大恐慌後で、経済的にも厳しい時代でした。しかし、庶民的な地区にもミュージックホールがありました。その地区の貧しさに合わせたような小規模なもので、安いチケットで入ることが出来ました。そういうところに来る人は、パリの中央の大がかりなミュージックホールには行けなかったと思いますが、小さな自分の地区のところには行くことが出来たのです。今では忘れられていますが、当時のミュージックホールというのは人が集まる場所で、週に何回か行く人もいました。だからこそ、毎晩レパートリーを変えていたわけです。

― では、最後に監督から一言お願いします。

バラティエ監督 1930年代のことを語っていますし、労働問題もバックにはありますが、最終的には、この映画は “友情” を語っているものです。この当時をノスタルジックに思っているのですね?とよく言われますが、4年後には大戦が訪れるわけですし、その時代に生きようとは思いません。ただその当時は、連帯意識や仲間意識というものが強くあり、そういう時代を懐かしむという気持ちはあります。今、世界の中で “成功する” と言われる時は、1人の人が個人で成功する時に言われます。しかし、この映画で描かれている当時は、“仲間が一緒に成功をおさめる” ということが実際に行われていた時代で、それも悪くないんじゃないかなと思います。

今日は、本当にありがとうございました。1人の人生にとって、2時間という時間は非常に長い時間です。アリガトウゴザイマス。

090707c5.jpg ◆“写真は1枚300円ね”と笑わせる監督


『幸せはシャンソニア劇場から』

★2009年9月 
シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋、恵比寿ガーデンシネマ ほか
全国ロードショー!★

『コーラス』 製作ジャック・ぺラン&クリストフ・バラティエ監督待望の最新作!

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監督・脚本 : クリストフ・バラティエ
製作 : ジャック・ぺラン、ニコラ・モヴェルネ
音楽 : ラインハルト・ワグナー
キャスト : ジェラール・ジュニョ カド・メラッド クロヴィス・コルニアック ノラ・アルネゼデール
配給 : 日活

★その他の日活ラインナップもご期待下さい★

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