キリコの風景
きりこのふうけい

世紀末の新しい愛のあり方を問うラブ・ストーリー【シアワセなサヨナラ】とは

透明な空気漂う函館の街に、ある日ひとりの不思議な男・村石(杉本哲太)が降り立つ。何台かのタクシーをやり過ごしたあと、西川(勝村政信)のタクシーに吸い寄せられるように乗り込んだ村石は、いきなり「このタクシーを貸し切りにして、マンション探しをしたい」と申し出た。村石の持つ独特な“空気”に戸惑いながらも、友人の不動産屋・海田(利重剛)を紹介する西川。見えない糸に引き寄せられたかのように3人は、この時から摩訶不思議な時間を共有し始めた。
「ここには、基本的に函館のリズムがありますね。もっと、リズムのないところを」という村石の注文に顔を見合わせる二人。ところが訪れる先ごとに、村石は透視力ともいうべき不思議な力を発揮し始める。郵便受けの文字を執拗に見つめた後に訪れた先の住人は、一見普通に暮らしながらも孤独に蝕まれており、村石は部屋を見るだけで彼らの病んだ心とふるまいを見抜いてしまうのだ。
「見つけてもらってよかった」と、感謝して泣き崩れる木崎(木根尚登)らの姿を見た西川と海田は、村石を心から尊敬し始めた。
ジョルジョ・デ・キリコの絵のような函館の街中で、村石は何度も黒い男の影を見る。過去に傷を持つ村石の本当の目的は、愛想をつかして逃けた妻・霧子(小林聡美)を見つけ出して、やり直すことにあったのだ。「俺には霧子が必要なんだ」と心に誓う村石は、ある日見覚えのある霧子の文字を見つけてチャイムを押す。

日本
製作:日活株式会社(協力)日活撮影所
配給:日活
1998
1998/7/25
カラー/105分/ビスタ・サイズ
日活