任侠道を一筋に守りながら博奕渡世をひっそり生きる、いじらしい男の心情と心意気を格調高く謳いあげた娯楽性満点の新任侠活劇。
昭和初期のこと、空ッ風の吹く上州路をサイコロ一つで流れあるく渡世人がいた。その名は島木弥三郎、彼は関東はおろか、関西まで知られたバクチ打ちで、つい先頃、ある賭場で、三輪伊之助を負かしたが、逆恨みから決闘をしかけられ、誤って伊之助は自分を刺し死んでしまった。責任を感じた弥三郎は彼の親分朝倉に詫びを入れ、伊之助の父である代貸の伊作のとりなしで、故人に代わって朝倉の主催する大掛かりな奉納賭博の胴にすわることとなった。ところが、これを知って怒ったのは、かねがね朝倉のシマを奪おうとしていた赤澤一家だった。イカサマはもう弥三郎には通用しない。策を案じた赤澤は幹部の砂田に命じて、今は落ちぶれた老バクチ打ちの鬼頭を連れてきて一騎打ちさせようとした。賭場は手本引きだったが、鬼頭は赤澤にたのまれた“屏風札”というイカサマを、そのかつての誇りからどうしても使えず、完敗してしまった。その夜、鬼頭は自害した。弥三郎は、この渡世の非情さを嘆くと、朝倉の止めるのを振り切って旅に出た。その後、彼を慕っていた伊作の娘由紀江と朝倉の実子庄太郎の婚礼の夜、朝倉が赤澤の刺客占部に刺殺された。そして鬼頭の娘勢津が女郎に売り飛ばされた…。