昭和の初め頃、スリの父親に捨てられ、スリにだけはしたくないという願う母親の手で育てられた天満の虎は、父親と同じような人生を歩み、同じようなスリあがりの渡世人になった。その母親を自分の親分の的屋、大淀になぶり殺しにされた虎は、怒りが爆発して大淀を殺し、父親のいる東京に流れ着いた。東京で大阪からの追手の刺客を斬った虎は、芝徳組の賭場で偶然にも宮島組の仙太を助けたことから、料亭の女将・お駒と知り合った。お駒から宮島組々長、大五郎の素性を聞いた虎は、実父大五郎の良い評判を知り、喜びを隠しきれない反面、自分を捨てた父親を憎んでいた。大五郎はスリの大親分であったが、すっかり足を洗って、的屋・観音寺親分の身内になり、露天商売のイロハからたたき上げ、的屋・宮島組を名乗っていた。