昭和初期、渡世の義理から飯沼の親分を斬り、末を誓い合った女郎のおしのとも別れた一匹やくざの正次郎は、ふとしたことから、タコフリの政吉の話に乗ってある山の中の石切場に連れて来られた。それは少しまとまった支度金をおしのへ身請けの資金として送ることができたからで、仕事を済ませ、ほとぼりがさめたら彼女の許へ帰ってゆくつもりだった。だが、送り込まれた飯場は、正に地獄の一丁目だった。人夫たちはろくな食事も与えられずコキ使われ、働いても働いても前借金が残る仕組みになっていた。それはここを仕切っている松田一家が監督官の俵少佐に巧妙に取り入って甘い汁を吸っていたからだ。正次郎は次第にそのカラクリが判ってくると、矢も楯もたまらず反抗し暴れた。が、皮肉なことに、その凄腕が松田の目に止まって、彼は町はずれの居酒屋に巣食う用心棒グループの中に入れられてしまった…。