明治の初期―。都会では文明開化というのに、ここ僻地の半農半漁の八代村には昔ながらの性神崇拝の風習が根強くはびこっていた。ある日、この村にやくざな若者・武次郎が流れ込んできた。彼はこの村であいまい宿を営む刑務所時代の仲間・伝兵衛と結託して、村人の無知につけこみ新興宗教で一儲けしようとたくらんだ。村の金精堂の堂守り・宇吉を自殺と見せかけて殺し、お堂を乗っ取った二人は「立川教本部」の看板を掲げて布教に乗り出した。この立川教は、その昔、真言立川流という男女交合を礼賛する邪教が栄えたことがあるので、その宗教を真似たのである。肉交礼賛、それに男前の教祖様というので、法悦の祈祷を求めて村の女たちがわんさと押しかけて来た。信者たちの中に、武次郎がこの村へ来る途中、海辺で犯した蛇取りの娘・おきんが紛れ込んでいた。彼女は妹のおぎんと共に暮らしていたが、土地の男たちからは魔性の女といわれて誰にも相手にされなかった。それだけに武次郎が忘れられなくなったのだ。