美しい裏日本福井を背景に描く、珠玉の母と娘の人生ドラマ。
恭子と母親の由紀は、由紀の夫の父で銀行の頭取である坂井謙造との確執により、東京に逃れ自活していた。そして、息子の恭一が戦争で死んでから謙造の怒りもとけて郷里の福井へ帰ってきたのだったが、それでも由紀は友人に頼って市内で洋裁店を営み、恭子はかねて念願の看護婦として県立病院で働くことになる。ある日、由紀は広田洋平という男の訪問を受ける。彼はある意味では命の恩人であったが、いまは破産寸前の織物工場をやっており、謙造に何とか融資の口をきいて欲しい気持ちらしかった。由紀はそれを察したが、いつしか淡い慕情がこみあげる。一方で恭子の病院生活は楽しく、今日も若い医師沢村耕次とともに無医村をまわり、彼女も次第に彼の若い情熱にひきづられていくのだった。