太平商事に勤務する秋津圭太は、田舎っぺと馬鹿にされながらも精一杯の努力でベッドのセールスに歩き回った。だが、圭太の努力とはうらはらに歩けども歩けどもベッドは一台も売れなかった。とうとう営業部長の大森から爆弾が落ちた。「お前はセールスとして失格だ」と決めつけられた圭太は、苦し紛れに15台のベッドが売れたと大森に告げた。実際には一台も売れておらず、とうとう圭太は15台のベッドを自分で買う羽目になった。狭い部屋に積み上げられたベッドを見つめ、圭太は途方に暮れた。だが思いがけぬ幸運が圭太のもとに飛び込んできた。苦し紛れに買い込んだベッドに景品がついていたのだ。思いもかけぬニューヨーク旅行に当ったのだが、圭太はニューヨーク行きをためらっていた。英語もしゃべれずニューヨークへ行ったって仕方がないという圭太に、下宿先の越後湯の作造と梅子夫婦は、セールスの勉強をするいいチャンスだから行っておいで圭太にすすめた。「セールスの勉強をする」、作造のこの一言が圭太をニューヨーク行きへと駆り立てた…。