とある九州の漁村の海沿いの道で、東都大学のボクシング部が夏合宿のトレーニングを行っていた。列を組んで走る部員たちの横を一台の軽トラックが通り過ぎた時、荷台から兎の毛で作った小さな靴が揺れた拍子に地面に落ちた。走っていた楠田年男が気付いて拾い上げ声をかけようとするが、トラックは行ってしまった。分教場の前では村の子供達が一台の軽トラックに手を振っている。山本ミサは、父・庄三と一緒に“そら豆座”という人形劇団を作り、子供達に夢を与えていた。「あら、おこりんぼの靴がないわ」ミサは人形の靴を落としたことに気が付いた。翌日、ミサが洋裁学校で作った洋服を届けに、そら豆座の仲間のタマ子の実家の旅館に行くと、タマ子は宿泊していた東都大学ボクシング部の学生を熱帯植物園に案内に行って留守だった。植物園でタマ子に逢ったミサは、一緒にいた年男が人形を持っているのを見つけ返してもらおうとするが、年男は昨日の対校試合で45秒でKOできた縁起のいいマスコットだと言って返すのを渋った。そのやりとりを新聞記者の小原が一癖ありげに眺めていた…。