自由奔放な女流カメラマンが、結婚するまではと大いに青春をエンジョイする、笑いと涙とユーモアのはつらつとした青春明朗巨篇。
若葉が家出すると言ったとき、母親の森子はそれほど驚かなかったので、かえって若葉は拍子抜けしてしまった。森子は10年前に画家の夫大策と別れて、神戸の小さなクラブのママになり、女手一つで若葉を育ててきた。商売柄夜が遅く、しかも毎夜酔って客に送られて帰ってくる。しっかりものの若葉はそんな母親の生活ぶりが、仕方のないものだとはわかっていながら、次第にたまらなく嫌になってきた。新しい生活に期待もあったが、若葉が家を出て行こうと決心したのは、母親からの逃避が主だったのである。東京に出た幼なじみのデメ金こと柳金次郎をたずねた。上野動物園に勤めている金次郎は若葉が家出してきたと知ってびっくり、その上下宿に泊めてくれと言われて二度びっくりしてしまったが、若葉から「大丈夫、ウチ、デメ金ちゃんには全然男性感じへんもの」とあっさりいわれてギャフン。翌日、若葉は雑誌「旅」の編集部に写真大学のクラスメート森道夫を訪ねて就職を頼んだ。もともと若葉が好きだった道夫は、若葉が家出までして自分を頼ってきたと聞いて大感激、早速「旅」の写真部に採用してくれるように編集長に電話、OKをとった。