雪が絶え間なく降り落ちている。大正の末期、北海道の炭坑に冬が来た。その炭坑に塩田啓一と源次が、小頭の重太が打ち鳴らす激しいムチのもとで働いていた。啓一には病弱の母お仲がいたが、その治療代にと自分の身を売ってこの炭坑に来たのだが、啓一の父伊之助はヤクザ渡世に入り込み二十年前母と啓一の前から姿を消した。源次は博奕のカタに妹千恵を遊郭に売り飛ばされ、この炭坑の稼ぎで妹を助けようと身を落として来た。ある時、重太から母の死を知らされた啓一は母の死顔でも一目見たさに、源次は妹逢いたさに二人で脱出をはかり、首尾よく成功したが、港町に着いた時、身体が衰弱していた源次は啓一に千恵のことを頼んで息を引き取った。故郷に着いたその足で、母の墓前に佇む啓一に一人の老人が声をかけた。伊之助の兄弟分藤五郎であった。啓一は藤五郎から母の死の様子、そして伊之助は葬式にも顔を出さなかったと聞かされ、「俺の親爺を見つけ、きっと墓参りをさせてやる」と誓い、博奕打ちの父伊之助を探す旅に出た。背中の昇り竜の刺青を目当てにして…。