文壇の鬼才、三島由紀夫原作による同名小説の映画化。女の愛の心理、エゴなど愛に渇いた女の異常な断面を鋭く追求した異色文芸大作。
松本悦子(浅丘ルリ子)は夫・良輔の死後も杉本家に住み、いつか義父の弥吉(中村伸郎)とも関係をもっていた。杉本家は阪神間の大きな土地に農場をもち、広い邸宅の中には、元実業家の弥吉、長男の大学教授謙輔夫妻、園丁の三郎、女中の美代、そして悦子が、家庭のぬるま湯の中で、精神の飢えを内にひめながら暮していた。 悦子は弥吉との関係を断ちがたく、その心は愛に渇ききってしまっていた。その悦子がある日ふと心を動かしたのは園丁の三郎(石立鉄男)であった。若くひきしまった身体粗野なたくましさは悦子のいる世界とは異質であるが、彼女の渇いた心を満たす湧水のようであった。 悦子は「愛の渇き」に抗えず、三郎に深く魅かれていく…。