あれから3年…。キューポラのある街・川口に住む石黒ジュンも今は定時制高校の3年生になった。弟のタカユキも中学2年生で陸上部のキャプテンになった。父の辰五郎は相変わらず一徹な鋳物職人で好きな酒を飲んでは近所に聞こえるような大声で毎日がなり散らしている。母親のトミは、10才になった次男のテツハル、3才のヨチ坊をかかえて、貧しいながらも一家6人の家計をきりまわしている。この3年の間にジュンの生活は大きく変化した。昼間はカメラ工場に勤め、夜は高校の制服に着替えての学生生活だ。働きながら学ぶ。これがジュンの日常生活だが、未成年のジュンは大人の社会に働くことによってさまざまな事を見聞きするようになった。同じ職場で働くユリ子の妊娠事件もジュンにとっては大きなショックだった。また職場には定時制に通うジュンやサヨたちに対し、特別な眼で見る人たちのいることも、ジュンの心には抵抗を感じさせたが、ジュンには大学に進学したいという夢があった。そんなある日、克巳が久しぶりでジュンの家を訪ねて来た。4,5人の鋳物職人仲間と金を出しあい工場を間借りして、明日から新しい形態で鋳物の仕事を始めるのだという。そうなれば親方も職人も差別なくみんな平等で利益を分配できるといい、克巳はトミにも雑役の手伝いを頼みにきたのだった。