昭和三十四年、秋。日本の基地のひとつSキャンプのCID(犯罪調査課)に転勤してきたポラック中尉は、着任後すぐ二世の服部と通訳主任の秋山に、リミット曹長事件の謎を追えという特殊命令を下した。一年前の夏、神奈川キャンプCID本部の担当官であったリミット曹長の水死体が発見されると、日本の警察は殺人事件として捜査を開始したが、米軍が強引に死体を本国に送還し、事故死として処理してしまった。リミットの女だったという小村厚子は肺病で死を目前にしており、息をひきとる寸前にリミットが狙われていたことと奇妙な言葉を口にする。「何かがかくされている。何か黒い霧のようなものが日本中をおおっている」かつて最愛の妻が外国の兵隊に暴行されて殺された上、その真実を当局から抹殺されてしまった秋山の胸に、新たな怒りがわきあがり、彼は徹底的にこの事件をつきとめようと決心した。