白昼の銀行にしのび寄った四つの影。毛利正太、新田、繁森、針谷の四人の男が現金輸送袋を強奪した。逃走の際、新田は正太の制止も聞かずに、逃げ遅れた針谷を追いすがる守衛ともども射殺してしまった。恐るべき凶悪犯罪のぼっ発に世情は騒然となった。死んだ針谷の妻咲枝は、共犯者について執拗な警察の尋問にあったが、なぜか知らぬの一点張りで通してしまった。数日後、東京タワーの見える裏長屋を訪れた正太は、何年ぶりかで母かな子の年老いた顔をそっとかいま見た。そこへ帰ってきた弟健次を誘い出すと、まとまった金を渡して二人分の親孝行を頼むのだった。小さいときからグレて、ろくろく学校へも行かず、いつしか家出同様に悪の世界に入ってしまった正太。かな子は裏切られた子の愛を、真面目に工員を勤める次男の健太にかけて、ひっそりと暮らしているのだった。正太はその足で咲枝を訪ね、針谷の分け前である六百万円を渡したが、咲枝はその金を受け取らず、こんな世界から足を洗ってくれと泣きじゃくるのだった…。