愛しながらの別れ
あいしながらのわかれ
向学心に燃えるアルバイト青年と継母という薄幸のなかに苦しむ少女との美しくも哀しい純愛を浜田・和泉で描いた感動篇

森本勝太がアパート「多久美荘」に引っ越して来たのは、それ相当の理由があった。それまで勝太は、渋谷のバー「シトム」にバーテンとして住み込んでいた。マダムの秋子は妖艶な年増の女で、実は新興やくざ新生会の会長・若山の情婦だった。たまたま勝太は秋子の激しい誘惑に遭って不倫の一夜を過ごしたのだった。だが、勝太にとっては、そんな年増女との情欲よりは大学を受験したいという真剣な向学心に燃えていた。枕元にはいつも受験の参考書を置くような真面目な青年だったのだ。勝太は若山に恐る恐るバーテンを辞めたいと申し出て渋々了承された。「いやなら仕方がないだろう。しかし、まさか店の金に手を付けてるとか…それとも女かな」内心ぎくりとした勝太は逃げるようにこのアパートに引っ越してきたのだ。勝太は以前勤めていた木工所の同僚の紹介で家具店に働き口を見つけることができた。そして運命の女、根岸光枝に会ったのはこのアパートを下見に来た時だった。後ろ向きで忙しく洗濯をしていた姉さん被りの女に声をかけたとき、振り返った女は初々しい二十歳前の娘で、それが光枝だったのだ。勝太は光枝の家の事情が分かるにつれて光枝に得も言われぬ感情を抱き始めるのだった。

日本
製作:日活 配給:日活
1964
1965/1/24
モノクロ/7巻/2189m/80分/シネマスコープ・サイズ
日活
【東京都】渋谷区(渋谷駅周辺=渋谷駅ハチ公口、栄通り、恋文横丁、道玄坂、井の頭線・玉電の大和田ガード下、井の頭線高架下、道玄坂下交差点)/品川区(五反田・商店街、同・目黒川畔、東急池上線五反田駅付近)/文京区(後楽園遊園地)