女の情熱、女の青春、すべてを投げ打って“賭け”に執着した一人の女と、その情熱に魅せられ溺れていく男を描いた異色の問題作。
坂崎彰と小松妙子が初めて出会ったのは競輪場の帰り道だった。坂崎は自分の財布の中からだけでは歯止めがきかず、養育費や集金した会社の金にまで手をつけてしまい、結局レースに負けて全てを失った悲惨な状態だった。しかしそんな坂崎を救ったのは別れ際に妙子が言った一言だった。「明日は飯田栄治に賭けなさい」。坂崎は半信半疑ながらも、翌日のレースで持ち金全てを栄治に賭け、見事大金を手にした。礼を言おうと妙子を振り返ったが、先程まで憑かれたようにレースに見入っていた妙子の姿が消えていた。後日、妙子のおかげで無事に会社へ入金することができた坂崎は、二度と競輪には手を出さないと誓いながらも、どうしても妙子のことが気になり、わずかな手掛かりを頼りに妙子がいる喫茶店を見つけて会いに行った。しかしそこで坂崎が知ったのは、妙子はやくざの組長の女房で、今は刑務所にいる組長の後を継いで組員たちを養っているということだった。