白い雲、青い海……真昼の太陽を浴びて、東シナ海を百トン余りの船が悠々と走っている。船の名は金剛丸――そして、その上甲板でウイスキーを抱いて眠っている男――これこそ泣く子も黙る海賊千里の虎である。勇将の下に弱卒なし!このちっぽけな船に、あだ名がチャックという甲板員、射撃の達人飛車、善良な通信士下駄、醜男の総舵手業平、関西出身のコック独活(うど)、のど自慢の見張り役サブ、大阪出身の機関員丹波、飲んだくれの医者博士、三枚目の見張り役海坊主、射撃見習中の金時に、ロク、五右衛門、チビという一クセも二クセもある一騎当千の面々が乗りこんでいた。ある日、金剛丸は洋上を漂っているボートから一人の風来坊を拾い上げた。男は海賊の一味に加えてくれと不敵に頼みこんだ。ぶんなぐられても、背中に真赤な焼きゴテを押しつけられても、男は口から微笑を消さなかった。そのとき、五右衛門が船影をとらえた。大陸からの密輸船だ。なぜか、千里の虎は悪質な密輸船しか狙おうとしなかった。たちまち金剛丸の前甲板から、後甲板から機関銃がせり上がり一斉射撃が開始された…。