どこからともなく吹いて来る血なまぐさい地獄の風に、今日も誰かの命が消えていく――新進気鋭の刑事・加納五郎が本庁から城南署に転任してきた頃にも、街では対立する大沢興業と二見組の激しいいがみ合いが続いていた。五郎は、大沢興業のボス大沢の企んだ競馬の八百長を暴き、二見組にも乗り込んで気骨のある刑事という印象を与えた。が、そんな五郎に大沢興業の一の子分丈二は激しい敵意を抱いた。また、城南署の刑事仲間でも、五郎の荒っぽい捜査方法に反感を持つ者もいた。だが、五郎にしてみれば温情主義で通した父がやくざに裏切られて刑事を免職させられたことから非情なまでに犯人を扱っていたのだ。ある日、二見の子分で小島という男が拳銃不法所持で五郎に挙げられた。並大抵のことでは収まらないと考えた二見は、小島の女あけみを言い含めて色仕掛けに出たが、彼女は裸のまま五郎のアパートから追い出されてしまった。五郎が隣室に住む夏子という女から弟春夫のことで相談を持ち掛けられたのもその夜のことだった…。