潮騒
しおさい

三島由紀夫の原作を、吉永小百合と浜田光夫の日活青春スターコンビ共演で映画化。小島の漁村を背景に、若い漁夫と海女の恋物語を詩情ゆたかに描く文芸青春大作。

歌島は、伊勢海の周辺が隅なくみえる、周囲一里にも満たない小島だ。北に知多半島、東から北へ遅美半島が延び、西には宇治山田から四日市にいたる海岸線が見える。年間漁獲高の八割を占める歌島の蛸漁は、十一月に始まり今はもう終わりに近く、寒を避ける、いわゆる落蛸を壺が待ち構えて捕える季節である。今日も新治たちを乗せた大平丸は、無事に浜に帰ってきた。浜辺では初江たちが別の舟を引き揚げているが、なかなかはかどらない。そのとき新治が現れ、舟はみるみる浜にあがった。その日、初江は初めて新治の顔をみた。新治は浜にあがると、いつものように灯台長へ魚を届けに行った。今日はでっかい平目だ。稼ぎを懐に入れた新治の足取りは特別に軽い。修学旅行にいく弟・宏の笑顔が目に浮かぶからだ。ところが新治は給料袋を落としたことに気づき、浜辺に引き返した。必死に探す新治の前に、ニコニコ笑った初江が現れた。給料袋を拾って家へ届けてくれたという初江に、新治は「ああ、助かった」と、感極まって涙を落とした。初江を思い寝付かれない新治の気配を察した母は「高嶺の花じゃ」と諭した。ぼんやりすることが多くなった新治は、弟から「初江さんのお婿さんになるのは、安夫さんという噂だよ」を聞いた。安夫は、東京の大学を卒業し、今は島の青年会のリーダー格だ。そんなある日、戦争中の遺物である“観的哨跡"に枯松葉をとりに行った新治は、マムシにかまれた初江を救けてやった。そして思いもかけず、安夫の婿の話は大嘘と聞き、心が晴れた。二人は、漁が休みになる嵐の日に再び会う約束をした。新治も、初江も、その日から朝起きると雲の行方を追った。そして黒雲が走るその日、新治は渚で桜貝を拾い、初江と観的哨で会った。ずぶ濡れの二人は焚火を囲み、自然に唇をかわした。初江の手の中で、新治から贈られた桜貝が、ひときわ美しく輝いた。数日後、初江は水吸場で、いきなり安夫に襲われた…。

日本
製作:日活 配給:日活
1964
1964/4/29
カラー/82分/シネマスコープ・サイズ/8巻/2234m
日活
【三重県】鳥羽市(神島、八代神社、鳥羽港、歌島の桟橋、▲連絡船神風丸)