変動する社会の底辺で、地面を徘徊する昆虫のように触覚で生きる女の半生を描く。
大正7年、東北の農家で父・忠次と母・えんの娘として生まれたとめは、23歳で製紙工場で働くようになり、やがて地主の本田家に“足入れ婚”させられる。そこで娘の信子を生むが、逃げ出すように家出する。上京したとめは、米軍基地ハウスのメイドや売春宿で働くうちに次第に客を取るように。やがて、コールガール組織のマダムとなって田舎から娘の信子を呼び寄せるが、売春罪で逮捕されてしまう。刑期を終え、とめが出所すると、信子は母親のパトロンだった男の情婦になっていた……。