「太平洋のかつぎ屋」以来2年半ぶりに小林旭、宍戸錠の顔合わせで贈る豪快、凄絶の仁侠アクション大作
大正末期、東京・両国の寝静まった街中を一台の人力車が走っていった。車夫は車引きには素人と一見して判るが、どこか精悍な身のこなしである。客は両国界隈を仕切る組の一つ千羽組のケンという男。車が橋にさしかかった頃、前方から数人の人影が短刀を手にケンめがけて殺到した。ケンがあやうく殺されようとしたとき、それまで黙って成り行きを眺めていた車夫が躍り込み、暴漢を撲り倒してケンを救った。空車をひいて帰ろうとするこの若い車夫にすっと近寄った通称トギ安という男が「これでお前さんは強い方についたわけさ」と話しかけた。むっつりとして歩き出す車夫にトギ安はしゃべり続ける―「両国には高遠組をはさんで巴組と千羽組のシマがある。巴と千羽は同格だけに落ち目の高遠を自分の縄張りに収めようとしのぎを削っている…」 日が変わり、露店の軒を並べる縁日、両国界隈は人出でにぎわっていた。その人の波が突然崩れると怒声と悲鳴が湧き起こった。睨み合う高遠組と千羽組の者たちの相も変らぬ縄張り争いのもつれである。この様子を見つめていた車夫・外岡大作は争いを必死に止めようとしている一人の女を見ると、さっと顔色を変えた…。