秀麗な日本アルプスを背景にした町を舞台に、みずみずしい青春を人気純愛コンビ吉永・浜田で謳いあげる花の文芸青春大ロマン。
質屋の娘の矢島貞子は高校三年生。ある日の放課後、美術教師の武井先生から葉書をポストに投げこんでくれと頼まれる。下校途中に尊敬する科学の村尾先生と一緒になると、何となしに武井先生の葉書を読んでしまう。葉書には昼間、貞子たちの前で武井先生と村尾先生が授業法について猛烈な議論を交わしたことが書かれており、“その村尾という化学の先生は、ボクの授業法を間違いと抗議してきたが、とにかく、中世の絵画によくある絶世の美女だ‥‥。”とあった。その内容に「失礼しちゃうわ」と憤慨する村尾先生だったが、何となく慌てる表情に貞子はクスリとしながら、一ヶ月前の登山のとき偶然知り合った高校生、田村邦夫の姿を思い浮かべた。そしてその夜、質屋の店番をしていた貞子の前に、思いもかけず田村が現れる。田村はカメラを出して、授業料を借りたいと言うのだった。