満州事変直前の日本を背景に、一人の男の意地と正義感に溢れた生涯をダイナミックに描いた豪快アクションドラマ。
昭和五年、港まつりの夜。この一帯で土木業を請け負う大島組では、賑やかな酒宴が開かれていた。幾多の白刃の下をくぐり抜け、自信と貫録をしのばせる一家の主・大島庄三郎の顔に近ごろ淋しそうな影がふとよぎるのは、母親のない一人息子・竜次のことを思ってだ。竜次の希望どおり医者としての道を歩ませたことは正しいとわかっていても、長年守り通した大島組を案じて、やり切れぬ思いにとらわれるのであった。酒宴をよそに、竜次は急患の診察に出かけようとしている。その竜次を甲斐甲斐しく送り出しているのは、大島家の懐刀といわれる勘三の娘・晴子で、彼女は渡世人を嫌って医者となった竜次を愛している。渡世人の世界を嫌いながらも父の心を知らぬわけではない竜次は、自分がそばにいることが父をより一層苦しめるのだと感じ、山奥のダム工事現場の診療所に赴任することを志望した。ダム工事現場では、負傷者も仕事に戻そうとするなど、西野組が想像を絶する苛酷な労働を作業員たちに強いていた。憤った竜次は作業員の労働条件を改善させようと、西野組に乗り込んだ。「工事現場から去らぬかぎり、命の保証はできない」と、西野が短刀を竜次に突きつけたとき、竜次が大島庄三郎の息子であることを一人の男が告げると、西野は色を失った。竜次は、父親の力がどんなに大きいものであるかを痛感しないわけにはいかなかった。そして、自分の力への疑問に思い悩んでいる竜次のもとに、父の死の報せが届いた。敵対する斎賀の手によって殺されたのだった…。
全10作品が製作された『男の紋章』シリーズの記念すべき第1弾!