下町の明るくたくましい現代っ子の生活を通して、新しい世代のバイタリティを描く異色の話題作
「煙の奴、町の王様の気かよ、いつもエバってやがら」……真赤な夕陽に美しく浮かび上がった煙突を見上げて数人の子供たちが話し合っている。ここは煙突の林立する工場街。この街に働く人たちは、煙突から出る煙のように天に高くもくもくとたなびかせ、たくましく生き続けている。山口鉄工所に工員として働く百々山一彦もそんな一人であった。新制中学を卒業するとすぐ工員になった一彦には、母の加代、弟の三明、妹の国子、末弟のヨシオといった四人の家族があった。一家は廃棄処分になった三等列車を改造した簡易住宅に住んで貧しい生活を続けていたが、貧しさに暗くなりがちな家庭を明るくしていたのは、次男の三明であった。三明は生来の陽気な性格と冒険好きで、ユーモラスな行状からポパイという渾名をもってみんなから慕われていた。久しぶりに中学の同窓会のハイキングに出かけた一彦は、生憎の雨でハイキングは中止になったものの、いま売り出し中の人気歌手河田徹夫の家で働く同窓生の津川郁子と、映画、遊園地、うたごえ喫茶と楽しいデートの一日を過ごしたが…。