極東航路の豪華船を舞台に、一人旅の少女に寄せる少年たちの好意と国境を越えた交歓を描く青春ロマン巨篇
“青年よ、大志を抱け!”現代の若者の情熱は突風のように激しく、その夢は大洋のごとく果てしなく広い。17才の若さをぶちかます青年石川の夢は、海外に雄飛することだった。南国の情熱をたたえ、千古の謎をいまなお秘める未開の地東南アジア――彼の心はスリルと冒険で一杯だった。「よし、必ずやるそ!」バンド仲間の応援があった。彼の兄捷夫とフィアンセ伸子の大きな愛情も助けてくれた。彼自身はでジャズ喫茶を稼ぎまくった。こうしてやっと資金もできた。渡航手続きも無事終わった。出発の日がきた。熱烈な友情と期待を一身に背負って石川は横浜港から英国P&Oの豪華客船チトラル号に乗り込んだ。船の中にはいろいろな人がいた。シンガポールに父の知人を訪ねて働きに行く山村少年、父が英国外交官でその任地インドに一人旅する美しい少女真理、大の日本びいきで観光旅行の帰りというジュマ氏などである。石川は、乗船後すぐに山村と友達になった。チトラル号は神戸を廻っていよいよ香港へ…。