マスコミに翻弄される「偽りの栄光」を捨てて真実の民衆の歌を求める若いトランペット奏者の恋と情熱を描く娯楽巨篇
ジャズ界の話題は、もっぱら若いトランペット奏者明島秀夫の急激な抬頭ぶりで持ちきりだった。秀夫はヤザキプロの看板スターで、連日テレビ、ラジオ、舞台とスケジュールがギッシリつまり、マスコミの寵児と騒がれていた。この人気の裏では、ヤザキプロの社長矢崎龍二が札ビラを撒きながら放送関係者をおだて上げていた。右腕のないところから“片腕の龍二”と呼ばれ、各テレビ局のゴールデン・アワーを秀夫の“ペット・ショー”で埋めるという精悍な売り込み方だった。今日もCMガールの御園麗子の肉体をエサに、大物スポンサー植村産業の社長を抱きこんだ。こんな矢崎のやり方に秀夫は常に反発し、憂さを晴らすかのように街のヤクザと喧嘩をしていた。ある日、秀夫の付き人サブが耳寄りな情報を矢崎に持ってきた。「ツイスト歌手のジョニー山田ってのはいいですよ」これを聞いた途端、矢崎は商売仇の強引に引き抜きを決行した。その頃秀夫は、忙しい時間を割いて、ヤクザの暴行から助けた花売り娘の恵子と弟の正一を連れて楽しいひと時を過ごしていた。これを見た岡田プロは、秀夫と恵子の仲をスキャンダルとして週刊誌に売り込んだ。矢崎は秀夫を問い詰めたが、矢崎の無理解さに反抗した秀夫は、ついにヤザキプロを飛び出した…。