対立する組織の組長傷害事件で刑期を終え、更生しようとする男をめぐるヤクザの世界の冷酷な実態と相克を描くアクションドラマ。
久世組の幹部・稲木三郎が得意の拳銃にものをいわせて、対立する小野田組長と老幹部の鉄五郎に重傷を負わせたのは5年前のこと。小野田組長はその傷がもとで死亡し、鉄五郎は足が不自由の身となった。あれから5年、二度と拳銃を握るまいと誓って出所した稲木は、偶々小野田組長の遺児・弘を助けた。大学の滑空部に所属する弘はグライダー飛行の練習中、誤って河原に転落したのだ。折よく通りかかった稲木は、息を吹き返した弘が礼を言う間も与えず立ち去った。そのときは稲木も弘も二人の関係に気づく由もなかった。稲木が戻った久世組は5年前の久世組ではなかった。久世興業と新しく看板も塗り替えて、久世組の旧幹部は一掃され、新参で拳銃の名手・多巻健が羽振りをきかせていた。いっぽう、小野田組は今では小野田運輸という新しい看板のもとに完全にやくざの世界から足を洗っていた。若社長となった弘は姉の文江と共に堅気の世界で生き抜く覚悟だった。鉄五郎はそんな二人が頼もしくて涙がでるほどうれしかったが、若い者から稲木の出所を耳にするや血気にはやるが、弘にたしなめられるのだった。