複雑な人間の心理描写を、団地という特殊な環境を背景に、ドキュメンタルなタッチで描く異色アクション。
「張り込んで三日目・・・女も奴が来るのを諦めたんですよ」何度目かの無意味な電話の盗聴を終えた数馬刑事は、先輩の宮下刑事の粘り強さに辟易していた。二人は、数日前に起こった強盗殺人事件の犯人菅原を追って、立ち寄り先と思われる情婦藤井きぬの住んでいる団地アパートの9号館の隣棟で四六時中彼女の動向を監視していた。数馬は事件当日、現金輸送車を警備していたが、突如起こった騒ぎを静めに行った隙に売上金を強奪され、抵抗した銀行員まで殺されてしまい、自責の念にかられていた。そしてその日の午後、数馬たちが張り込んでいる8号館の横に車が停まり、やくざ風の川田、向井、健が降り立ち、数馬たちと同じ棟にある無関係の親子の一室へ押し入った。この3人組もまた、菅原の女が団地に住んでいると突き止めてやって来たのだった。