当りや大将
あたりやたいしょう
問題の街・釜ヶ崎に住む“当りや”の天才を中心に、どん底の生活に咲く美しい人間愛を謳いあげた涙と笑いの異色作。

一日百円札一枚あれば食っていけるこの街には、自転車の古タイヤまで並べた古物商が軒をつらね、一泊三十円のバラックホテルが建ち並び、ホルモン鍋や残飯屋の臭いが充満している。タクシー運転手にとって、この街は鬼門だ。子分たちと一日中バクチにふけっている“大将”の眼は「大将きたぜ!」という声に異様な光を発し、しばらくすると「大将が当たった」という声が街中に広がる。タクシーの中には泣き顔の運転手と客、地面には大将の身体がのびている。車に当たって傷ひとつもらわぬ大将の“身体を張った商売”は名人芸だ。 そんなことのあった夜は“おばはん”のホルモン鍋の店は、大将や子分たちで大変な騒ぎになる。ある日、いいカモの前に見事当たりを成功した大将だったが、転がる大将を捨て、車は悠然と警察署の前にとまった。新しい署長の車だったのだ。その夜、おばはんの店でしょげる大将を、おばはんとペンテンのお初という女が慰めた。お初に手を出しかけた大将に「二万円用意しないと承知しない」とお初が怒鳴りだす。その剣幕に驚いた大将だったが「俺も男だ」と、二三日して二万円をそろえて現れた。ところがお初の口車にのせられ、二万円を取り上げられた挙句、バクチで取り戻そうと借りた一万もふっとんだ。一方、新署長を迎えた警察は街の取締りにのり出したが、とらえどころのない住人たちをどうすることもできなかった。ツイてない大将は、息子のチビ勝を大学へあげるため、おばはんが貯めているという十八万円に目をつけ…。

日本
製作:日活 配給:日活
1962
1962/8/26
モノクロ/87分/シネマスコープ・サイズ/7巻/2378m
日活
【大阪府】大阪市(大阪駅、釜ヶ崎、市電、天王寺公園、ジャンジャン横丁)
【兵庫県】神戸市(阪神国道、六甲山ドライブウェイ、六甲山の頂上)/芦屋市(高級住宅街)